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メーカーが回収・解体したはずだった幻のロータリー実験用販売車両が出現、シトロエン「M35」に驚きのオークション結果

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メーカーが回収・解体したはずだった幻のロータリー実験用販売車両が出現、シトロエン「M35」に驚きのオークション結果

COMOTOR製995ccロータリーを搭載! マリン・コレクション収蔵車だった幻のシトロエンM35出品!

2026年8月14日に開催されたモントレー・カー・ウィークの「ザ・クエイル・オークション(The Quail Auction)」に、フランス自動車史における最もユニークで希少な実験車両が出品された。Lot No.294の「1970年式 シトロエン M35」だ。シトロエンがかつてロータリーエンジンの可能性を模索し、ドイツのNSU社との合弁会社を作ってバンケル・ロータリーエンジンを開発しクーペモデルに搭載した希少な実験車両が、約287万円で落札された経緯を解説する。

壊れるリスクより「最高のハイドロ乗り心地」。シトロエンBXと順調に走り続ける仏車ライフ

回収解体処分を免れた幻のシトロエンM35が米オークションで悲しすぎるハンマープライス……

今回出品された個体(シリアルNo. 124)は、メーカーによる解体処分を免れた奇跡の1台だ。ボディカラーは専用の「Giallo/Gris Nacré Métallisé(パールグレーメタリック)」を纏っている。フランスのドルドーニュ地方で過ごした後、ベルジュラックのシトロエン正規ディーラーでレストアを受け、リヨンのプライベートコレクションを経てアメリカへ輸出された。

その後、クラシック・シトロエンの殿堂として世界的に知られるアメリカのカリフォルニア州にあった「ピーター・マリン・コレクション(Mullin Automotive Museum:ピーター・マリン氏の逝去に伴い2024年2月10日に永久閉館)」に収蔵。走行距離はわずか1万8704kmで、シトロエン発行の「出生証明書(Birth Certificate)」や最新のアプロイザルレポートも付属している。

ロータリーエンジンの夢を追い求めたシトロエンの情熱が詰まった「M35(Mは仏語でエンジンを意味するMoteur=モチュール、35はシトローエン社内の開発プロジェクト番号)」。回収を逃れて現存する個体が市場に姿を現したこと自体が、世界中のシトロエン・マニアにとって大きな話題となった。

COMOTOR製ロータリーエンジンとハイドロニューマチックを積むウリエ製2+2クーペ

1960年代末、次世代パワートレインとして脚光を浴びていたバンケル・ロータリーエンジン(ローターの回転によって動力を生み出す構造)。シトロエンはドイツのNSU社と提携し、合弁会社「COMOTOR(コモトール)」を設立して独自のロータリーエンジン開発に乗り出した。

その実証実験として誕生したのが「M35」だ。シトロエンは走行距離の多い忠実な顧客を厳選し、長期評価プログラムとしてこの車を限定販売した。ユーザーには2年間のメーカー保証が与えられる代わりに、日々の走行データやフィードバックをシトロエンの技術部門へ提出する義務が課せられた。まさに「顧客がテストドライバー」となった前代未聞のプロジェクトである。

ボディ造形は、ランボルギーニ・プレグンタ等で知られるフランスの名門コーチビルダー「ウリエ(Heuliez:フランスの名門車体製造業者)」が担当した。コンパクトなアミ8(Ami 8)のコンポーネントをベースに、伸びやかな2+2クーペ(前席優先で後席に補助スペースを備えた2ドア車)スタイルへと昇華させた。足回りには、シトロエンの代名詞である独自の油圧制御サスペンション「ハイドロニューマチック(油圧と高圧ガスで車高や乗り心地を自動制御する機構)」とフロントディスクブレーキが組み込まれている。

267台で打ち切られたダブルシェブロンの幻の実験車は予想を大きく下回る約287万円で落札

しかし、先進的な試みは長く続かなかった。995ccのシングルローターエンジンは極めて滑らかに回ったものの、当時の技術ではオイル消費量と燃費の悪さが大きなネックとなり、オイルショックの影響も受けてプロジェクトは開始からわずか2年で凍結。当初の目標数を大幅に下回る「267台」のみが生産された時点で打ち切られた。

さらに悲劇的だったのはその後の運命だ。シトロエンは将来的なアフターサービスや部品供給のコストを回避するため、市場に出回ったM35のほとんどをオーナーから買い戻し、解体処分(スクラップ)してしまったのである。そのため、回収を免れて現存するM35は世界に数えるほどしか存在しない。

2026年8月14日に開催された「The Quail Auction(Lot 294)」において、本車は最低落札価格無しのノーリザーブ(Offered Without Reserve:最低落札価格を設定しない競売形式)で出品された。事前に設定されていた予想落札価格であるエスティメートは3万~4万ドル(日本円で約480万~640万円/1ドル=160円換算)であったが、最終的なハンマーの価格は1万7920ドル、日本円で約287万円となった。事前予想を下回る着地となったものの、287万円という落札価格は、歴史的希少性を考えるとダブルシェブロン(シトロエン社の象徴的なブランドロゴ)のマニアにとってはまさに宝物を掘り当てたような掘り出し物と言えるだろう。

※為替レートは1ドル=160円(2026年8月29日時点)で換算

■注目ポイント

長距離を稼ぐ顧客をテストドライバー代わりにロータリーエンジンの開発用に限定販売され、267台のみで打ち切られた実験的2+2クーペ メーカーによる回収・解体処分を免れ、ピーター・マリン・コレクションに収蔵されていた奇跡のシリアル No.124事前予想(約480万~640万円)を大きく下回る1万7920ドル(約287万円)にてノーリザーブ落札されたオークション結果

■車両情報

車両名称:1970年式 シトロエン M35(No. 124) 出品オークション:The Quail Auction(2026年8月14日開催 / Lot 294) 条件:ノーリザーブ(Offered Without Reserve) エスティメート:3万~4万ドル(約480万~640万円 ※1ドル=160円換算) 落札価格:1万7920ドル(約287万円 ※1ドル=160円換算) シャシーNo.:00EA0124 シトロエンNo.:5026351525 エンジンNo.:XU000013 ボディNo.:31179668 エンジン:995cc シングルローター バンケル・ロータリーエンジン(COMOTOR製) トランスミッション:4速マニュアルトランスミッション サスペンション:ハイドロニューマチック・サスペンション ボディスタイル:2+2 クーペ(ウリエ/Heuliez 製) 総生産台数:267台(のちに大半がメーカー回収により解体処分) ボディカラー:Gris Nacré Métallisé(パールグレーメタリック) 走行距離:18,704km(約1万8704km) 前所有歴:元ピーター・マリン・コレクション(Mullin Automotive Museum)収蔵車

文:Auto Messe Web AMW編集部
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みんなのコメント

21件
  • xqx********
    博物館に展示するだけならいいけどこの時代の今となっては一品物に近いロータリーエンジンとハイドロニューマチックという難物が組み合わされた車を乗れる状態で維持しようとすれば相当大変だろうからねえ。
  • noh********
    どんな変態が落札したのか見てみたい
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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