3時間超の荷待ち・荷役時間
物流現場での時間の使われ方に、いま改めて注目が集まっている。ドライバーの拘束時間が全体として減少傾向にある一方で、「荷待ち」や「荷役」に費やされる時間は依然として大きな割合を占めている。
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荷待ちとは、貨物の積み下ろしを始められずに、トラックが現場で待機している時間を指す。一方の荷役は、実際に荷物の積み下ろし作業を行う時間を意味する。いずれも運転以外の作業時間であり、ドライバーにとっては拘束されながらも輸送そのものとは直接関係のない時間だ。
国土交通省が2024年に実施した調査によれば、ドライバー1回あたりの勤務時間はおよそ12時間。このうち約3時間を荷待ち・荷役に費やしており、内訳は荷待ち1時間28分、荷役1時間34分とされている。すなわち、1回の輸送のうち4分の1近くが、トラックが止まった状態での作業や待機にあてられている計算になる。では、その時間は
「誰の責任」
で、誰がそのコストを負担しているのだろうか。
例えば、ある工場ではひとりのリフトマン(フォークリフトを操作して荷物の積み下ろし作業を行う作業員)が、1日あたり8台のトラックにそれぞれ1時間かけて荷積みを行ったとする。朝に到着した車両が優先され、後の車両は長時間の待機を強いられることになる。しかし、工場側にしてみれば
「今日中に出荷を終えれば問題ない」
という認識であり、現場で順番待ちが発生すること自体に、さほどの違和感を覚えないだろう。
荷待ち無料利用の構造的問題
問題は、その順番待ちにかかるコストを、誰が負担しているかである。現状では、ほとんどが運送会社側、ひいてはドライバーの側に押しつけられている。しかもその負担は、明示的な対価としてではなく、
「拘束時間の一部」
として吸収されていることが多い。この構造のままでは、出荷現場にとっては
「トラックを待たせることにコストがかからない」
という状況が温存される。言い換えれば、物流側にとっては時間が奪われているにもかかわらず、出荷側にとっては
「無料で使えている」
時間になっている。こうした非対称な状況を是正するために、例えば、1時間を超える荷待ち時間には
「追加の費用負担を義務づける」
といった仕組みの導入が考えられる。一定の待機を過ぎたら、荷主・荷受人に対して時間あたり数千円の支払いを課す――といった提案である。
だが、その是非は簡単に判断できるものではない。たしかにドライバーの時間は、いまや限られた資源である。2024年問題以降、拘束時間には法的な上限が設けられ、1時間の遅れは、そのまま運べる荷物の減少に直結する。
その一方で、出荷現場の事情もある。
・人手不足
・倉庫設計上の制約
・繁閑の変動
など、改善すべきとわかっていても、即時にオペレーションを見直せる現場ばかりではない。むしろ、「だからこそ現場でやりくりしてもらうしかない」というのが、物流現場で暗黙の了解になってきた背景がある。
柔軟性喪失リスクと現場の葛藤
そしてもうひとつ。制度的な強制策が持つ力と限界も忘れてはならない。
価格やコストの配分は、通常、市場の交渉力によって定まる。それを制度で変えるということは、いわば交渉の重力場に手を加えるということである。果たしてそれは現実的か、あるいは望ましいか。
トラックを待たせた時間にコストを課す。それによって出荷オペレーションに新たな工夫や改善努力が生まれる可能性はあるだろう。しかし一方で、現場のフレキシビリティ(状況や環境の変化に対して柔軟に対応できる能力)が失われ、
「想定外の遅延に対して荷主・荷受人が過度に萎縮する」
ことも考えられる。時間に対価をつける――それはある意味で、運送という仕事に敬意を払うという行為にも映るかもしれない。しかし、それが現場に責任を押しつけるという印象に転化してしまえば、対立はむしろ深まるだろう。
では、どこに落としどころはあるのか。時間の損失を誰がどのように引き受けるのが、もっとも「筋が通っている」といえるのだろうか。
待機時間コストの現実性
荷待ちの問題は、労使間の話にとどまらない。トラックは貨物を運ぶ媒体であると同時に、
「労働時間そのものを内包した存在」
だ。工場や倉庫は物理的に定位置を占めるが、ドライバーの仕事はときに千キロも移動して貨物を届ける。このふたつは、空間の対極にある存在の協働である。
では、なぜその接点で時間の浪費が当然視されるようになったのか。いつから
「待たせることがコストとして認識されなくなった」
のか。そこには、
・設備投資の回避
・運行計画の柔軟性依存
・過去の過剰供給
・労働力の沈黙
といった複数の要因が絡み合っている。出荷現場にとって、トラックは物理的な制約を受けない“時間の貯蔵庫”として無意識に扱われてきた節がある。その無意識のうちに時間を搾取する構造が、いまようやく問われ始めている。
時間とは、移動を前提とした労働が生む価値の源泉だ。
「静止していることに価値を与える」
には、本来別の対価が必要なはずだ。だが、その常識はこれまで物流の現場では成立してこなかった。この常識が成立しないまま続いてきたことが、日本の流通システムの暗黙の基盤だったといえる。いま、その歪みに制度がメスを入れようとしている。
しかし、制度を変えれば現場が変わるわけではない。問い直すべきは
「なぜ時間に価格がつかなかったのか」
という過去の前提そのものだ。すべての時間は有限である――この当たり前の前提を回復することが、構造を問い直す最初の一歩になる。制度改革より先に、思考の更新として始めなければならない。(猫柳蓮(フリーライター))
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みんなのコメント
売り上げも大事ですが働く従業員や仲間を守る為に断る事も大切です。
深夜受付をしても荷卸しは夕方とか、12時間以上の待機を何回したことか・・・
時間指定で行ったのに何時間も待たされたり・・・だったら時間指定するな!って言いたいわ。