現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > M誕生50周年 BMW M5 CSでニュルブルクリンクへ 創設者と開発本部を尋ねて 前編

ここから本文です

M誕生50周年 BMW M5 CSでニュルブルクリンクへ 創設者と開発本部を尋ねて 前編

掲載 1
M誕生50周年 BMW M5 CSでニュルブルクリンクへ 創設者と開発本部を尋ねて 前編

BMWモータースポーツ社を立ち上げた人物

9月に開催された、1968年のル・マン24時間レース。シャルル・ド・ゴール政権に対する若者の不満が爆発した五月革命の混乱で、その年は6月から延期されていた。

【画像】BMWのMモデル 最新のM5 CSとM4、M3 1970年代の名車 3.0 CSLとM1も 全112枚

9月のル・マンは、世界スポーツカー選手権の最終戦も兼ねることになった。ポルシェとフォードによる激しい争いに決着がつく、重要な1戦でもあった。

勝利を掴んだのは、V8エンジンのフォードGT40。興味深いことに、本来はレース後にフォードのモータースポーツ部門チーフへ就任予定だったヨッヘン・ニアパッシュ氏は、ポルシェ908のステアリングホイールを握り3位でゴールしている。

それから20年後、ニアパッシュはメルセデス・ベンツのモータースポーツ復帰を担った。生み出されたザウバー・メルセデスC9は、圧倒的な強さで1989年の世界スポーツ・プロトタイプカー選手権を制している。

彼の業績はレースでの勝利だけではない。メルセデス・ベンツのための、新しいジュニア・ドライバー・プログラムの確立も外せない。最初の育成メンバーだったのが、ミハエル・シューマッハ氏の弟、ラルフ・シューマッハ氏だった。

振り返り始めると、話題に事欠かない経歴を持つニアパッシュ。1972年にフォードを離れ、BMWモータースポーツ社、現在のBMW M社を立ち上げたことでご存じの読者もいらっしゃると思う。

2022年は、その設立50周年。快音を響かせながら思い切り振り回せる、実用的で現実的な価格のMモデルにとって記念すべき年だ。テールスライド自在の、稀代のスポーツ・サルーンが生まれることになったのだから。

メカニック5名で構成されていた当初のM

ハッピーバースデー、M。英国編集部としては、ドイツ・ミュンヘン郊外、ガルヒングにある開発拠点を訪れてお祝いしたいところ。ニュルブルクリンクを経由するロードトリップを通じて、一緒に記念日を喜びたい。

現在は、サーキット・パドックに豪華なトレーラーを並べる規模へ成長したBMW M社だが、最初は小さなチームだった。50年前は、5名のメカニックが属するに過ぎなかったという。キーパーソンのニアパッシュへ振り返っていただこう。

「予想していませんでした。フォードのモータースポーツ部門にいた1971年の末に、自宅へ電話がかかってきたんです。その頃、BMWに在籍していたボブ・ラッツさんからで、BMWのモータースポーツ活動を再編したいという相談でした」

BMWへ移った彼は、CEOのエバーハート・フォン・クーンハイム氏へ、レーシング部門の設立を打診したという。「会社は人間のようなものです」。当時副社長だったラッツは、BMWモータースポーツ社の誕生時に言葉を残している。

「スポーツに力を入れれば、引き締まりパフォーマンスに長けた面白い姿へ変わります」。ルッツは、丁度その時期だと理解していたのだろう。1960年代に発売した新モデル、ノイエ・クラッセがヒットし収益は5倍に伸び、資金には余裕があった。

1968年に発売されたE9型の2800 CSは、欧州ツーリングカー選手権に向けてグループ2マシンへの改良が試みられていた。しかし、エレガントなグランドツアラーを軽量化し、不足ない戦闘力を与えることは簡単ではなかった。

フォード・カプリを破ったBMW 3.0 CSL

モータースポーツと関係の深いモデルが、ショールームに並ぶメリットは明らかだった。ツーリングカー選手権は、欧州では人気のイベントになっていた。

ラッツは、ニアパッシュに実権を握って欲しいと考えていた。一方のニアパッシュは、フォード・カプリRSをレーシング・マシンへ仕立て、欧州ツーリングカー選手権で圧倒的な強さを披露させていた。

「将来性あるプロジェクトに関わる、チャンスになる可能性がありました」。とニアパッシュが振り返る。現在のMというブランドを考えると随分控えめな動機付けに聞こえるが、実際、慎重だったようだ。

フォード・カプリに勝つため、E9型のホモロゲーション・マシン、3.0 CSLを1000台製造するという約束を取り付けるまで、BMWとの契約には応じなかった。危険な賭けだったという。

CSLを作ることは、BMWにとって難しい問題ではなかった。ドイツのカルマン社に委託された。だが、それを売り切ることは別問題だった。

サーキットでの活躍がなければ、安くない3.0 CSLへドライバーは興味を抱かない。価格は、極めて高価なフェラーリ・デイトナの3分の2に届いていた。BMWの経営に加えて、BMWモータースポーツ社の意義へ、打撃が及ぶ可能性はゼロではなかった。

ウイングなどで武装したエアロダイナミクス・アップグレード・パッケージの認可が降りたのは、1973年シーズンの途中。それをまとったマシンは、ニュルブルクリンク6時間耐久レースでデビュー。バットモービルと呼ばれた3.0 CSLは、見事な勝利を飾った。

7シリーズのエンジンを5シリーズに

BMWモータースポーツ社としても、この年が本当の始まりといえた。ところが1974年に第1次オイルショックが世界を襲う。

資金を得るため、技術者のポール・ロッシュ氏が設計したF2用エンジンは、レーシングチーム、マーチ・エンジニアリングのマックス・モズレー氏に売却された。BMWを支えるための、避けられない対応だった。

危機を乗り切ったBMWとともに、BMWモータースポーツ社も生き残った。そして、Mブランドを確立する、公道用の特別なモデルへと展開していく。

1980年には、当時の5シリーズ、E12型をベースにしたM535iを発売。パワフルな7シリーズに負けないサルーンとして開発されていた。

「私たちは柔軟でした。5シリーズに、1クラス大きい735i用のエンジンを搭載し、ダンパーやブレーキ、ホイールなどを改良しました。でも、見た目が速いクルマではありません」。と話すニアパッシュ。

それより先に、1978年にはスーパーカーのM1も誕生している。このクルマへは、彼も後悔が残っているようだ。ジョルジェット・ジウジアーロ氏が描き出したミドシップモデルだが、公道用としては453台だけが製造された。

BMWモータースポーツ社が抱いた、野心の表れといえた。欧州ツーリングカー選手権でフォードへ圧勝した次に挑むことに決めたのは、グループ5カテゴリーを935で暴れまわるポルシェだった。だが、直接対決は叶わなかった。

この続きは中編にて。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

高性能Aクラスの集大成、メルセデスAMG『A45 S ファイナルエディション』が限定発売
高性能Aクラスの集大成、メルセデスAMG『A45 S ファイナルエディション』が限定発売
レスポンス
ラスベガス予選で50G超大クラッシュのコラピント、決勝前に再度メディカルチェックへ。「彼の体調が何より重要」とウイリアムズ
ラスベガス予選で50G超大クラッシュのコラピント、決勝前に再度メディカルチェックへ。「彼の体調が何より重要」とウイリアムズ
motorsport.com 日本版
スバル新型「プレオ」発表に期待の声! “約100万円”の「コスパ最強」軽セダンは実用性バツグン! スバルらしい「水平対向エンジン×MT搭載」を求める声も!
スバル新型「プレオ」発表に期待の声! “約100万円”の「コスパ最強」軽セダンは実用性バツグン! スバルらしい「水平対向エンジン×MT搭載」を求める声も!
くるまのニュース
BMW、ディーゼルエンジン車8車種のリコール…最悪の場合は車両火災に
BMW、ディーゼルエンジン車8車種のリコール…最悪の場合は車両火災に
レスポンス
近藤真彦率いるKONDO RACINGを応援する2名の「リアライズガールズ」はだれ? 王道のコスチュームをカッコ可愛く着こなす2人にも注目です
近藤真彦率いるKONDO RACINGを応援する2名の「リアライズガールズ」はだれ? 王道のコスチュームをカッコ可愛く着こなす2人にも注目です
Auto Messe Web
ラリージャパンでアルピーヌA110RGTに同乗試乗! まったく別モノかと思ったら量産モデルに通じる走りだった
ラリージャパンでアルピーヌA110RGTに同乗試乗! まったく別モノかと思ったら量産モデルに通じる走りだった
WEB CARTOP
ラリージャパンで競技区間進入の一般車、スタッフの制止振り切り検問突破していたことが明らかに。実行委員会は被害届を提出予定
ラリージャパンで競技区間進入の一般車、スタッフの制止振り切り検問突破していたことが明らかに。実行委員会は被害届を提出予定
motorsport.com 日本版
ラッセル、予想外のポールポジションに歓喜。コースイン遅らせる判断が奏功「フロントロウの自信はあったけどね!」
ラッセル、予想外のポールポジションに歓喜。コースイン遅らせる判断が奏功「フロントロウの自信はあったけどね!」
motorsport.com 日本版
中型トラックの枠を超えた「超過酷仕様」!フォード レンジャー スーパーデューティ、2026年発売へ
中型トラックの枠を超えた「超過酷仕様」!フォード レンジャー スーパーデューティ、2026年発売へ
レスポンス
なんじゃこの「付け髭」感! デザイナーの意思をガン無視した「5マイルバンパー」はアリかナシか?
なんじゃこの「付け髭」感! デザイナーの意思をガン無視した「5マイルバンパー」はアリかナシか?
WEB CARTOP
超イケてる新型ムラーノをデザインのプロが分析! 個性を主張する「デジタルVモーション」の使いすぎには要注意
超イケてる新型ムラーノをデザインのプロが分析! 個性を主張する「デジタルVモーション」の使いすぎには要注意
WEB CARTOP
女性チームのアイアン・デイムスがポルシェにスイッチ。LMGT3初年度はランボルギーニを使用
女性チームのアイアン・デイムスがポルシェにスイッチ。LMGT3初年度はランボルギーニを使用
AUTOSPORT web
角田裕毅、ラスベガスで躍動し予選7番手「ミスター・ガスリーには離されたけど……アタックには満足。良いフィードバックもできている」
角田裕毅、ラスベガスで躍動し予選7番手「ミスター・ガスリーには離されたけど……アタックには満足。良いフィードバックもできている」
motorsport.com 日本版
まるで「“ミニ”フェアレディZ」!? 全長4.1mの日産「コンパクトクーペ」が斬新すぎる! 短命に終わった「NXクーペ」とは?
まるで「“ミニ”フェアレディZ」!? 全長4.1mの日産「コンパクトクーペ」が斬新すぎる! 短命に終わった「NXクーペ」とは?
くるまのニュース
【ラリージャパン 2024】開幕!! 全行程1000km、SSは300kmの長く熱い戦い
【ラリージャパン 2024】開幕!! 全行程1000km、SSは300kmの長く熱い戦い
レスポンス
「日産 GT-R  プレミアム エディション Tスペック」は、諦めない!不屈の国産スポーツカー、未だ一級品の証し【新型車試乗】
「日産 GT-R プレミアム エディション Tスペック」は、諦めない!不屈の国産スポーツカー、未だ一級品の証し【新型車試乗】
Webモーターマガジン
AM放送が聴けない「電気自動車」が数多く存在! FMラジオは搭載されているのになぜ?
AM放送が聴けない「電気自動車」が数多く存在! FMラジオは搭載されているのになぜ?
THE EV TIMES
ヤマハがNetflixアニメ用に未来のレースマシン「Y/AI」をデザイン、実物大モデルも
ヤマハがNetflixアニメ用に未来のレースマシン「Y/AI」をデザイン、実物大モデルも
レスポンス

みんなのコメント

1件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村