世界で存在感を示し続ける日本の至宝
それは世界のスポーツカーカテゴリーにおいて、確たる存在感を示し続ける日本の至宝。そう言い切ることに誰も異論は挟まないだろう『マツダ・ロードスター』は、6月下旬にマイナーチェンジが施された。
【画像】究極のマツダ・ロードスター!限定車『12R』を詳しく 全66枚
主たる目的は車外騒音やシートにまつわる安全基準といった、新たな規制への適合だ。デビューから12年目と、気づけば干支がひと回りするほど販売が続くND型ゆえ、対処的な側面が増えていくことも致し方ない。特にこの3~4年はその色が強くなっている。
でもマツダのエンジニアたちはそういう対応のリソースを逆手にとってか、新技術の搭載やユーザビリティの改善などの機会に充ててきた。
特に2023年の商品改良では電子プラットフォームのセキュリティ対応を契機に、ADASの充実やパワステの制御変更、ECUのマージンを出力側に振ったエンジンフィーリングの向上など、セキュリティとは全く関係ないところにも手を施して商品性を向上。日本だけでも毎月1000台に届かんとする台数を売り上げる鮮度と魅力を維持している。
加えてロードスターがクルマ好きにとって常に気になる存在として注目される契機となっているのが、都度設定される特別仕様車だ。特に2022年に発売された『990S』は、一時期販売台数の過半に迫り、総台数の押し上げに貢献した。
990Sとは対極的な魅力を表現
今回のマイナーチェンジでも、990Sのような立ち位置の特別仕様車が設定されている。ピュアスポーツの頭文字をとった『PS』は、最も売れ筋となるSパッケージをベースに、コイルレートを引き締め減衰レートを緩めた独自の足まわりセッティングを採用。
こちらは同じバネ下構成となる990Sとは対極的に、上屋の動きをしっかり抑えて横方向の動きを最大化したスポーツセッティングの王道を体現したという。それをもって斎藤茂樹主査は、990Sとは対極的なロードスターの魅力を表現できたとしている。
多少前置きが長くなったが、そのPSの発想の原点となっているのが初の『マツダ・スピリット・レーシング』(以後MSR)銘柄として開発されたロードスターだ。端緒はスーパー耐久参戦車両のシャシー開発過程で培われたノウハウが、標準車系の商品価値向上にも充分反映できるという開発陣の手応えにあったという。
ちなみにPSと同じサスセッティングはレギュラーグレードの『RS』(ソフトトップ)にも適用されており、同じ軽量ホイールと対向ブレーキをオプションで装着すればRSも中身的にはPSと同じ仕様となるわけだ。
スポーティネスを徹底的に高めた『12R』
そんなMSRロードスターは標準仕様(価格526万5700円)と、スポーティネスを徹底的に高めた『12R』(価格761万2000円)という2グレードが用意されたが、共に現時点では完売している。特に標準仕様の2200台に対し、12Rの側は200台の限定枠に対して申込みは1万件近く、抽選確率はほぼ50倍という狭き門となった。
2Lユニット搭載はMSRロードスター最大のトピックで、12Rはそのエンジンを吸気ポート形状から見直しポート自体には手研磨を施したほか、ハイカムやサーモバンテージ巻きの4in1専用エキマニ、シングルマスフライホイール採用など、パワーとフィーリングの両面で更なるチューニングを加えているのが特徴だ。
合わせて冷却系強化やハイグリップタイヤに合わせた12Rだけのシャシーセッティングなど、クローズドコース走行を前提にした専用の仕立てが随所に施される。
さらにフジツボのチタンマフラーやアドバン・ネオバAD09、ブレンボのブレーキキットやOS技研のLSDといったパフォーマンスに直結する数々のアイテムをパッケージした12R専用のオプションも用意。サーキットでの即戦力化の道筋まで描かれている。
好戦的なキャラクター
歴史を振り返れば『M2 1001』のようなモデルはあったとはいえ、ここまで好戦的なキャラクターのロードスターを、メーカー側がお膳立てしたことはないだろう。
その理由はよくわかる。より激しい方へ、速い方へと向かうほどに、ロードスターのもつ根っこの魅力である気安さや人懐っこさから遠ざかっていくからだ。
上げたパワーを受け止めるべくハコを鍛え、ハイグリップのタイヤを履くと車体もバネ下も重くなり、更にパワーを上げて……という負の連鎖をチャラにすることがとりわけND型の主旨だった。
アシを固めていけば、交差点ひとつ曲がるだけでも頬が緩むあの多幸感が薄らいでいく。道路環境的に動力性能が求められるためにハナから2Lが設定される欧米仕様はさておき、こと日本仕様が1.5Lに拘ったのはそこに理由があったのだろう。
そしてソフトトップの2LモデルをMSRというサブブランドで扱っている理由もそこに起因すると、個人的には思っている。
*究極のマツダ・ロードスター限定車『12R』を通じてわかった、原盤の尊さ(後編)へと続きます。
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