この記事をまとめると
■ホンダは2040年に新車販売に占めるBEV/FCVの割合を100%にすることを発表
かつてのホンダは凄かった! 踏めば脳天まで痺れる「エンジンのホンダ」を感じさせる名車5選
■現時点で新規エンジン開発凍結ならば3年後には新しいエンジンが出てくることはなくなる
■2040年ですぐにエンジン車に乗れなくなることはないが徐々にエンジン車は不便になる
日本市場でホンダの純エンジン車が新車で買えるのはあと約8年
2021年、社長に就任した三部敏弘氏が発言した内容を整理すると、ホンダの量産車からエンジンが消えてしまう未来はほぼ確実なものとなっている。
ホンダの電動化ロードマップは次のようなステップで進むと考えられる。
2024年:日本で軽自動車の電気自動車(BEV)をローンチ 2024年:北米にてSUVスタイルのBEV「プロローグ」をローンチ(GMと共同開発) 2030年:先進国トータルで新車販売の40%をBEVもしくは燃料電池車(FCV)にする 2030年:日本での新車販売はハイブリッド(HEV)を含めて100%電動化 2035年:日本含む先進国での新車販売において80%をBEV/FCVとする 2040年:グローバルでの新車販売におけるBEV/FCV比率を100%とする
つまり、日本市場においてホンダの純エンジン車が新車で買えるのはあと8年ちょっとしかなく、2040年にはHEVさえも消えてしまうというわけだ。
これはグローバルな電動化トレンドにおいて、エンジン開発にリソースを割く余裕はないという宣言と捉えるのが妥当だ。
トヨタはエンジン車の環境性能を引き上げることで、エンジン車の必要性をアピールしているが、同時に全固体電池の公道実験を進めるなど電動化時代にも対応できるような技術開発を行なっている。そのように全方位的に開発リソースを割ける体力のある企業は、現時点で世界一の販売台数を誇るトヨタくらいしかない。
ホンダをはじめとした他社は将来トレンドをエンジンなのか電動化なのかを見定め、そこに投資するほかない。そう考えれば、ホンダが電気を選んだというのは至極当然といえる。
つまり、すでにホンダは新規のエンジン開発をほぼ凍結していると考えるのが妥当だ。もちろん、すぐさま新車販売のすべてが電動車になるわけではないから、各地域の法規制に合致させるよう既存ユニットのブラッシュアップは進めるだろうが、完全な新設計エンジンについては開発が止まったとみていいだろう。
もっとも、ホンダはアメリカで新開発3リッターV6ターボを積んだアキュラTLXタイプSをデビューさせた。
また、日本でフルモデルチェンジした11代目シビックが当面は1.5リッターガソリンターボだけのラインアップとなっているように、しばらくはこれまでに開発してきたエンジン車が新車として登場することもあるだろう。
最後のエンジン車にプレミアがつく可能性はあるが維持は困難
しかしながら、現時点で新規エンジンの開発が止まったとすれば、3年後にはホンダから新しいエンジンが出てくることはなくなると考えられる。
そうであれば、現時点でホンダのエンジン車を買っていいものかどうか、という疑問が湧いてくる。
将来を予想するのは難しいが、これまでの流れからすると車両の生産終了から5~10年程度は純正部品の供給はされると考えられる。2040年にホンダがエンジン車の新車販売を止めたとしても、2035年に新車購入したHEVのエンジン部品はおそらく入手できるだろう。
2040年にホンダのエンジン車がいきなり維持不能になるということは考えづらい。
また、ホンダがエンジン車を止めるということは最後のエンジン車にはプレミア的な価値が付く可能性もある。一般的なリセールバリューを期待するのは難しいかもしれないが、趣味人を対象にした中古車販売であればホンダのエンジン車に価値が生まれる可能性もある。
ただし、ホンダについていえばオーバーサイズピストンの生産を終了したという過去もある。趣味性の高いクルマ(エンジン)であればサードパーティ製のパーツ供給も期待できるが、それはごく一部の人気車に限られるだろう。
ところで、ホンダに限らず全体としてエンジン車のリセールバリューは落ちていくはずだ。なぜなら、エンジン車は不便なものになっていく可能性が高いからだ。
トヨタが主張するようにHEVの環境性能が高いとして、それはガソリンの消費量が少ないことを意味する。そしてトヨタとその仲間たち以外の自動車メーカーが電動化に進んだとすれば、ますますガソリンの消費量は減っていく。
そうなると、全国的にガソリンスタンドというインフラが壊滅するであろうことは、ほぼ確実といえる。ガソリンが気軽に手に入らない世の中でエンジン車を乗るというのは趣味であれば許容できても、日常の足とするには不便極まりないということになるだろう。
また、トヨタの言い分としては「エンジン車を作ることは雇用の維持につながる」という。この発言を裏返せば、電動化は雇用を減らすという意味であり、BEVが主流の時代になると人件費が減るという風に理解できる。
すなわち、BEVというのは将来的に製造コストが下がる可能性が高いのだ。現在、電動車の高コストのもとになっているバッテリーがある程度コストダウンできてしまうと、あえて製造コストの高くなるエンジン車を買おうというユーザーは少数派になるだろう。
そうなると、ますますガソリンインフラは消滅していくと容易に想像できる。日常的にガソリン給油することは難しくなり、エンジンオイルのような油脂類の入手も困難になるだろう。
現時点でホンダのエンジン車を買ったとしても10年乗るというのであれば問題ないといえる。ただし、何十年もエンジン車に乗り続けるというのであれば消耗部品の確保などメンテナンス、そして燃料(ガソリン)の確保という点から、かなり難易度の高い選択になる可能性は否定できない。
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