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名門いすゞの超異端児! 売れば売るほど赤字だった幻のSUV「ビークロス」とは

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名門いすゞの超異端児! 売れば売るほど赤字だった幻のSUV「ビークロス」とは

先見の明がありすぎた「ビークロス」という突然変異種

 ビークロスの登場は1997年3月。今から24年以上も前のことになる。だが、“同じRVのなかにセダンやクーペやスポーツカーがあってもいい”と、まるで今のSUV界のムーブメントを予知していたかのようなコンセプトでビークロスは誕生したのだった。

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 当時のいすゞは1993年に3代目ジェミニを最後に、すでに乗用車の自社生産から撤退(以降ジェミニは2000年までホンダ・ドマーニ、シビック・フェリオのOEM車として継続)。1997年時点では、2代目ビッグホーン、初代ミュー、ミュー・ウィザードが自社生産の(今でいう)SUV系モデルとして残っていた。そこに、まさしくミュータントの如く現れたのが、このビークロスだった。

ジェミニベースのプロトタイプ

 車名の“VehiCROSS”は、Vehicle(乗り物)/Vision(未来像)とCross(交差)を掛け合わせた造語で、日常と非日常のクロスオーバー……そんな意味を持つ。細かいことだが、カタカナ表記が当初(プロトタイプ時)は“ヴィークロス”だったが、市販車では日本語としてのわかりやすさを考えて“ビークロス”としたとのこと。

 プロトタイプは1993年の第30回東京モーターショーに出品され、このときの高評価が後押しとなり市販化へ。このプロトタイプは当時のジェミニ(3代目のハッチバック)をベースに仕立てられたもので、実際の市販車よりもボディサイズがひとまわり小さいものだった。開発は欧州(ベルギーの拠点、イギリスの制作会社)で行われている。オリジナルのキーデザインを創出したのは、ロータスから移籍してきたイギリス人のデザイナー、サイモン・コックスだった。

足まわりにはラリーレイドからフィードバックされた技術を採用

 アウトラインを辿ると、実際の量産化では当時のミュー、ビッグホーン(ショート)をベースに作られた。2330mmのホイールベースが共通なのはそのことを物語る。とはいえいすゞ伝統のダブルウイッシュボーン(フロント)と、リヤの4リンク式コイルサスペンションは専用にチューニングされ、前後のアルミ製モノチューブ別体タンク式ショックアブソーバーと強化キャブマウントなどは、ラリーレイドからフィードバックされた技術だった。

 搭載エンジンはディーゼルは設定されず、V6の3.2Lのガソリンエンジンのみ。4WDシステムには、当時の最新システムだった電子制御トルクスプリット4WD(TOD)が採用されている。

ポリプロピレン樹脂パネルで無骨さを主張

 とはいえビークロスで何といっても注目だったのは、今見ても「これが本当に量産の市販車なのか!?」と思わずにはいられないスタイリングだ。カタチそのものも、とにかく例を見ないものだったが、ボディ下半分を前後バンパー部を含め大胆に無塗装のポリプロピレン樹脂パネルとした構造も類を見ないものだった。

 この樹脂パネルはヘクサローブ(トルクスネジ)で止められているが、これは特殊な工具を使わなければスグには外れない(外されない)ようにしたため。また当時のSUVらしくスペアタイヤは背負う方式だったが、バックドアを開けて内側からマウントするようにしてあり、外側はドアと一体でデザインされたカバー状に。この後方視界を補うため、そのカバーのISUZUのロゴ直上中央にカラーのバックアイカメラが標準装備されたが、これはバス以外では初のことだった。 一方で合理的だったのが、灯体類の他車からの流用。いずれも当時の国産市販車からで、ヘッドライトはオートザム・キャロル(北米仕様は別の異形リフレクターだった)、フロントの楕円のウインカーはダイハツ・オプティ、ポジションランプはニッサン・パオ、そして丸型のサイドマーカーランプ(ターンシグナルランプ)はユーノス・ロードスターといった具合だ。よく見ればポジションランプのアウターレンズにNISSANの刻印があるのが発見できた、という。

ボディカラーは標準で5色が設定されていた

 インテリアでは55Lエアバッグ内蔵のMOMOのステアリングホイールや、専用の柄が用いられたレカロシートは当時の新型で日本初採用だった。インパネは基本的にミューの流用。 ボディカラーは標準で5色が設定され、Cピラー部の車名ロゴが各ボディ色ごとに“色合わせ”がされているとうこだわりも。さらに1997年には“プレミアムカラープロデュース25”がオプション設定されたが、実情では塗装はほとんど手作業で行われていた……というのが、ハンドメイドの117クーペや大型トラックの個別注文を手がける、いかにもいすゞらしいところ。 また1999年2月になると、“175 LIMITED EDITION”と銘打ち(175はビークロスの開発コード)、最終ロットの限定特別仕様車がリリース。このモデルは赤/黒の専用インテリア(レカロシートはレザー)や、外観ではステンレスのグリルガーニッシュとポリッシュ仕上げのアルミホイールなどが装着された。 プレスにはせいぜい3000ショットが限界と言われた“セラミック型”を用い、セミハンドメイドで作られたビークロス。295万円の販売価格も、450万円くらいの設定でなければ本当はペイしなかった……とも。“早過ぎた○○”とはよく使われるフレーズだが、いすゞ・ビークロスはノストラダムスよりも超先見の明があったクルマだった。

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みんなのコメント

6件
  • つくづく今現在でもいすゞの乗用車が有ればどんな車があるのかって思ってしまう。
  • いすゞが先見の明で開発し実用化したTOD(トルクオンディオンド)
    これの実現が無かったら、ポルシェから技術提携を申し入れて来る事は無かったし、ポルシェから我が社の大切なテクニカルパートナーだと思われる事も無かった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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