BMW Mのエントリーモデル「M2」は刺激的な1台だった! 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキがリポートする。
新型BMW M2の特徴
1.電光石火の変速2.FRがもたらす“駆けぬける歓び”3.緻密なシャシーと足回り4.唯一無二の1台1.電光石火の変速
(前のページから続く)強大なパワーを後輪へ伝達するのが、Drivelogic(ドライブロジック)機能を備えた8速 M ステップトロニック・トランスミッションだ。
先代M2(F87型)の2ペダルモデルで採用されていたデュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)から、トルクコンバーター式の8速ATへとなった。
「ATになったことでダイレクト感が薄れたのではないか?」との懸念は、走り出した瞬間に杞憂に終わる。
M社による専用チューニングが施されたトランスミッションの変速スピードは驚くほど速く、パドルシフトの操作に対する応答性はかつてのDCTを超えるほどの電光石火ぶり。
同時に、トルクコンバーターの恩恵により、微低速域でのギクシャク感は皆無となり、日常使いにおける洗練度は飛躍的に向上した。
さらに、システムの中核を成すのがDrivelogic(ドライブロジック)。これは、シフト・プログラムの特性をドライバーの意図に合わせて3段階で切り替えられる機能だ。
モード1(効率・快適性重視)は変速ショックを極力抑え、早め早めのタイミングでシフトアップを繰り返す制御モード。市街地でのスムーズなクルージングと燃費向上に貢献し、ジェントルな振る舞いを見せる。モード2(スポーツ重視)はエンジンのパワーバンドを維持するようにシフトタイミングが引き上げられ、ワインディングロードなどで機敏なレスポンスを引き出す。そして、モード3(サーキット重視)は変速スピードを極限まで高め、ダイレクトで力強いシフトチェンジを行う。マニュアル操作時には自動シフトアップをキャンセルし、コーナー進入時のハードブレーキングに伴う連続ダウンシフトでも、完璧な回転合わせとともに瞬時に低いギヤを噛み合わせる。
高性能エンジンと8速 M ステップトロニックの緻密な連携こそが、1730kgという車重を感じさせない怒涛のパワーと、大人の余裕を感じさせる洗練を見事に両立させている理由だ。
2.FRがもたらす“駆けぬける歓び”
走り出すと、まず滑らかさに驚かされる。日常の速度域ではエンジン音も静かで、極めてコントローラブル。360度カメラこそ備わっていないが、クリアなバックカメラと超音波センサーが装備されており、ボディの小ささも相まって駐車時の取り回しに不安を覚えることはない。
しかし、ひとたびセンターコンソールの「M MODE」ボタンを押し、スポーツモードやトラックモードに切り替えると、豹変。エキゾーストフラップを開けば、直列6気筒特有の粒立ちの揃ったメカニカルサウンドが響き渡る。
ただし、イタリア製スーパーカーのような破裂音を伴う派手なサウンドではなく、あくまでドイツ車らしい、ジェントルマンな重低音である点がBMW Mの美学だ。
M2の走りを語る上で欠かせないのが、駆動方式が後輪駆動(FR)のみに設定されている点である(XDriveの設定はない)。ステアリングを切った瞬間のノーズの入り方は素直かつシャープであり、前輪が駆動していないピュアなFRだからこそ味わえるナチュラルなステアリングフィールが堪素晴らしい。
3.緻密なシャシーと足回り
強大なパワーを後輪のみで路面へと叩きつけるM2にとって、シャシーと足回りの完成度はまさに生命線である。
ベースとなるボディは、Mモデル専用のブレース(補強パーツ)がエンジンルームやフロア下など随所に追加されることで高い剛性が与えられており、これがすべてのサスペンションやステアリングの正確な動作の揺るぎない土台となっている。
強靭な骨格に組み合わされるのが、走行状況に応じて各輪のショックアブソーバーの減衰力を電子制御する「アダプティブ M サスペンション」。市街地を走り出した直後に感じるのは、スポーツカーらしい明確な“硬さ”である。標準的な設定であっても、路面のアンジュレーションや目地段差の感触をオブラートに包むことなく、正確なインフォメーションとしてドライバーの掌や腰へとダイレクトに伝えてくる。
しかし、硬さの裏には高いボディ剛性とダンパーの精緻な制御があり、不快な角のある突き上げを見事にいなしているため、決して粗野な乗り味ではない。さらに、センターコンソールのボタンからシャシーの設定を切り替えれば、足回りはさらに引き締まり、ロールを徹底的に排除したサーキット直系のフラットな姿勢制御へと変貌を遂げる。
フロントの大径ブレーキディスクと6ピストン・キャリパーを備えた「M コンパウンド・ブレーキ・システム」は、踏力に応じてリニアに立ち上がる強烈なストッピングパワーを発揮し、1730kgのボディをいとも簡単にねじ伏せる。
強大なエンジンパワーに決してシャシーが負けていないどころか、むしろシャシー側がさらなるパワーを要求してくるかのような絶対的な安心感と懐の深さがある。
4.唯一無二の1台
試乗車の車両本体価格は¥10,310,000。パフォーマンスと内容を考えれば、価格は絶妙だ。
現代のマーケットを見渡しても、M2の直接的なライバルは見当たらない。ポルシェ「ケイマン」は純粋な2シーターであり用途が異なり、メルセデスAMGの同価格帯のクーペは目指す方向性が異なる。
コンパクトなボディに強力な直列6気筒エンジンを搭載し、純粋な後輪駆動で走らせる……しかも、現代では絶滅危惧種となったマニュアル・トランスミッション(MT)の設定まで用意されているのだ(試乗車はAT)。
BMWの哲学である“駆けぬける歓び”を、最もピュアな形で、かつ最も色濃く体現しているのがM2だ。
圧倒的なダイナミクスと日常使いを許容する実用性の両極端を高次元で融合させたM2は、運転を愛するすべてのドライバーにとって、今手に入れるべき究極の選択肢だろう。
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純血FRとか言うけど日本仕様の事だけで、他国仕様はMTFRたくさんあるよ。