BMWの新しい「X7 xDrive40d Excellence」は、魅力的なフルサイズ・ラグジュアリーSUVだった! 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキがリポートする。
BMW X7 xDrive40d Excellenceの特徴
多人数が優雅に集える空間──BMW X7 xDrive40d Excellence試乗記
1.魅惑の直列6気筒ディーゼル2.巨体を忘れるダイナミクス3.乗り心地の二面性4.日常を支えるテクノロジー5.X7の未来1.魅惑の直列6気筒ディーゼル
(前のページから続く)X7の走りは、巨体を感じさせないほどに軽快だった。
走りを支えている心臓部こそ、BMWが誇る3.0リッター直列6気筒DOHCターボディーゼルエンジン。最高出力250kW(340ps)/4400rpm、そしてわずか1750rpmから2250rpmの実用域で700Nmの圧倒的な最大トルクを発揮する。2560kgの重量級のボディを、まるで羽毛のように軽々と、かつ滑らかに加速させた。
アクセルペダルに軽く足を乗せるだけで、過給遅れをみじんも感じさせることなく、豊潤なトルクが湧き出し、巨体が音もなく滑り出す。加速フィールは、ディーゼル特有の唐突なトルクの立ち上がりではなく、まるで大排気量の自然吸気ガソリンマルチシリンダーエンジンのように、どこまでもリニアで官能的だ。
タコメーターの針が跳ね上がるにつれて、直列6気筒ならではの澄んだサウンドが室内に心地よく響き渡り、クリーンディーゼルであることを完全に忘れさせてくれる。ランドローバーが誇る直列6気筒インジニウム・ディーゼルも素晴らしい出来栄えだが、高回転域までストレスなく吹け上がる官能性の点においては、やはりBMWのインラインシックスに一日の長がある。
ディーゼルモデルを選ぶ最大のベネフィットが、圧倒的な足の長さだ。WLTCモード燃費で11.8km/Lは、このサイズとしては優秀な数値。燃料タンクを満タンにすれば、計算上は1000km近くの距離を無給油で走りきることができる。
長距離のグランドツーリングにおいて、燃料残量を一切気にすることなく、どこまでも走り続けられる心の余裕は、何物にも代えがたい高級車の価値である。
2.巨体を忘れるダイナミクス
BMWのアイデンティティである「駆けぬける歓び」は、2.5tを超える最上級SAVにおいても、いささかも色あせることはない。
むしろ、このサイズでありながらこれほどまでにドライバーの意図に忠実に、スポーティに動くという事実に、深い驚きを覚える。
ステアリングホイールを握り、最初のコーナーへとアプローチした瞬間、フロントの応答性の正確さに目を見張る。巨体から想像されるような、不快なロールや外側へのはらみ出しは抑制されており、車体が一体となって狙ったラインをきれいにトレースしていく。これは、高い剛性を誇るシャシー構造と、フロントおよびリアのサスペンション剛性の高さ、そして4輪操舵システム(インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング)の緻密な制御が見事に統合されている結果だ。
タイトなワインディングロードに持ち込んでも、ドライバーは車幅感覚さえつかんでしまえば、まるでひと回り小さなスポーツSUVを運転しているかのような感覚で、自信を持ってアクセルを踏み込んでいくことができる。
高剛性なボディと正確なハンドリングがもたらす安心感は、高速巡航時においてさらに強固なものとなる。
横風に煽られるようなシチュエーションであっても、矢のように真っ直ぐ突き進む直進安定性は、ドライバーの疲労を軽減してくれる。走る、曲がる、止まるという自動車の本質的な挙動において、これほどの巨体を支配下に置いている感覚は、プレミアムブランドとしてのプライドと技術の結晶にほかならない。
3.乗り心地の二面性
X7には、上下にそれぞれ40mmの調整幅を持つ、4輪アダプティブ・2アクスル・エア・サスペンションが標準装備されている。路面からの入力を巧みにいなし、極上の乗り心地を提供するはずのシステムだが、日常的に多用するであろう「コンフォート・モード」において、気になる挙動に遭遇した。
市街地の荒れたアスファルトや、高速道路の継ぎ目を通過する際、サスペンションが微小な凹凸を吸収しきれず、わずかに硬質な突き上げ感として室内に伝えてしまうのだ。フロアを通じて足元に微振動が残り、ラグジュアリーSAVに期待する「魔法の絨毯」のような、すべてを包み込むフラット感には一歩届かない印象を受ける。
もしかするとオプションの22インチ・アロイ・ホイール・マルチスポーク・スタイリング757バイカラー(¥209,000)が影響しているのかもしれない。ルックスの面では、この巨大な車体に完璧なバランスをもたらしている大径ホイールだが、それに組み合わされるタイヤの扁平率の低さが、路面からの初期の入力をダイレクトにサスペンションへと伝えてしまっている可能性がある。もし、標準のホイールサイズや、よりコンフォートに振ったタイヤ銘柄を選択すれば、この印象は大きく変わるかもしれない。
興味深いことに、ドライブモードを「スポーツ・モード」へと切り替えると、乗り心地の不満は解消される。足回りは適度に引き締まり、ダンピングの収束が劇的に速くなるため、コンフォート・モードで感じられた微小な揺すられ感が消え去り、かえってフラットで快適な乗り味へと変化するのだ。
エンジンやトランスミッションのレスポンスもシャープになり、クルマ全体の挙動が引き締まるため、ドライバーにとっては心地よい設定となる。
しかし、後席に大切なゲストや家族を乗せて、のんびりとクルージングを楽しみたいシーンにおいては、やはりコンフォート・モードにおけるサスペンションの「初期のしなやかさ」がもう少し煮詰められるべきではないだろうか。
かつて体験したアルピナのX7がもたらす、硬さを排除した「コンフォート・プラス・モード」の世界を知ってしまうと、本家BMWのフラッグシップSUVには、もう一段のブレイクスルーを期待したくなるのが本音だ。
4.日常を支えるテクノロジー
全長5.2m、全幅2mの巨体を日常的に連れ出すにあたり、BMWが用意した先進の運転支援テクノロジーは、ドライバーの強力な味方となる。なかでも、360度カメラによる鮮明な俯瞰映像や、車両が直前に前進したルートを直近50mまで記憶し、そっくりそのまま自動でバックして戻ることができる「リバース・アシスト」の機能は、日本の狭い路地や駐車場で不意に行き止まりに遭遇した際、どれほど心強いか計り知れない。
6.2mの最小回転半径は、決して小回りが利く部類ではないが、これらの電子デバイスのサポートによって、日常の取り回しにおけるストレスは最小限に抑えられている。
また、車内の静粛性に関しても、高いレベルが維持されている。遮音ガラスの採用や、緻密に配置された吸音材の効果により、走行中のロードノイズや風切り音は完璧なまでにシャットアウト。アイドリング時であっても、ボンネットの下にディーゼルエンジンが眠っていることを察知することは不可能に近いかもしれない。
静寂の空間を、至高の音響空間へと変えてくれるのが、¥684,000(税込)の「Bowers & Wilkinsダイヤモンド・サラウンド・サウンド・システム」。室内全体に配置されたスピーカーから奏でられるサウンドは、圧倒的な解像度と透明感を誇り、まるでコンサートホールの特等席にいるかのような臨場感で乗員全員を包み込む。素晴らしい音響が、1列目だけでなく、2列目、そして3列目の乗員にまで均等に届けられる点に、X7の真のラグジュアリーが宿っている。
一方で、実際に長距離を運転していて、もうひとつの改善してほしい点が見えてきた。それは、3列目シートまで乗員がフルに乗車した際、あるいは荷物を高く積んだ際における、ルームミラー(バックミラー)の後方視界の悪化だ。物理的に乗員の頭や荷物がミラーの視界を遮ってしまうため、このようなフルサイズSUVにこそ、カメラの映像をミラーに映し出す「デジタル・ルームミラー」の採用が不可欠であると感じた。最新のテクノロジーを惜しみなく投入しているBMWであれば、次回のマイナーチェンジや仕様変更のタイミングで、この装備を標準、あるいはオプションとして追加してほしいところだ。
ブレーキのフィーリングに関しては、大いなる信頼を寄せることができる。2.5tを超える質量を止めるため、ベンチレーテッド・ディスク・ブレーキが前後に備わっており、ペダルを踏み込んだ分だけ正確に、かつ強力な制動力を発揮する。初期制動が唐突に立ち上がるような下品な味付けではなく、ジェントルに、しかし確実に車速をコントロールできるこのブレーキタッチは、ドライバーに安心感を与えてくれる。
5.X7の未来
現代の自動車業界において、超高級SUV市場の拡大はとどまるところを知らない。メルセデスが誇る「マイバッハGLS」や、イギリスの気品を体現する「レンジローバー」など、3000万円クラスの超ウルトラ・ラグジュアリーSUVが独自の市場を形成している。このような背景の中、BMW X7が今後どのような道を歩むべきか?
現在、BMWグループの中における最高峰のショーファードリブンとしての役割は、前述のように7シリーズセダンや、ロールス・ロイス各モデルが担っている。しかし今後、BMWが自社の一部門として完全に統合した「アルピナ(ALPINA)」ブランドの知見をさらに深く注入し、X7をベースとしたさらなるハイエンドモデル、あるいはメルセデス・マイバッハに真っ向から対抗するような「ウルトラ・ラグジュアリーSAV」を展開していく可能性は十分に考えられる。
すでに彼らは「ビジョン・アルピナ」といった次世代のコンセプトを通じて、ラグジュアリーの新たな方向性を模索し始めている。
もし、アルピナが持つあの至上の乗り心地と、官能的なマテリアルワークが、広大なX7のパッケージングと完全に融合する日が来れば、それはライバルたちにとって真の脅威となるに違いない。現行のX7 xDrive40d Excellenceは、偉大なる未来へのステップとしても、完成度の高い基礎体力を備えていると言えるだろう。
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