近年のクルマ界の重要ワード「SDV」。「またアルファベット3文字かよ!」とお嘆きのアナタ。SDVとは「Software Defined Vehicle」の略。「ソフトウェアによって定義された車両」。はたしてそれはなんなのか? 鈴木直也氏が徹底解説する!!
※本稿は2025年6月のものです
文:鈴木直也/写真:トヨタ、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2025年7月26日号
結局なんのこと?? 昨今囁かれるクルマ界の重要ワード「SDV」とは
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聞いたことはあるけどよく分からない「SDV」という概念
Valeo(ヴァレオ)はフランスの大手サプライヤーで、欧州ではベスト5にランクされる
クルマ業界で最近やたら流行ってるけど、その中身がぼんやりして、よくわからないのが“SDV”という概念だ。
あらためて説明すると、コレは“Software Defined Vehicle”の頭文字をとった略語で、日本語にすると「ソフトウェアによって定義された車両」ってこと。しかし、そう言われてもなんか漠然としていて、サッパリ具体像が見えないのが困りものなのだ。
ところが、経済新聞やテック系メディアでは「SDVで後れを取ると命取り。日本勢はヤバい!」みたいな記事が溢れている。ホントにそうなの? ちょうどいいタイミングでフランスの大手サプライヤー、ヴァレオが主催したSDVメディアブリーフィングに参加してみた。
* * *
その説明会がとっても面白かった。
冒頭から「なぜ誰もがSDVについて話すのでしょうか?」と、SDVという言葉だけが一人歩きしていることを認めるのだ。そのうえでSDVの意義を説明する。
ここでいちばん重要なのは、いまクルマの作り方が劇的に変わろうとしている、という事実の指摘だ。
主に中国新興メーカーから始まった技術革新なのだが、彼らはハードウェアとソフトウェアの開発サイクルを分離し、圧倒的なスピードで市場のニーズを掬い上げて魅力的な機能として実装してゆく。競争の激しい中国では、この流れに追いつかないと生き残れないからこそ、それを可能としたという背景がある。
驚異的なスピードで電動化が進んだ中国の自動車市場はまさに生き残りを賭けたレッドオーシャンだ。結果として電動パワートレーンやバッテリーのコスト性能比は他の追随を許さないほど進化した。
AIエージェントによって制御される車内インフォテイメントや、市街地でもハンズオフ運転が可能なナビゲーション・オン・オートパイロット(NOA)など、既存の大手自動車メーカーを置き去りにするすさまじい車載ソフトの開発競争が勃発している。
「枯れた技術」を大切にする日欧米の伝統メーカー
そういう技術革命にどうして既存の大手メーカーが後れを取ったのかといえば、これはもう歴史的な経緯としかいいようがない。
そもそも自動車にコンピュータが使われ始めたのは1970年代に広く一般化した電子制御燃料噴射から。それはやがてABSやESPなどのシャシー制御技術に拡大し、最近ではADASと呼ばれる安全運転支援システムが最大の競争領域となっている。
こういう段階を踏んで発展してきたから、自動車のコンピュータシステムというのは、ひとつずつCPU(ECU)の付いたレゴブロックみたいなものとなった。
ひとつのレゴブロックの守備範囲は基本シングルタスクで、それをたくさん積み重ねて一台の自動車ができる。お互いは通信で繋がってはいるものの、司令塔といえるようなCPUは存在しない。
ところが中国メーカーにとって、それはむしろぶち壊すべき旧弊だし、チャレンジのチャンス。電動化と歩調を合わせるように、車載ソフトウェアも爆発的な進化が始まったというわけだ。
ただ、いまの中国系BEVが旧来の“レゴブロック”から完全に脱却して独自の電子プラットフォームを構築したのかというと、どうもそこまで進んではいないらしい。
エンジン系、シャシー系、ADAS系といった、大括りな分野ごとの集約は進みつつあるようだが、高性能なSOC(システム・オン・チップ)を中核としてその下に各機能の制御用カスタムチップがぶら下がるようなセントラルコンピューティング化は今後の課題のようだ。
一見すると圧倒的に進んでいるように見える中国系ではあるが、その原動力は「走りながら考える」ソフトウェアの開発スピードに負うところ大というのが実情らしい。
もちろん、この“車載コンピューティングバブル”に中国の国家的支援があるはずだ。
中国の自動車関連の規制ルール「国6」は基本的にユーロ6に準拠するが、最終的には中国共産党がすべてを決定するお国柄。自国の自動車産業振興のためなら思い切った振興策も厭わないし、社会的受容性といった面倒なハードルも民主主義国家とは違う次元で乗り越えてゆく。
民主主義国家では限りなくグレーに近い“ナビゲーション・オン・オートパイロット”による疑似自動運転などは、中国でなければ市場導入は難しいというのが業界の共通認識だが、それが市場でキラーコンテンツとなっている以上、中国でクルマを売るためには必要不可欠というジレンマがあるわけだ。
電子プラットフォームが目指す究極の着地点とは?
ホンダが進める「ASIMO OS」も、いわゆる車載OSでSDVの領域。今後の自動運転時代を見据える
では、既存の大手自動車メーカーはどうやってキャッチアップすればいいのかだが、ヴァレオは段階を踏んでSDVに安全に着地できるような技術を提案している。
これまで使われてきた分散型コンピューティングシステムは、効率はいまひとつながら一部分が壊れても他への影響が少ないという意味では信頼性の高い優れたシステム。既存の大手自動車メーカーはここを疎かにはできない。
今回ヴァレオが提案したのは、ECUのメイン基盤を拡張可能にして、必要に応じて高性能なSOCや追加メモリーを追加できるシステム。分散コンピューティングからセントラルコンピューティングへ、スムーズに橋渡しをするためのアーキテクチャだ。
ただし、コスト面から見るとこの種のCPU増設型は課題が多い。
まず、分散している数多くのECUを減らせないと追加する高性能SOCのコストがそのまま増加コストとなる。最先端SOCの調達コストは100ドルを超える水準らしく、とてつもないコストアップ要因となる。
さらに、計算能力の高いハイエンドSOCをそのまま自動車用として使うのは無理で、水冷化など動作環境を安定させる仕組みが不可欠。真夏の車内に置いたスマホが熱暴走した体験を持っている人は少なくないと思うが、自動車用半導体というのはケタ外れにタフな環境耐久性が求められるのだ。
SDVによって自動車メーカーが得るものとは?
自動運転と言っても、レベル2クラスが現実的だ。レベル4以上は限定した用途に限られよう
こうやってハードウェアとしてのコンピュータの性能が向上したとしても、その先に今度はソフトウェアのビジネスモデルという課題が立ち上がってくる。
SDVの本質は車載電子プラットフォームの革新だけではなく、その上で動くソフトウェアでどうやって収益を上げるかが最大のテーマ。スマホの“サブスク”のように、ハードを売った後でも安定した収益を上げられるビジネスモデルが模索されている。
しかし、誰が考えてもわかるように、スマホでできることをわざわざ自動車のコンピュータにやらせても意味はない。「映画が見れます、ゲームもできます!」みたいな宣伝をするBEVも見かけるが、そこにわざわざ課金するかというと甚だ疑問だ。
では何がクルマのソフトウェアでキラーコンテンツになり得るかといえば、これはもう100%自動運転しかない。「SDV! SDV!」と大騒ぎしてはいるが、多くの関係者が最終的な着地点と考えているのはココだとボクは見る。
それも、本命はロボタクシーのようなレベル3以上の完全自動運転ではなく、緊急時にドライバーの関与を必須条件とするレベル2が主戦場。レベル2にとどめることで自動車メーカー側のリスクを回避しつつ、テスラのFSDは月額99ドルで多くの人が利用している。
単純計算で年間約1200ドルの収益があるなら、携帯電話みたいに5年縛りでクルマをタダで提供してもビジネスが成り立つ可能性も。
つまりは、テスラのFSDや中国のNOAにどう追いつくか、これが業界を騒がせる“SDV”の本質といえるんじゃないでしょうか?
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みんなのコメント
HJGなら知ってる。広島―弱体化―ジャイアンツだったと思う。