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サルーンボディを切り貼り! フォード・ゼファー MkII ファーナム・エステート(1) 生き残りをかけたワゴン

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サルーンボディを切り貼り! フォード・ゼファー MkII ファーナム・エステート(1) 生き残りをかけたワゴン

生き残りのためのステーションワゴン・ボディ

1950年代の英国フォードは、グレートブリテン島のサルーン市場で圧倒的シェアを誇っていた。その主役といえたのが、コンサル、ゼファー、ゾディアックという3兄弟。この成功によって、ステーションワゴンの提供は真剣に捉えられていなかった。

【画像】サルーンボディを切り貼り フォード・ゼファー MkIIのステーションワゴン 同時期のモデルと比較 全141枚

ルーフラインの延長は社内で検討されていたものの、資料に残るプロトタイプの写真を見る限り、美しさと実用性の両立には苦労していた様子。そこへ目を付けたのが、英国南部、ファーナムに拠点をおいたコーチビルダー、EDアボット社だった。

量産車はモノコック構造が一般的となり、セパレートシャシーを前提に特別なボディを仕立てていたコーチビルダーは、仕事を奪われつつあった。生き残りのため、ステーションワゴン・ボディの製作は不可避といえた。

1954年のロンドン・モーターショーに出展されたコンセプトモデルが、フォードによる依頼だったのか、EDアボット社が独自に提案したものなのか、明らかではない。それでも、丸みを帯びた初代ゼファー MkIは、ステーションワゴンの好適な土台になった。

モノコック構造を採用したフォード初の量産車だったゼファー MkIは、前例がなかったこともあり、かなり強固にボディが設計されていた。そのおかげで、剛性を大きく落とす心配なく、ボディ後方を切断することが可能だったようだ。

高い実用性と違和感のないシルエット

EDアボット社の工場で、リアピラーから後ろへ新しいサイドパネルを溶接。既存のサルーンをベースにしたとは思えないほど、見た目の整ったステーションワゴンが生み出された。

ポイントといえたのが、ルーフライン。ドーム状に膨らんだオリジナル部分を保ちつつ、延長部分を僅かに低い位置でつなげ、剛性を確保。クロームメッキされたルーフレールとストラップを追加し、高い実用性と違和感のないシルエットを生んだ。

テールゲートは横開きで、リアウインドウはサルーンのものを流用。ゼファー MkIだけでなく、コンサル MkIとゾディアック MkIでも、ステーションワゴン仕様を選ぶことができた。145ポンドから200ポンドの追加費用を準備すれば。

この優れたベースとなったゼファー MkIは、1951年に発売。エンジンはゾディアックと同じオーバーヘッドバルブの2.2L 直列6気筒で、四輪に油圧ブレーキを装備した。サスペンションはフロントに独立懸架式を採用するなど、モダンな技術が投じられていた。

最高速度は136km/hがうたわれ、前後のベンチシートで定員は6名。マクファーソンストラットが快適な乗り心地を提供し、来るべき高速道路時代に対応した。当時の英国のドライバーにとって、歓迎されるパッケージングといえた。

安価に設定されたコンサルは、大きなボディを必要としつつ、倹約思考の家族向け。エンジンは1.5L 4気筒が載った。

生産が間に合わない勢いだった3兄弟の需要

ゼファー MkIの評判を強くバックアップしたのが、1953年のラリー・モンテカルロでの優勝。直列6気筒エンジンが許容する能力の高さが示され、ハイパワーを求めるドライバーへ応えるため、チューニング市場が生まれたほど。

専用シリンダーヘッドのほか、ツイン・キャブ化やトリプル・キャブ化、ビッグバルブ、エグゾースト・マニフォールドなど多数のパーツを各メーカーが提供。保守的な設定だった、6気筒エンジンの可能性を引き出した。

加えて、ベースグレードでもゼファー MkIは価格価値に優れていた。1953年に追加された上級モデルのゾディアック MkIには、ツートーン塗装にスポットライト、ホワイトウォール・タイヤ、レザー内装やヒーターを装備。訴求するターゲットの幅を広げた。

生産が追いつかなくなるほど3兄弟の需要は強く、ゼファーとゾディアックをフォードは5年間で約17万5000台提供。その人気に押され、デイムラーやブリストルといったメーカーは、衰退を余儀なくされてしまうのだが。

ファーナムのEDアボット社が提供したステーションワゴンは、その2%に過ぎなかった。とはいえ、2代目3兄弟にもラインナップさせるには充分な数といえた。

リアシートはボディから取り外し可能

1956年に発売された2代目、ゼファー MkIIのスタイリングを手掛けたのは、フォードに在籍していたコリン・ニール氏。ふくよかに膨らんだMkIから、全長は165mm、全幅は76mm拡大し、伸びやかでスマートな容姿に仕上げられた。

フォードの技術者は構造の理解を深め、剛性を維持しつつ、不要なスチール材を削ることに成功。サイズを大きくしつつ、車重は50kg程度の増加に留めていた。また、ホイールベースの延長と、大きな燃料タンクを得たことで、前後の重量配分も改善していた。

MkIと同じく、前後に3名がけのベンチシートを備えながら、インテリアも一新。車内空間もゆとりを増した。英国フォード初となる、イグニッションキーでスターターモーターを回す仕組みも導入された。

ステーションワゴンのリアシートは、ボディから取り外しが可能。郊外でのピクニックでは、地面においてベンチにすることも可能だった。背もたれは折りたため、荷室容量を2倍に広げることもできた。

リアガラスはMkIと同様にサルーンからの流用で、テールゲートの横開きスタイルも継承。ウインドウを囲うクロームメッキ・トリム部分で塗り分けられる、ツートーン塗装が幅広く設定された。

またサルーンと異なり、ステーションワゴンのリアには高レートのサスペンション・スプリングと、ひと回り大きいタイヤを装備。上級モデルのゾディアック MkIIには、専用のホイールカバーとエンブレム、サイドミラーやフロントグリルなどが与えられた。

この続きは、フォード・ゼファー MkII ファーナム・エステート(2)にて。

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