フィアットのピュアEV(電気自動車)に設定された特別な「ジョルジオ アルマーニ コレクターズ エディション」とは? 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキがリポートする。
新型フィアット500e ジョルジオ アルマーニ コレクターズ エディションの特徴
イタリアの美意識を凝縮したコレクターズアイテム──新型フィアット500e ジョルジオ アルマーニ コレクターズ エディション試乗記
1.自動車とファッション2.コラボレーションの変遷3.唯一無二のエクステリア1.自動車とファッション
クルマとハイブランドのコラボレーションは、単なる工業製品に“文化”と“装い”の新たな次元を付与する興味深い試みである。
古くは1980年代、日本の自動車市場が沸いていた時代に登場した日産の4代目「ローレル(C31型)」のジバンシィ・バージョンを思い出す読者もいるかもしれない。
当時のローレルは、フランスの著名なファッションデザイナーであるユベール・ド・ジバンシィをイメージキャラクターに起用し、その名を冠した特別仕様車を世に送り出した。
それは、単なる移動手段であったクルマに、高級プレタポルテのような洗練とステータスを纏わせようとした時代の象徴であった。クルマがファッションアイテムの一部として機能し、オーナーのライフスタイルや美意識を如実に語るツールとなった瞬間である。もっとも、そのセンスは今見るとかなり不思議だが……。
このようなブランドとのコラボレーションモデルの存在価値は、クルマメーカーとファッションブランドの双方にとって相乗効果を生み出す点にある。
クルマメーカーにとっては、自社の製品に通常では得られないデザインの深みや、ファッションに敏感な新たな顧客層へのアプローチをもたらす。
一方のファッションブランドにとっては、自身の美学を“走る空間”のキャンバスで表現し、日常の風景の中にブランドの世界観を溶け込ませられるのだ。
その意味において、今回試乗したフィアットの500e Giorgio Armani Collector’s Edition(ジョルジオ アルマーニ コレクターズ エディション)は、イタリアを代表するふたつの巨星が交わった、歴史的意義を持つ1台であると言える。
2.コラボレーションの変遷
フィアットのコンパクトカーである500(チンクエチェント)は、その愛らしいデザインと実用性で長年にわたり世界中で愛されてきたアイコンだ。そして、500ほど多様なブランドとのコラボレーションを成功させてきたモデルも珍しい。
かつてのエンジンを搭載した歴代500シリーズにおいても、数々の魅力的な特別仕様車が存在した。例えば、同じくイタリアを代表するファッションブランドである「グッチ(Gucci)」とのコラボレーションモデルは、専用の装備が施され、街中で存在感を放っていた。さらに、高級ボートメーカーである「リーヴァ(Riva)」とのコラボレーションや、アパレルブランドの「ディーゼル(DIESEL)」、さらにはキッチンウェアなどで知られる「アレッシィ(ALESSI)」といったサニタリー系のライフスタイルブランドに至るまで、500は常にイタリアンデザインの多様性を発信する優れたプラットフォームとして機能してきた。
そして現代。電気自動車(EV)へとパラダイムシフトを迎える中、500もまた500eとして生まれ変わった。
このピュアEVのラインナップとなった新しい500eをベースに、満を持して登場したのが、モード界の帝王ジョルジオ・アルマーニとのコラボレーションモデルである。
海外ではマイルドハイブリッド仕様の設定なども存在するが、日本国内において500eは完全な電気自動車のみの展開となっており、新世代のクリーンな都市型モビリティとしての立ち位置を明確にしている。
3.唯一無二のエクステリア
目の前に佇む500e ジョルジオ アルマーニ コレクターズ エディションは、ベースとなった500eの愛らしさを残しながらも、息を呑むほどの静謐なオーラを纏っている。日本全国でわずか合計50台の非常に希少な限定車であり、その内訳は「ダークグリーン メタリック」が23台、今回試乗に用意された「セラミックグレージュ メタリック」が27台となっている。
試乗車のセラミックグレージュ メタリックは、単なるベージュやグレーとは一線を画す、アルマーニらしい繊細で深みのある中間色であり、光の当たり方によって微妙に表情を変える実にエレガントな色合いだ。
エクステリアにおいて目を引くのは、足元を引き締める17インチの専用デザインアルミホイール。造形そのものが「GA(ジョルジオ・アルマーニ)」の巨大なロゴマークを形成している、大胆かつ洒脱なデザインが採用されており、これを見るだけでも、このクルマが特別な仕立てであるのを強烈に主張している。
さらに、サイドウィンドウを縁取るモールディングはブラック仕上げとされ、全体の印象をシャープに引き締めている。通常モデルではメッキなどが多用されがちな部分をあえてダークトーンに落とし込む手法は、アルマーニの哲学を体現しているかのようだ。
ボディサイドなどに配置されたバッジやトリムエレメントもボディと同色でまとめられており、無駄な装飾を排したシームレスなスタイリングが徹底されている。
4.艶やかなインテリア
ドアを開け、室内に足を踏み入れると、そこには外観の抑制されたトーンとは対照的な、明るく開放感に満ちた空間が広がっている。
インテリアはホワイト系でまとめられており、固定式のガラスルーフから降り注ぐ陽光と相まって、華やかな、艶やかさを感じさせる仕上がりだ。
シートには専用の「エコ・レザー」を採用。ダッシュボードに目を移すと、そこには非常に精密で美しい専用のインテリアトリムが広がり、助手席側のパネルにはジョルジオ・アルマーニの流麗なシグネチャーが刻まれている。
また、細かな装備に目を向けると、この限定車ならではの特別なアイテムが散見される。例えば、リアシートの中央には専用のカップホルダーが備え付けられており、後席乗員の利便性にも配慮がなされているのだ。さらに、フロントシートにはシートポケットが追加され、ドアを開けた際に足元を飾るクローム仕上げの専用ドアシルプレートも装備。これらは、ベースモデルの500eにはない、コレクターズ エディション独自の細やかなおもてなしの心である。
インフォテインメントシステムには、Apple CarPlayやAndroid Autoに対応した10.25インチのタッチパネルモニターが備わり、さらに専用のスプラッシュスクリーンや6スピーカーオーディオシステムが搭載されるなど、現代の高級車に求められる機能性も十二分に満たす。
▲次のページ:「イタリアの美意識を凝縮したコレクターズアイテム」
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