「疲れにくい」85%の実感
医薬品卸大手のアルフレッサは、2025年1月に電気自動車(EV)45台を業務用車両として導入した。これを機に、自社ドライバーを対象としたアンケートを実施。「EV運転による疲労感や勤務満足度の変化」に関する調査結果を、5月22日にプレスリリースで公表した。
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調査対象は配送や営業でEVを使用する41人。調査期間は2025年4月7日から18日。オンライン形式で実施された。設問は運転性、身体負担、ストレス、勤務満足度、環境意識の変化などを中心に構成されている。
●運転性に関する評価(5点満点)
・スムーズさ:4.61
・ハンドリング:4.34
・ブレーキ操作(回生ブレーキ含む):4.20
・静粛性:4.80
EVで最も満足している点として、「加速のスムーズさ」が27人、「静かさ」「燃料費の安さ」「振動の少なさ」が各4人、「環境貢献の実感」が2人に上った。
●疲労・ストレス・満足度
・疲れにくくなった(圧倒的 + やや):35人(85%)
・運転後のストレス低減(かなり + 少し):33人(80%)
・勤務満足度(運転の快適さ):4.38
・騒音の少なさ:4.46
・体力的負担軽減:3.59
●環境意識の変化
・「EVを通じて環境貢献を実感」:7割
・節電やごみ分別などへの意識が高まった:13人
●改善希望・課題(複数回答)
・航続距離の延長:17人
・充電時間の短縮:9人
・充電設備の増設:6人
・冬季の電力消費に関する不安:複数人(自由記述)
●EV業務の継続意向
・大歓迎:16人
・条件付きで歓迎:15人
・否定的または未回答:計2人
●回答者のプロフィール
・年齢層:50代が最多(13人)、次いで30代・40代
・EV運転経験:37人が「初めて」
・主な走行距離:全員100km未満(うち26人が50km以下)
・業務エリア:市街地中心が8割(高速道路・山間部での使用なし)
・EVに慣れるまでの期間:「すぐに慣れた」が過半数
●EV印象の変化
・「印象が良くなった」との回答が36人
・「変わらない」3人、「悪くなった」1人
一方で、今回の調査結果には複数の留意点がある。
まず、ほとんどの回答者がEVの運転は初めてであり、初期導入バイアスがかかっている可能性がある。また、疲労軽減の効果を訴える声は多いが、比較対象となるガソリン車の利用状況や個別データは開示されていない。定量的な評価を行うには、裏付けが不十分だ。
さらに、業務エリアは市街地に偏っており、高速道路や長距離移動の評価が含まれていない。1日の走行距離も短く、多様な運転条件を反映した結果とは言いがたい。
加えて、調査対象は41人にとどまり、母集団の規模や属性も限定的だ。こうした条件を踏まえると、今回の結果のみでEVの全社導入を判断するのは難しい。今後は、より幅広い条件下での実証的な検証が求められる。
EV導入と経営目線の乖離
回答者が満足したのは、車内の静かさや低振動、スムーズな加速といった点だった。これらはEVが持つ構造的な特性であり、エンジン車に対する優位性として設計段階から想定されている。
一方で、疲労感に関する評価は、市街地での低速・短距離運転に限られていた。郊外や高速道路での使用実態は確認されておらず、そもそも疲労を感じるほどの運転だったのかという根本的な疑問が残る。
加えて、疲労の定義はあくまで主観的であり、精神的ストレスや肉体的負荷、周囲の環境など、要因を分解した設問にはなっていなかった。EVに対する初期導入バイアスも無視できない。たとえば燃料補給の手間が減ったことや、新車導入による快適性の向上といった要素が、評価に影響した可能性がある。
以上を踏まえると、「EVは疲れにくい」と結論づけるには材料が不十分であり、より多面的で定量的な検証が求められる。
今回のアルフレッサによる業務用EV導入は、脱炭素化の流れを受けた経営判断と見るべきだ。保有コストの削減や補助金の活用、燃料費の抑制、CSR評価の向上など、経営上の打算が背景にある。
一方で、アンケートはドライバーの快適性に焦点を当てており、経営側の導入目的とは軸がずれている。快適性の向上が離職防止や定着率改善に直結するかどうかは、今回の調査からは読み取れない。
さらに、EVの導入が働きやすさや業務の生産性、サービス品質、配達効率といった指標にどう影響するかも明らかにされていない。EVが制度的な働きやすさの基盤となるかを判断するには、より広範なデータに基づいた分析が不可欠である。
充電インフラの整備遅れ
ドライバーの不満として挙がったのは、航続距離の短さや充電時間、暖房使用時の電力消耗といった点だった。これらはEVに残る技術的な課題を示している。特に冬季は、暖房利用による電力消費の増加が航続距離を縮め、配送業務に直結するリスクとなる。
充電設備の不足や充電時間の長さに対する指摘も多く、制度面の見直しを求める声もあった。車両数の不足に加え、運用ルールやマニュアル整備を求める意見も見られた。
全体として、EV導入を歓迎する雰囲気は感じられるが、それは必ずしも技術への称賛とは言い切れない。EVを否定しきれない空気の裏返しとも受け取れる。EV導入で職場が自動的に「働きやすく」なるという単純な構図は、現実には当てはまらない。
行動変容を促す課題と実態
EV導入によって環境貢献を実感した回答者は全体の約7割に上った。一方で、環境配慮への意識が変化したのは半数以下にとどまり、EVの運転が行動変容に直結した例は限られていた。ごみの分別や節電への意識が高まったとの声もあったが、なかには「会社の空気を読む」といった忖度による回答の可能性も否定できない。
EV導入を「環境配慮の象徴」として機能させることで、職場におけるマネジメント変革を促す契機になり得る。ただし、その効果が単なる目新しさに依存していないかを見極める必要がある。持続可能性に対する評価軸は、いまだ整備途上にある。
技術課題が問う全社展開
EVは都市部の小型配送や営業活動に適した選択肢である。一方で、郊外や寒冷地での運用には課題が残り、導入には慎重さが求められる。航続距離の制約や電池消費といった技術的な問題は、全社や多拠点展開の際の障壁となる可能性が高い。
EV導入の成否は、充電インフラの配置と業務スケジュールの整合性を含む運用設計の巧拙にかかっている。単に導入台数やドライバー評価に留まらず、業務プロセスや労務面との適合性が問われる。
商用EVの進化は車両性能だけでなく、業務システム全体の再設計を促す契機となるだろう。
EV導入の戦略的意義
EVによってドライバーの疲労軽減が実感されている点は否定できない。しかし、それをもって働きやすさの改善と断定するのは早計だ。EV導入が疲れにくい職場を成立させるには、物理的な快適性だけでなく、制度設計や運用設計との連携が不可欠である。
EVは単なる道具にとどまらず、経営戦略や人事戦略、技術選択の交差点としての役割を持つ。快適性という表層的な面を超え、組織のあり方を見直す契機にもなり得る。
疲れにくさが業務品質や人材定着にどう影響するかを見極めるためには、さらなる定量的・定性的な分析が必要だ。疲労の定義とその影響を慎重に検証しなければならない。
現時点では、好意的な初期評価の段階と捉えるべきである。安易な業務用EV導入の加速を招かないよう、慎重な判断が求められる段階だということを忘れてはならない。(鳥谷定(自動車ジャーナリスト))
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