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第19回: AI(人工知能)は、運転の役に立つのか?

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第19回: AI(人工知能)は、運転の役に立つのか?

いよいよ、クルマの運転もAI(人工知能)が行うような時代になってきた。

メルセデスベンツがAクラスで、BMWが3シリーズ導入の際のテレビCMで、AIによる運転(というか操作)をアピールしていたのを憶えている人も多いことだろう。

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しかし、乗ってみると、Aクラスも3シリーズもどちらも走行に関する操作にはまだ用いられてはおらず、カーナビの目的地設定やエアコン、音楽の選択や音量調整、スライディングルーフの開閉など、走行に直接関係しない部分しかできない。

その点、中国ナンバーワンのスタートアップEVメーカー「NIO」のピュアEVのSUV「ES8」は半歩進んでいて、窓の開閉までも可能だった。

ナビで目的地を入力する時には、もっぱら「オンライン検索」を使っている。音声入力による操作は、ステアリングポスト左側のウインカーレバー先端のボタンを押して始動する。「窓を開けて」

ドライバーがそう言うと、運転席側の窓ガラスが下がる。

「こっちも開けて」

続けて助手席の乗員が言うと、今度は助手席の窓が降りる。

「後ろも開けて」

さらに、後席の乗員が同じ言葉で話しても、ES8のAIは声の聞こえて来た距離と方向を測定し、「後ろも」という言葉を聞き取って判断し、後席の乗員の横の窓ガラスを下げる。

「全部開けて」

最後にドライバーが言い放ったら、人が座っていないほうの後席の窓ガラスも下げた。

メルセデスベンツやBMWなどよりもNIOのほうが一枚上手だが、こうしたデジタルテクノロジーに依拠したデバイスは今後も急速な日進月歩が続くだろうから、すぐにあらゆるクルマで普及が進んでいくことだろう。

718ボクスターでの音声入力にはコツがある残念ながら、わがポルシェ・718ボクスターにはAIは備わってはいない。しかし、音声入力による操作は可能で、ふだんから多用するカーナビの目的地設定やガソリンスタンドの位置検索、音楽の選択、電話の発信などで便利に使っている。

なかでも、最も活用している音声入力による操作はカーナビの目的地設定だろう。これにはコツが要ることが使っているうちにわかってきた。よく、音声入力による操作を「使いものにならない」と一刀両断でクサす人がいるけれども、僕はそうとは考えていない。コツさえつかめば、ほぼ百発百中だ。

コツとは何か?

オンライン検索を行う場合は、「オンライン検索」の右側のマイクロフォンのアイコンをタッチして目的地の施設名や住所を喋れば良い。筆者は「横浜赤レンガ」と喋ったら、候補が「1号館」と「2号館」のふたつweb上に存在していたので、どちらかを選んで確定される。「1号館」と喋るなり、画面にタッチすれば確定され、ルートが表示される。まず、718ボクスターで目的地を設定する際の検索方法は、ふたつある。ひとつは従来通りの車載カーナビ機に収まっている地図データ内の検索で、もうひとつはオンライン検索だ。僕はもっぱらオンライン検索を使っている。これは718ボクスターのSIMカードによってインターネットにつながり、Google Maps内を検索して目的地を探す方法だ。

その際にタッチパネルのマイクロフォンのアイコンにタッチすると「どのオンライン施設ですか?」と訊ねてくる。そこでハッキリと施設名を言えば設定される。施設名ではなく住所で検索したい場合も「住所、神奈川県横浜市~」と続ければ良い。

コツというのは、目的地をクルマに乗る前にパソコンやスマートフォンなどでGoogle Mapsにアクセスし、目的地を検索しておくことだ。そうしておけば、その履歴がGoogle Maps内に履歴として残るから、後から718ボクスターから音声で同じ目的地を入力すれば、それと同じところだと判断され、特定されることになる。

この方法は、初めて訪れるところや個人宅のように住所でしか検索しにくいところで特に有効だ。

3シリーズを始めとする、最新のBMWの音声入力によって操作できる機能の例の一部。音声入力を促すメーターパネルの表示。他人のクルマやレンタカーなどを運転する場合も、そのクルマからGoogle Mapsにアクセスできさえすれば、まったく同じに便利に使える。718ボクスターのようにクルマにSIMカードを備えていないクルマであっても、連載16回でも書いたようにカーナビにCarPlayやAndroidAutoのソフトが組み込まれているクルマならば、自分のスマートフォンなりタブレット端末を接続してGoogle Mapsにアクセスできるので、その方法でも使える。

CarPlayやAndroidAutoがさらに便利に使えるのは、海外でレンタカーを借りたり、誰かのクルマを運転する時だ。そのクルマのカーナビにインストールされていれば、上記のように事前にパソコンやスマートフォンを使いGoogle Mapsで目的地を調べておけば、それがクラウドに上がって記憶されているから、クルマに乗ったら目的地を口にするだけで良い。そのカーナビ独自の使い方を習得する必要もなければ、設定を改める必要もない。使い慣れたGoogle Maps内ですべてが完結する。

クラウド上のビッグデータ話をAIに戻すと、Aクラスや3シリーズなどに搭載されているAIはまだ非常にシンプルなもので、限られた機能を立ち上げる際の“起動スイッチ”として使われている側面が強い。メルセデスベンツの広報担当者もそれを認めていて、「ハロー、メルセデス」と言わなくても、ステアリングホイール上のスイッチを押せば同じ音声入力のモードが起動されると言っていた。

AIとは言っても、現在の技術開発水準では走行に関する操作はまだ代行させることはできず、カーナビの目的地設定やエアコンの設定、音楽ソースの選定、電話の発信などに限られている。

それでも、言葉の発し方などでうまく入力できないことも少なくない。ボルボも音声入力の活用に積極的だが、より正解率を高めるための“コマンド案内”を用意している。ナビの目的地を設定する場合には「目的地は~」と話し始め、「~」に相当する部分に住所や個人名や会社名などを入れる。施設の場合は「施設検索」で始める。また、メディアを探す場合には、まず「再生」と言った後に、ラジオ局名やアーティスト名、曲名などで特定していく。

ボルボの場合は、音声入力したデータは車載のECU内だけに蓄積されるのに対して、3シリーズをはじめとするBMWの新世代システムでは、データはBMWのクラウドに蓄積される。どちらが優れていて使いやすいかの判定はまだ出ていないようだが、趨勢としてはボルボもいずれはクラウドを活用することになるのではないか。

「音声入力の“使用例”がクラウドにビッグデータとして蓄積されていきます。今後、より多くの人が音声入力をもっと使うことによって、使いやすくなっていきます」(BMWブランド・マネジメント・ディビジョン プロダクト・マーケティング プロダクトマネジャーの御舘康成氏)

たしかに、SF映画に出てくるような高度な働きを行うイメージをAIに期待してしまうけれども、クルマ用はまだまだそこまでには至っていない。AIの手前の音声入力でさえ、ままならない段階なのだ。

でも、音声入力もGoogle Mapsのようなアプリと組み合わせて使うことで、カーナビの目的地設定をほぼ完璧に使いこなすことができることを718ボクスターは証明してくれた。以前に乗っていた初代ボクスターでは、音声入力はできなかったので、走り出す前に手帳に書いた目的地を一文字ずつ打ち込んで入力していたから大進歩である。クルマ知能化時代のスポーツカーライフも少しずつ進化していっている。

デジタルとはいっても一足飛びに進化するものばかりなのではない。何かと何かを組み合わせながらでないと、実際の恩恵を受けることはまだ難しいものもあるようだ。こうやってクルマの知能化は少しずつ進んでいきながら、カーライフというものはより便利になっていくのだろう。

メルセデス・ベンツの音声入力操作スイッチ。中国のスタートアップEVメーカー「NIO」のフル電動によるSUV「ES8」。「ES8」の車載AI「NUMI」。人間の眼のような表示がカタチを変えたり動いたりして、擬態する。金子浩久
モータリングライター1961年、東京生まれ。大学卒業後、出版社で書籍と雑誌の編集者を3年半務め、独立。20~30代には、F1記者として世界を駆け巡る。主な著書に、『ユーラシア大陸1万5000キロ 練馬ナンバーで目指した西の果て』『10年10万キロストーリー』 (1~4)、『セナと日本人』、『地球自動車旅行』、『ニッポン・ミニ・ストーリー』、『レクサスのジレンマ』、『力説自動車』などがある。

文と写真・金子浩久

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