単に「カッコいいから」じゃなかった? 誕生の意外な理由
SNSや動画サイトなどで、昭和や平成初期のスポーツカーがヘッドライトをパカパカと開閉させているのを見かけることがあるでしょう。
【まもなく30歳!】いまだ現役の「リトラ装備パトカー」をイッキ見!
これは「リトラクタブル・ヘッドライト」というもので、トヨタ「スプリンタートレノ(AE86)」やマツダ「RX-7」、ホンダ「NSX(初代)」、日産「180SX」、マツダ「ロードスター(NA型・初代)」など、往年の名車でよく見られます。
まるで、クルマが瞬きしているかのようにも見えるため、一見すると愛らしく思えたりするからか、今でも多くのファンを魅了しています。しかし、2020年代の新車で装備しているものは皆無で、完全に姿を消してしまいました。
なぜ、メーカーはこれを作らなくなったのでしょうか。
そもそも、なぜライトを隠す必要があったのかを紐解くと、単に「カッコいいから」というデザイン上の理由だけではありません。
大きな理由の1つが、当時のアメリカにおけるヘッドライト規制です。
かつて北米では、ヘッドライトの高さに関して一定以上の地上高を求める厳しい基準があり、州によっては「地上から24インチ(約61cm)以上」といった具体的な数値が保安基準で定められていました。
しかし、スポーツカーの開発者たちは、空気抵抗を減らすために、ボンネット(ノーズ)をできるだけ低くしたいと考えました。
一方、ボンネットを低くすると、ライトの位置もおのずと低くなり、前述した保安基準を満たせなくなってしまう恐れがありました。
そこで考え出されたのが、「普段は低く隠しておいて、使う時だけ高い位置に出せばいい」というリトラクタブル方式でした。
つまり、あのギミックは、北米の安全基準で求められるヘッドライトの高さと、低いノーズを実現したいという開発担当者の理想を両立させるための、苦肉の策であり発明だったのです。
こうして1980年代から90年代にかけて、リトラクタブル・ヘッドライトは世界中のスポーツカーで大流行しました。
重くて壊れる…? 「技術の進化」と「安全基準」が引導を渡した
では、なぜ消えてしまったのでしょうか。
1つは、安全基準の変化です。
万一、クルマが歩行者とぶつかってしまった際、ボンネットの上に硬い突起物があると、歩行者に大けがをさせてしまうリスクが高まります。
そのため、2000年代以降、世界的に「歩行者頭部保護基準」などの安全ルールが厳しくなった結果、物理的に飛び出すライトを作ることは非常に難しくなりました。
そしてもう1つ、決定的なのが「技術の進化」です。
昔のライトは電球が大きく、奥行きも必要でした。しかし、現代のLEDライトは非常に小さく、薄く作ることができます。
わざわざライトを隠さなくても、最初から薄いライトを使えば、低いボンネットのデザインを実現できるようになったのです。
さらに、リトラクタブルにはデメリットもありました。
開閉用モーターなどの部品が増えるため、車両重量が数kgから10kg近くも増えてしまいます。軽さが命のスポーツカーにとっては手痛い弱点です。また、車両先端に重たいものがあるのも、運動性能やドライブフィーリングに良い影響を与えません。
加えて、複雑な機構ゆえに故障もつきものでした。片方だけ開かない「ウインク」状態になったり、寒冷地では凍りついて動かなくなったりといったトラブルも、オーナーの悩みの種でした。
隠す必要がなくなり、デメリットも多いとなれば、採用する理由はなくなります。こうして、リトラクタブルヘッドライトは歴史の表舞台から去っていきました。
国産車では、2002(平成14)年に生産を終了したマツダ「RX-7(FD3S型)」が最後の採用車種とされています。
法規制や技術のトレンドを考えると、復活の可能性は限りなくゼロに近いといわざるを得ません。
しかし、不自由な時代が生んだあのユニークなギミックは、今もなお色あせない魅力を放ち続けています。
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みんなのコメント
スーパーカー自転車がそれを証明しとる(笑)