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【全盛期は意外に早く終焉??】ハイブリッド車はいつ主役ではなくなるのか

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【全盛期は意外に早く終焉??】ハイブリッド車はいつ主役ではなくなるのか

 今や日本ではハイブリッド車(HV)全盛。新車(登録車)の約4割をHVが占めているし、販売ベスト5の車をみてもシエンタ、プリウス、セレナ、ノート、アクアと全車にHVが設定されている。

 ただ、よくよく考えてみると、HVは、モーターとエンジンという2つの動力源を持つ点で、効率的とはいえない側面があるし、ある意味でEVが技術的に発展するまでの「つなぎの技術」であるという見方もできる。

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 HV全盛はいつまで続くのか?

 本稿では、自動車ファンの視点とは少し離れたところから、世間一般の動向や環境の変化に焦点を当てて自動車ジャーナリストの御堀直嗣氏に解説してもらった。

文:御堀直嗣
写真:編集部、HONDA

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あと10年でHVは主役ではなくなる!?

日本自動車販売協会連合会のデータ(2019年8月)を見ると、HVの乗用車全体に占める割合は38.7%。対してEVは0.9%に留まっているが、この傾向はどのように変化していくのか

 あと、10年もすれば、HVは一定の役割を終えるのではないかと思う。

 自動車メーカー各社は、当面の燃費向上策と消費者が受け入れやすい姿として、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車(PHEV)に力を注いでいる。

 一方で、電気自動車(EV)に関しては、一充電走行距離が400km前後の性能を持つまでに至っているが、それでもなお、充電設備に対する懸念を語る声は多い。

 もし、EVが普及すれば、充電器が足りなくなるのではないかというのがその理由である。あるいは、集合住宅における管理組合で設置に合意が得られない懸念も残る。

 それらはいずれも、車の送り手側である自動車メーカーの視点や、まだEVを使った経験のない人たちの論旨であり、その論議の中心は技術論であることが多い。

 一方で、ここ数年来異常気象が、単発的なできごとではなく毎年のように定期的に発生する状況となっており、集中豪雨や猛暑、冬の豪雪や視界を奪う吹雪など、生活に直結した災害を身近に感じる機会が増えている。夏や冬が訪れることに恐怖を覚える人もあるのではないか。

 気候変動の大きな要因の一つは、海水温度の上昇である。それは、1℃というように小さな値に思えるが、たとえば風呂の温度を考えると、39℃と40℃の温度差は大きい。

 さらに、夏に感じるのと冬に感じるのでは、温かさの感触も違ってくる。そのように、空気の温度に比べ水の温度差は思っている以上に影響力が多い。

 なおかつ、風呂の温度がなかなかさがらないように、海水温は一度上がってしまうとなかなかさがらない。

 現在のように大気の温度が上がってくると、冬より夏の方が風呂の温度が下がりにくいのと同じように、海水温度はもう下がらなくなっているとさえいえるかもしれない。

 したがって、異常気象が解消する目途は立たない。

 そのようないま、もはや燃費が多少いいという程度の排ガスの改良では環境を改善させることは難しい。一気に、排ガスゼロを目指さなければ、環境の改善どころか、現状の環境を維持することさえ難しくなるだろう。

HVでは“排ガスゼロ”は実現できない

マツダはSKYACTIV-X等、内燃機関の効率化を図る戦略を採る。たしかに火力発電が大半を占める現状ではEV化が進んでもCO2排出量はゼロにできない。一方エコを謳うHVでも問題の根本解決には至らない

 一方で、マツダが主張するように、燃料の基から消費まで、いわゆる“ウェル・トゥ・ホイール”の視点で考えると、二酸化炭素(CO2)の排出量は、現状、火力発電に依存した電気を使うEVと、効率を最大限に高めたエンジン車とほぼ変わらないとの論旨がある。

 しかし、そもそも火力発電に依存した発電である現状を認めること自体、環境改善とは縁遠い話である。

 少なくとも車をすべて排ガスゼロのEVとし、国に排ガスゼロの発電を求めるくらいの国民的意志がなければ、いまの異常気象は改善の道が閉ざされることになる。

 発電の方法は、自動車メーカーが選択できないことである。しかし、だからといってエンジンに依存したのでは、自らの首を絞めることになる。

 EVの普及へしっかりとした道筋をつけ、普及のための啓蒙を消費者に行うのが自動車メーカーの役目だろう。

 そのうえで、消費者の消費行動という視点からHVの行方を考えると、10年後の消費者心理の変化を想像することができる。

 いまの20~30代の人たちは、50~60代に比べ、自らが得られる価値と、それに投じる金額との合理性に厳しい目を持つ。

 簡単に言えば、バリュー・フォア・マネーを厳密に判断しながら生活しているということだ。

 余計なものを持つより、快適な日々の暮らしを送れることを望んでいるのではないか。ブランド品でさえ、しばらく使ったらインターネットで処分することをいとわない。

 その点からすれば、車を所有することは大きなリスクを伴う。

 支払いのローンがあり、月々の駐車代金があり、なおかつガソリン価格は頻繁に上下し、そして損害保険や税金を毎年支払わなければならない。

ユーザーの嗜好変化が10年後に「HV主体」を変える?

いよいよ世界初公開となったホンダ e。車に対する価値観の変化ともに、新しく、魅力的なEVがHV全盛の流れを変えていく可能性もある

 ことに都市部では、カーシェアリングやレンタカーを利用した方が支払料金に対する対価として、車を利用することにおいてははるかに合理的だ。

 タクシーを頻繁に使っても、車を所有するより安上がりとの試算もある。所有から利用へ、車の価値は大きく変わりはじめている。

 そうした20~30代の人たちが、10年後には30~40代となり、社会の中核をなす世代となる。企業で働く場合においても、先行きを判断し、商品を企画開発する最前線に立つことになるだろう。

 そのときの商品企画は、現在とは様変わりすると私は見ている。10年後もなお、ハイブリッドにこだわる理由を、彼らはどこに見るだろうか。

 車の共同利用の点において、現在はなおEVの車両価格が高止まりの状況にあるが、運用の面では、ガソリン価格に比べ電気代は半分以下という経済性がある。

 また、モーターはエンジンに比べ壊れにくく、ブレーキの消耗も少なく、保守管理における経費も削減できる。

 カーシェアリングの現場では、移動手段としてだけでなく、ひと時の休憩や、営業などで動いた仕事の整理や報告書の作成を車の中で行う使われ方が起こりはじめている。

 その場合、エンジン車やHVでエンジンが始動してしまうより、コンセントにつないだEVで静かに、エアコンを利かせながら、快適に休憩できたり仕事の整理ができたりする方が理にかなっている。

 企業にとっても、営業車を所有するより経費は安く済むはずだ。なおかつ、ラッシュアワーの通勤をなくし、最寄りのカーシェアリングでの直行直帰も可能になる。

 地方においては、ガソリンスタンドの減少に対し、EVなら自宅や仕事先で普通充電できるので、急速充電器の普及が進まなくても日常の用は足せるはずだ。

 10年後の世代交代と、実はまだよく知られていないEVの活用法を組み合わせれば、ハイブリッド全盛時代は、間もなく終焉を迎える可能性は高いと思う。それが、環境を保持し、快適に生きられる未来を創ることにもなる。

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