■往年の後輪駆動スポーツカーのなかでも、スペシャルなモデルを振り返る
あらゆる路面状況に対応して駆動力を確実に路面に伝え、高い走行安定性を実現する4WDは、かつて悪路の走行に有効なことから開発されましたが、1980年代には舗装路でも優れた走りができることが証明されました
一方で、2WDでも魅力的なスポーツカーは数多く存在します。とくに後輪駆動の2WD車は優れたステアフィールが得られることから、ここ一番の速さだけでなく運転する楽しさをより味わうことができ、とにかく後輪駆動にこだわるユーザーがいるほどです。
そこで、後輪駆動のスポーツカーのなかでも特別に仕立てられたモデルを、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「フェアレディZ Version NISMO Type 380RS」
1969年、日産は新時代のFRスポーツカー「フェアレディZ」を発売。そして、2021年8月には7代目となる新型フェアレディZの市販バージョンがお披露目される予定で、大いに期待されています。
この長い歴史を刻むフェアレディZのなかでも特別なモデルとして君臨するのが、2007年にNISMOの手によって開発された「フェアレディZ Version NISMO Type 380RS」(以下、380RS)です。
380RSは5代目の特別仕様車にあたり300台限定で発売。スーパー耐久参戦用のホモロゲーションモデル「フェアレディZ Version NISMO Type 380RS-Competition」をベースに公道仕様に改良されたモデルです。
外観は同じくNISMOが開発した「Version NISMO」と同様な仕様で、前後のバンパーとスポイラー、サイドシルプロテクター、フェンダーモール、大口径スポーツマフラー、専用のエンブレムなどがスタンダードモデルと異なります。
エンジンは3.5リッターV型6気筒の「VQ35HR型」をベースに、排気量を3.8リッターにアップして最高出力350馬力を発揮。
高強度の専用鍛造ピストンに、強化素材のコンロッドとクランクシャフト、専用プロフィールのカムシャフトを採用するなど、レーシングエンジンをストリート仕様にデチューンしたかたちです。
また、シャシまわりではモノコックの剛性アップに、スプリングとダンパー、スタビライザーが強化されたサスペンション、ブレーキは4輪ともブレンボ製アルミキャリパーが奢られています。
380RSはまさにレーシングカーにもっとも近いスポーツカーとして開発されましたが、そのチューニングの内容を考えると、当時の539万7000円(消費税5%込)という価格は、意外とリーズナブルだったのではないでしょうか。
●ホンダ「NSX タイプR」
1990年にホンダは、欧州の名だたるスーパーカーと肩を並べる性能が与えられ、さらに普段使いも可能なフレキシビティを持った新時代のスポーツカーとして「NSX」を発売。
シャシに世界初のオールアルミモノコックを採用し、最高出力280馬力(5速MT)を発揮する3リッターV型6気筒VTECエンジンをリアミッドシップに搭載。
軽量な高剛性なボディと、高回転型の自然吸気エンジンが相まって、世界中のエンスージアストから高く評価されました。
しかしNSXはさらに高みを目指し、1992年にはノーマルの状態でもサーキット走行に対応した特別なモデル、「NSX タイプR」が誕生。
NSX タイプRはスタンダードモデルに対して遮音材や制振材を削減し、エアコンやオーディオなど快適装備の一部を非搭載とすることや、部品の材質置換によるグラム単位の軽量化をおこなった結果、120kgもの大幅な軽量化を実現しました。
また、快適性や乗り心地よりもサーキットでのパフォーマンスを重視した足まわりのセッティングは、街なかでは苦行というべきレベルの硬さで、ストイックな走りが可能なドライバーであることが必須といえました。もちろん、パワーステアリングは非設定です。
エンジンはスペック的にはスタンダードモデルと共通ですが、高精度のクランクシャフトやピストン/コンロッドの重量精度を向上した、いわゆるバランスドエンジンを搭載。
トランスミッションは5速MTのみで、ファイナルギアのレシオは加速性能を重視して4.062から4.235へと変更されました。
その後、2002年にはさらに進化した第2世代の「NSX-R」が登場。エンジンはスタンダードモデルと同様に3.2リッターにアップされ、同じく軽量化と足まわりの強化によって運動性能の向上が図られました。
ちなみに第1世代のNSX タイプRの新車価格は970万7000円(消費税含まず、東京価格)と、今の水準からするとかなりのバーゲンプライスといえそうです。
●ポルシェ「911カレラRS」
ドイツを代表するだけでなく、世界でもっとも有名なスポーツカーといえばポルシェ「911」です。初代は1964年に誕生して現行モデルは8代目にあたり、歴代911は一貫してRRの駆動方式を基本として水平対向6気筒エンジンを搭載。さらにファストバッククーペのスタイルを継承しています。
これまで911には数多くの特別な高性能モデルが設定されましたが、なかでも第1世代(「ナロー」や「901型」と呼称)の最終進化形として1973年に登場した限定モデル「911カレラRS」は、今も語り継がれる存在です。
この通称「73カレラ」と呼ばれる911カレラRSは、レースに出場するためのホモロゲーション用に開発され、ハイパワーな2.7リッターエンジンを搭載するとともに大幅なボディの軽量化が図られています。
そして、第3世代の「964型」にも73カレラのDNAを受け継いだRRの911カレラRSが設定され、1992年に発売されました。
964型911カレラRSはワンメイクレース用の「カレラカップカー」をベースに、公道走行用にモデファイしたモデルで、外観はスタンダードなカレラ2から大きく変わっていません。
変更的はフロントのフォグランプがダミーであったり、リアバンパーのセンター部分の形状が異なるくらいですが、専用セッティングの強化スプリングとショックアブソーバーによって車高を40mmローダウンしています。
エンジンはスタンダード比で最高出力を10馬力向上させた260馬力を発揮する3.6リッター空冷水平対向6気筒SOHCを搭載。フライホイールはダンパーが無い軽量なソリッドタイプで、トランスミッションは5速MTのみです。
また、アルミ製フロントフードとマグネシウム製ホイールの採用と、アンダーコートやエアコン、オーディオ、パワーステアリング、パワーウインドウ、エアバッグなどが省かれ、2シーター化してリアシートを撤去するなどにより150kgもの軽量化を実現。
内装では標準でレカロ製フルバケットシートが奢られ、ドアの内張りを簡素なパネルに変更し、ドアオープナーがナイロン製ストラップとされるなど、まさにレーシングカーに近いイメージのロードカーに仕立てられています。
現在、空冷エンジンを搭載する911は価格が異常なまでに高騰し、73カレラならば1億円前後、964型911カレラRSでも2000万円以上が相場です。
※ ※ ※
前述のとおりもうすぐ7代目フェアレディZがデビューします。詳細なスペックはプロトタイプの時点では発表されていませんが、6気筒エンジンのFRという伝統は守られているようです。
ただし、純粋な内燃機関搭載車はこの7代目が最後となるとの見方が強いでしょう。
今後、電動化は必須であり、ハイブリッドやEVでフェアレディZが登場するかは不明ですが、なんとか伝統を継承してほしいところです。
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歩行者保護の観点からデザインにも縛りが増えた様だけど