F1ロシアGPをポールポジションからスタートしたルイス・ハミルトン(メルセデス)。彼は16周目にピットインし、スタート時に履いていたソフトタイヤから、ハードタイヤに交換した。
当時ハミルトンには、レコノサンスラップでのスタート練習違反により、10秒のタイム加算ペナルティが科されていた。そのため、タイヤ交換を行なう前に、チームスタッフがマシンに一切触れない状態で10秒間静止、その後、タイヤ交換作業に取り掛かることになった。チームはコースに復帰した時のトラフィックの影響も考慮した上で、このタイミングでのピットストップ実施を決めたわけだ。
■メルセデス代表、ハミルトンのペナルティに納得できず「無理のあるペナルティだった」
ただハミルトンはこのピットストップ前後、チームに対して無線で疑問を呈した。彼曰く、ピットストップを行なうタイミングが早すぎたというのだ。
確かに、ハミルトンよりも早くソフトタイヤを履き捨てたのは、ルノーのダニエル・リカルドのみ。しかも、ハミルトンのペースはまったく落ちていない。
ただメルセデスのトラックサイド・エンジニア・ディレクターであるアンドリュー・ショブリンは、ハミルトンをこのタイミングでピットに呼び戻した、明確な理由があると語る。
「彼のマシンの左リヤは、もう限界だった」
そうショブリンは語った。
「タイヤのゴムは、ほとんど残っていなかったんだ。あと1周か2周しか走れなかっただろう」
「ここで気付いたのは、タイヤの摩耗がかなり進んでも、ドライバーがグリップの低下を感じることはないということだった。そして突然、グリップを失うことになるのだ。グリップを失う時は、かなり突然だろう」
「しかもペナルティがあったから、実際にレースをしているマシンは、ずっと後方に見えることになる。でもグリップを失ってしまえばすぐ、彼らに簡単にアンダーカットされてしまうんだ。それが(早々にタイヤを交換した)大きな理由だった。それは主に、彼の後方のマシンとの関係によるモノだった」
「彼があのタイヤでもう1~2周したとすれば、中団勢の、特にミディアムタイヤを履いたマシンがペースを伸ばし始めたことに気付いただろう。つまりそれは、後でオーバーテイクしなければならないマシンたちだ」
ショブリン曰く、ロシアでレッドブルに対して、明確なアドバンテージを持っているとは考えていなかったとも語った。
「『我々にとって都合の良いことになると思う』などと言ってサーキットに行くことはない。それは我々の考えることではないからだ」
そうショブリンは語った。
「他の人たちのペース次第だ。そして我々のマシンは、ほとんどのサーキットで、比較的うまく機能しているようだ」
「レッドブルが『ここはメルセデス向きのサーキットだ』と言っていたのは知っている。彼らのマシンには、少し合わないのかもしれない。なぜ我々のペースが良かったのかもよく分からない。そしてレースペースも力強かったと思うけど、予選でのルイスのペースは、さらに力強かった」
「今年最も柔らかいコンパウンドであるC5タイヤは、1周をまとめ、常に適切な温度領域に収めておくのが簡単なタイヤではない」
「バルテリ(ボッタス)は特に予選で苦戦した。それが彼にとって、大きな悪影響を及ぼしたとは思わない。グリッド3番手は非常に強力なポジションだし、2番グリッドとそれほど変わらなかったからだ。でも、ここではマシンがかなり良かった」
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