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100年前に電気自動車を開発 「メルセデス・ベンツ」代替駆動技術の歴史と進化を振り返る

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100年前に電気自動車を開発 「メルセデス・ベンツ」代替駆動技術の歴史と進化を振り返る

世界初のガソリン車から革新的電動化モデルまで

 今年でガソリン自動車の誕生から134年。まさにメルセデス・ベンツの歴史、そのものと言えるだろう。現在、自動車が直面している環境・エネルギー問題に対し、メルセデス・ベンツがその先駆者として果たした、効率的な代替駆動技術にスポットを当てたいと思う。

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1902年にはハイブリッド・システム採用のモデルを生産

 メルセデス・ベンツは1886年に世界初のガソリン自動車の大発明を成し遂げた後、激動の20世紀に突入すると、効率的な自動車への追求は一気に勢いを増すことになる。当時はガソリンスタンドなどの給油施設はなく、燃料消費の大きなエンジンは給油回数が増えるため、遠出には不便だった。当時から低燃費エンジンの開発・改良が自動車の効率化のスタートとなり、メルセデス・ベンツは代替駆動技術の分野でもイチ早く開発を開始することになる。

 1901年3月、当時のダイムラー社(カンシュタット)は吸気バルブを制御した効率的なエンジンを搭載した名車「メルセデス35PS」を発表。今日でも現代の自動車の先駆けとされる、メルセデスと名付けられた第1号車だ。

 翌1902年には、ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせた、いわゆるハイブリッド・システムを搭載したモデル「シンプレックス28HP」を生産。1906年にはハイブリッド・システムを量産化し、すでにガソリンエンジンは電気ホイールハブモーターを稼働する為のジェネレーターを搭載していた。

 さらに1908年には電気自動車を生産し、本国ドイツではベルリンの消防署が最も早く導入。他にもローカル・エミッションフリーのバスやトラックがメルセデス・エレクトリークのブランドで展開された。

燃費と排出ガスの低減を実現したディーゼルエンジン 

「ディーゼルエンジン」もメルセデス・ベンツを語るうえで外せない。1907年にディーゼルエンジンの特許が切れると同時に、当時のベンツ社(マンハイム)が開発研究に本腰を入れ始め、1909年に初めて燃料を噴射する方式を考案。いわゆる予燃焼室式「インジェクション・システム」を開発し特許を得た。

 そして、1923年にベンツ社は世界で初めて「ディーゼルエンジン搭載のトラック」の開発に成功。そして、1936年2月のベルリンモーターショーで、メルセデス・ベンツは「世界初の量産ディーゼル乗用車(260D)」を発表。2.6リッターの最高出力45ps(3200rpm)というスペックは、同等のガソリンモデルと比べ約30%少ない燃料で走行でき高い注目を集めた。

 以来、長年に亘り、メルセデス・ベンツはディーゼルエンジンの開発において、歴史的に重要な技術革新を幾度となく実現。ターボチャージャーを搭載した「コモンレールディーゼル」や「CDI」など、数多くの革新的な技術は出力やトルクの向上に加え、燃費と排出ガスの低減を実現させている。

 以前には石油危機による燃料費の急騰から、その経済性が注目され、また今日では、地球温暖化防止に貢献(CO2排出量削減)する意味でもクリーンディーゼル乗用車はスター的な存在といえるだろう。なお、ガソリンエンジンでは1954年、ガルウイングクーペ「300SL」が世界初のガソリン直噴エンジン(直列6気筒・3リッター)を搭載し、240ps/5800rpmというハイパワーを発揮している。

EV&ハイブリッドも積極的に開発

 そして、1969年から1970年代に入り、電気駆動・ハイブリッド駆動の開発を復活し、積極的に取り組んできたメルセデス・ベンツ。1969年、バスタイプの電気自動車「OE 302」をテスト車両として使用し、電気駆動テクノロジーの体系的研究に再び取り組みを開始。1971年には、テスト走行バス「OG 305(下写真)」を発表し、搭載された6気筒エンジンは二酸化炭素排出量を大幅に低減する天然ガスを燃料としていた。

 また、1972年にはバンタイプの電気自動車を発表。このプロトタイプはラゲッジスペースの下にバッテリーを搭載しており、簡単にバッテリーが交換できた。さらに1974年、メタノールで走行する450SLのプロトタイプを開発し、出力を20%アップしながらも窒素酸化物の削減にも成功したのである。

 その後、1984年4月に東京・晴海で開催されたドイツ博にて、メルセデス・ベンツは「代替駆動艦隊」をプレス発表。「メルセデス・ベンツ アイデアは問題を解決する」と題したプレス発表資料と写真にはアルコール燃料で動く車(下写真前面)、水素技術で動く車(同写真中央)、及びハイブリッドで動く車(同写真後部)など、合計16台を発表した。

 そして、2007年秋の東京モーターショーで発表されたコンセプトカー「F700」に搭載されたDIESOTOエンジン(ディソット)は、”DIESEL”(ディーゼル)と”OTTO”(ガソリン)の2つユニットを融合。つまり、ディーゼルエンジンの燃費の良さとガソリンエンジンの排出ガスクリーンを両立した、革新的な構造だったのである。

 では、次のページにて近年のメルセデス・ベンツが取り組んでいるパワーユニット技術をみていこう。

Blue EFFICIENCY(ブルーエフィシェンシー)】

 独自の豊富な経験を活かし、メルセデス・ベンツは排出ガスゼロのモビリティを実現するために一連の環境テクノロジーを発表。その総称が「ブルーエフィシェンシー」で、燃費の向上、CO2排出量削減、排出ガスのクリーン化などに向けたメルセデス・ベンツの革新技術である。

 その象徴が数々のパワートレイン。2009年に発表されたラグジュアリーセダンのSクラス HYBRIDは、欧州メーカー初のハイブリッド乗用車であり、先進のリチウムイオンバッテリーを採用した初の量産ハイブリッド車となった。

【CGIエンジン(Chaged Gasolin Injection)】

 低燃費と動力性能を両立させたガソリン直噴ターボエンジンの「CGIエンジン」。このCGIエンジンは高速かつ精密な燃料噴射を可能にする”ピエゾバルブ式インジェクター”を採用し、理想的な希薄燃焼を可能にし、極めて高い燃費性能を実現した。

【BlueTEC(ブルーテック・ディーゼルエンジン)】

 ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べて特に排出成分で問題となるのが、窒素酸化物。この問題を解決すべく、「BlueTEC」には排出ガス中に尿素水溶液を噴射する”AdBlue(アドブルー)インジェクター”と”SCR触媒コンバーター”を組み合わせた、革新的な排出ガス浄化技術を採用した。

 化学反応によって有害物質を無害なものへと還元する画期的なこのシステムは、有害な窒素酸化物を無害な窒素と水に還元する排出浄化装置となり、世界最高水準のクリーン性能を実現させた。

【E-CELL & F-CELL】

 2010年、バッテリー電気駆動ユニットを搭載した「AクラスE-CELL」および商用車「VITO E-CELLバン」、さらに燃料電池を搭載した「BクラスF-CELL」といった電気自動車及び燃料電池自動車の3モデルを次々に発表。特筆すべきは「BクラスF-CELLワールドドライブ」で2011年1月30日、シュツットガルトを出発し 、125日間で4大陸(14か国)を約3万km走破する壮大なツアーを実施。燃料電池車で世界を一周するという挑戦は世界初の試みだった。

 そんな電気自動車ラインアップに「スマート・フォー・ツー」が加わったことも記憶に新しいところ。さらに、スーパースポーツカー「SLS AMG」のE-CELL実験車をも走らせるなど、排出ガスゼロにその躍進ぶりは止まらない。

 この環境コンセプトで特徴的なのは「効率化」が広範囲におよぶこと。軽量素材や空力性能の高いデザイン、転がり抵抗を減らしたタイヤなど、様々な部分で効率化が行なわれ、しかも日々進化しているのだ。

 今日では、メルセデス・ベンツは2016年10月のパリモーターショーで発表した中長期戦略「CASE」に取り組んでいます。CASEとは、”Connected”(インターネットを介して外とつながる)、”Autonomous”(自動運転)、”Shared”(所有せず共有する)、”Electric”(電動化)の頭文字をとったもの。特に、EQブランド・革新的電動化モデルで環境性能を追求しているが、その歴史はかなり以前から取り組んでいた事が解って頂けたと思います。

 メルセデス・ベンツは常に効率的で環境負荷の少ない自動車、その為の基本テクノロジーの開発に取り組み、数多くの革新的な技術をいち早く実用化してきたのです。

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