Audi e-tron Sportback × Jaguar I-Pace × Mercedes-Benz EQC
アウディ e-tron × ジャガー Iペイス × メルセデス・ベンツ EQC
ポルシェのSUV一気乗り! カイエンとマカン、それぞれの立ち位置を検証する 【Playback GENROQ 2017】
EVなれど強烈なアイデンティティを示す3台
アウディ初の電気自動車であるe-tronスポーツバックがデビューした。ジャガー Iペイスとメルセデス・ベンツ EQCがすでに導入されている中、満を持した状態で日本市場に乗り込んできたのがアウディだ。それぞれのブランドの哲学を追ってみよう。
「日本においては今なおピュアEVを評価するための物差しが十分に足りていない」
メルセデスの広報車担当氏曰く「最近急にEQCの貸し出しが増えました。やっぱりライバルが出たからですかね」。もちろん、その通り。同じことはIペイスをラインナップしているジャガーにも言えるだろう。アウディ e-tron スポーツバックが本邦上陸を果たした今、メディアのみならずこのクルマに関心のある多くの人が同クラスのライバルと横並びにして比べたがるに違いない。それなりに情報は流れているが、こと日本においては今なおピュアEVを評価するための物差しが十分に足りていないのである。
では新登場となるアウディ e-tron スポーツバック 55クワトロ ファーストエディションを見ていこう。e-tronの名前がよく知られているのは、過去にA3スポーツバック e-tronというプラグインハイブリッド車が販売されていたことと、そして今回のe-tronがヨーロッパでは2年前にデビューしていたからである。サイズ的にはアウディ Q5よりはひと回り大きく、しかし4900mmというe-tronの全長はQ8より105mmほど短い。とはいえSUVクーペ風のスタイリングを考えれば、実車の印象はかなりQ8に近いと言っていいだろう。
「e-tronの見た目はアウディのガソリン車のそれに近い」
e-tronスポーツバックはピュアEVの定石通り、床下に総電力量95kWh、重量700kgのリチウムイオンバッテリーを敷き詰めている。その上にたっぷりとした室内空間を設け、しかしリヤの荷室は目いっぱいまでいらないので斜めにカットすれば今をときめくクーペSUVの出来上がりだ。総重量は2.6トン近くなるが、電子制御のエアサスが重みを中和してくれるはず。
実際にフルード冷却用に使われているフロントグリルや奇をてらわないスタイリングなど、e-tronの見た目はアウディのガソリン車のそれに近い。細めのスポークで構成されている21インチホイールのデザインにもEVっぽさがない。
「EQC 400 4マティックにはEVらしい近未来感が振りかけられている」
そんなアウディと比べると、白いボディのメルセデス・ベンツ EQC 400 4マティックにはEVらしい近未来感が振りかけられている。ディッシュ型のホイールに入った青いラインも、(クルマから直接)排気ガスを出さないクリーンなイメージを強調したいのかもしれない。近所の人に「オヤッ」と言わせれば、「実はこれ電気自動車なんですよ」と話しはじめることも容易だ。EQCはそんな手助けをしてくれる、程よい見た目の持ち主と言えるだろう。
アウディe-tronとEQCのデビューはともに2018年の9月だが、ジャガーIペイスはそれよりも半年ほど早く生まれている。日本ではe-tron、EQC、Iペイスの順で新しく見えるが、今回のプレミアムピュアEV3車には大した時間差がないのである。
とはいえ日本に輸入されたアウディe-tronに少しだけ熟成期間があったことも事実だ。ドライブしてみた印象も実によかった。車重がストレスではなくしっとりとしたプレミアム感に繋がっているし、モーター駆動になってもクワトロらしさは健在。身を低くして4輪で地面を蹴るような強い接地圧がちゃんと感じられたのである。アウディの長所である設計、組み付けの質に関してもケチのつけようがなかった。カメラで撮影した映像をドア付近のモニターに映し出すバーチャルエクステリアミラーの感覚にさえ慣れてしまえばガソリン車と遜色なく扱える。
「Iペイスのデザインやドライブフィールがはっきりと異質に映った」
ボディの形状を考えれば、今回の3台で真っ向勝負をしているのはe-tronスポーツバックとEQCだろう。だがファーストエディションでフル装備、1346万円にもなるe-tronスポーツバックと、1080万円のEQCでは「満たされ感」が違って当然である。
スタイリングこそ少しピュアEV感を強調しているEQCだが、いざ乗り込んでしまうと普通のメルセデスと大差ない。というかモダンなメルセデスのインテリアデザインが総じてEQ的だと感じているのは僕だけだろうか。リヤのみエアサスで車高を絶えずフラットに保つという実用に徹した流儀もメルセデスらしくていい。e-tronよりもひと回り小さく、ホイールベースが短いので小回りが利くという点もEQCの親しみやすさに繋がっている。
本誌の今年3月号の企画でEQCとIペイスで旅に出たことがあった。この時は2台を乗り比べてみても、メルセデスとジャガーというブランドの違い以上のものは感じられなかった。だが今回は典型的なSUVスタイルをとるドイツ勢に対して、Iペイスのデザインやドライブフィールがはっきりと異質に映った。
「ジャガーIペイスは紛れもないEV界のスーパースポーツである」
EV専用のアルミニウムシャシーを与えられているので鼻先が短く、キャビンが少し前進することで長いホイールベースと広い室内を確保する。既存のプラットフォームをベースとしたクルマ造りをすることで、生産ラインも共用できコストも抑えられると踏んだドイツ勢に比べれば、ジャガーは本気で理想のEVに向かって舵を切ってきたのである。
今回少しだけ不安だったのは、最新のライバルと比較することでIペイスの乗り味が古く感じられたりはしないだろうか、という点だった。この青い広報車には何度か乗ったことがあり、オドメーターには1万5000kmほどの数字を刻んでいる。だがそんな心配は杞憂に終わった。むしろライバルより250~300kgも軽い車重によって操る楽しさを感じさせてくれたのである。
以前Iペイスでサーキットをスキール音を鳴らしながら攻めた時には、ガソリン車との比較だったのでそこまでのスポーティ性が理解できなかった。だが今回は街中を走らせただけでその差が歴然としていることがわかった。IペイスというクルマはプレミアムEVの比較対象が少なかっただけで、元から飛び切りスポーティなクルマだったのである。
ジャガーの銘車である初代のXJ6サルーンは4ドアセダンにしては細く絞られたボディによって室内が狭く、しかしル・マンに出場したレーシングカー由来の足まわりによってスポーティな走りと有名な猫脚を備えていた。21世紀に入ってから花開いた4ドアクーペだが、その元祖は初代XJ6だったのである。そして当のジャガーは自らの功績に固執することなく、ピュアEVの世界で新たな個性を確立しようとしている。
「普段使いの質感はアウディやメルセデスの方が優れている」
今回の3台の最高出力は300kW付近でほぼ横並びとなっている。前後に200ps程度のモーターを搭載してAWD化した、総計400ps級のモデルといったほうがわかりやすいだろう。パワーの出方や身のこなしは圧倒的にIペイスが印象的だが、EVとしての造り込み方においてはドイツ勢に分があると感じた。回生システムを含めたドライブフィールの自然なつながり感や、ボディサイズの把握のしやすさといった普段使いの質感はアウディやメルセデスの方が優れている。
だがそれでも「ジャガーいいな」という印象が揺るがないのは、日本におけるピュアEV全体のことを考えた場合の結論にも通じている。
例えば販売車両の半数以上がピュアEVになっているノルウェーならばインフラも完璧なので、マイカーはピュアEV1台で事足りるはずだ。そんな市場ならばピュアEVの性能的な部分やクルマとしての使い勝手がかなり厳しく評価され、メルセデスやアウディのモデルが当然のように普及していくのだと思う。
だが日本では今なお、ピュアEVを購入するのはアーリーアダプターと呼ばれる冒険的な顧客層のままだ。「ライバルが出たのでEQCの貸し出しが増えた」という冒頭のエピソードも、我々ジャーナリストのピュアEVに対する遠慮しがちなスタンスをよく表している。つまり自宅に充電施設もないので、取材でもなければ敢えて普段乗りしてみようとは思わないというわけだ。
「3車ともにEVとして確固たる個性を確立していることに改めて驚いた」
今回のようにピュアEV3台を比べてみると、ブランドごとの個性や狙いがはっきりと違うことがわかるし、各車がかなりに熟成されていることもわかる。けれどそれを日本という国に当てはめたときには、その評価がそのまま通用しないのである。
例えば生真面目なジャーナリストならば実際の航続距離を事細かに調べたりするのだろう。しかし今の段階では10km余計に走れたところで充電ステーションにたどり着ける保証はないし、もし運よく到着できたとしてもその充電スタンドとクルマの相性がいい保証もない。
ガソリン車であれば何の苦労も伴わない日本において敢えてピュアEVを手に入れるならば、そこに相応の刺激や気持ちよさ、優越感があるべきだろう。飛び切りスタイリッシュで、未来的なフィーリングを持ったIペイスにはそれがある。おそらく今最も注目を浴びているポルシェ・タイカンだってそうに違いない。夜中に急に呼び出されて「タイカンに乗せてやる」と言われれば喜んで行くし、飛ばし過ぎて電欠してしまってもきっといい思い出になる。そういった意味では日本におけるピュアEVは、スーパーカー的な乗り物として捉えたほうが現時点では正解なのでは? 今回の3台をドライブした偽らざる結論がこれである。
REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
【SPECIFICATIONS】
アウディ e-tron スポーツバック 55クワトロ 1stエディション
ボディサイズ:全長4900 全幅1935 全高1615mm
ホイールベース:2930mm
車両重量:2560kg
最高出力:300kW(408ps)
最大トルク:664Nm(67.7kgm)
駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
総電圧:397V
総電力量:95kWh
トランスミッション:1速固定
駆動方式:AWD
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ディスク
航続距離(WLTCモード):405km
車両本体価格:1346万円
ジャガー Iペイス HSE
ボディサイズ:全長4695 全幅1895 全高1565mm
ホイールベース:2990mm
車両重量:2240kg
最高出力:294kW(400ps)/4250-5000rpm
最大トルク:696Nm(65.9kgm)/1000-4000rpm
駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
総電圧:388.8V
総電力量:90kWh
トランスミッション:1速固定
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後インテグラルリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
航続距離(WLTCモード):438km
車両本体価格:1183万円
メルセデス・ベンツ EQC 400 4マティック
ボディサイズ:全長4770 全幅1925 全高1625mm
ホイールベース:2875mm
車両重量:2500kg
最高出力:300kW(408ps)/4160rpm
最大トルク:765Nm(78kgm)/3560rpm
駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
総電圧:349V
総電力量:80kWh
トランスミッション:1速固定
駆動方式:AWD
サスペンション:前4リンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
航続距離(WLTCモード):400km
車両本体価格:1080万円
【問い合わせ】
アウディ コミュニティセンター
TEL 0120-598106
ジャガーコール
TEL 0120-050-689
メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
「ノーマルタイヤで立ち往生」に国交省ブチギレ!?「行政処分の対象です」2年連続で大量発生…「スタックの7割が夏用タイヤ」今年も緊急警告
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
日産「新型スカイライン」発売! 歴代最強「匠“手組み”エンジン」×旧車デザインの「特別仕立て」登場も「次期型」はもう出ない…? 「集大成」完売した現状とは
いずれスポーツカー[バブル]は崩壊する!! その時あなたは買う勇気があるか!?
オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?