それでも僕は 指折り数えて待ち続けた
愛車ジムニーシエラの納車を2年待った、レーシングドライバーであり自動車ジャーナリストの木下隆之。契約から1年半後にはまさかのマイナーチェンジ通告を受け、「旧型の新車」か「新型を待つか」の選択にも直面した。連載第2話では、この長い納車待ちの顛末と、その背景にあるジムニーシリーズの生産事情に迫る。
走りのプロがハマった「ジムニー沼」! 湘南の街並みに映える「鏡面カスタム」の中身
静岡・湖西工場から始まる「小さな四駆の旅」
ジムニーシエラは、静岡県湖西市にある湖西工場で生産されている。浜名湖の風が抜けるあの土地で、小さな四駆は今日も黙々と組み立てられている。
ただ、衰えることを知らないジムニー人気の前には、工場をフル稼働させても注文を消化できない。溶接工程では産業用ロボットがバチバチと火花を散らし、塗料のプールにどぶ漬けするシーンが想像できるけれど、せっせせっせと組み立てられてもまだ、多くのシエラファンを待たせているのだ。
僕は納車までに2年待った。
もっとも、「こんなに待たせやがって 怒」とならないのだから、不思議である。
片思いの恋愛のようなもので、選択権はそっちにある。そもそも納期が2年を超えるってことは購入契約書にサインする前から聞かされているわけで、「それでもいいから待ちます」ってもはや、学校のマドンナにプロポーズしたのも同然、ヤキモキするのはこっちの方だ。
しかも、納車までの2年の間に、マイナーチェンジが挟まってしまったほどである。
「3ヶ月後に納車が予定されていますが、旧型になってしまいます。いかがなさいますか?」
スズキ販売店の女史からそんな連絡があったのは、契約書にハンコをついてから1年6ヶ月が過ぎたころだ。せっかちな自分にしては、よくも辛抱辛く待ったものだよなぁと感心した。
それにしても、マイナーチェンジを挟んだとは困ったものだ。僕自身、人生初の新車購入だというのに、“旧型の新車を買う”っていうのも物悲しい。
「ただ、マイナーチェンジ後のモデルにされるとさらに6ヶ月待つことになります」
つまり、3ヶ月後に「旧型の新車」を手にするか、6ヶ月後に、晴れて「新車の新車」でドライブするかの選択に迫られたのである。
まあこうなると、悩むことはない。1年6ヶ月も待ったのだ。1年9ヶ月も、2年もたいして変わりはしない。というわけで、「新型の新車」を待つことにしたわけだ。
恋とは切ないものである。
3ヶ月早いか6ヶ月待つか 迫られた選択
最新のジムニーノマドも同様に、数年待ちが予測されている。となれば、もしかしたら僕が経験したように、「旧型の新車」を買うか否かに頭を悩ませる御仁も現れよう。販売店の女史にそう告げられてドギマギする個人の表情を思い浮かべて、ウッシッシと細く笑んでいるのである。
もっとも、ノマドの生産拠点はシエラとは異なるからさらに複雑だ。
スズキの現地法人「マルチ・スズキ・インディア」が生産を担っている。つまり、“日本のジムニーノマドをインドで作り、日本へ送り返す”という、少し前なら冗談のように聞こえた時代が、本当にやって来たのである。
時代というものは、音も立てずに景色を変えてゆく。気づけば、地図の重心そのものが、静かに南へ動いているのだ。
湖西工場で拵えたシエラの納車でこんなにヤキモキした時間を過ごしたのである。まして、インドの工場で生産して、ドンブラコと船で運ばれてくるのだから、さらにヤキモキは募るのであろう。
その辺りの事情は次号のこのコラムで紹介しましょう。
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