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日産 熱効率50%の発電専用「e-POWER」用高効率エンジンを発表

掲載 更新 19
日産 熱効率50%の発電専用「e-POWER」用高効率エンジンを発表

日産自動車は2021年2月26日、次世代の「e-POWER」用ガソリンエンジンで世界最高の熱効率50%を目指す新開発エンジン技術を発表しました。

電動化時代のガソリンエンジンの意義

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グローバル規模でクルマの電動化が加速しているのは周知の事実ですが、もちろん一気に大容量のバッテリーを搭載する電気自動車に切り替わっていくわけではありません。当分の間はハイブリッド車の存在価値は大きく、ハイブリッドシステムと組み合わせるガソリンエンジンの高効率化は必須となります。

将来的なカーボンニュートラルを目指す時に、電動化がすべての答えではなく、水素などをが媒介するグリーン合成燃料「e-フュエル」も有望視されています。CO2フリーの合成燃料のe-フュエルがより低コスト化され、大量供給が可能になれば電気自動車よりe-フュエルを使用する内燃エンジン車の方が高効率で、低コストになると考えられています。

このような背景から、内燃エンジンは消え去る運命ではなく、これからも開発が続けられていく理由があり、今回、日産が発表したe-POWER用のエンジンもそうした背景があります。

これからのガソリンエンジンは、より高効率、つまり熱効率に優れたエンジンが求められ、そのために各自動車メーカーは次世代の高効率エンジンの開発を急いでいます。現在では、船舶用の超大型ディーゼルエンジンは熱効率50%を超えていますが、自動車用のガソリンエンジンではトヨタのハイブリッド用エンジンが最高熱効率43%に到達し、ホンダのハイブリッド用エンジンもこれに肉薄しています。

また熱効率を高めるための必須手段として、希薄燃焼(リーンバーン)への挑戦も行なわれており、マツダのe-スカイアクティブXエンジン、スバルのCB18型は空燃比30というリーンバーンを実現し、熱効率40%に到達しています。

ただ、これらのリーンバーンエンジンは駆動用として搭載されているため、大きな負荷の変動で、幅広い回転域で使用されるため、低負荷ではリーンバーン、負荷が大きくなると通常燃焼へと切り替えを行なわざるをえないのです。

それに対して、トヨタのハイブリッド用エンジンやホンダのハイブリッド用エンジンが世界トップレベルの高い熱効率を発揮できるのは、モーターと組み合わせることでエンジンの効率の高いゾーンを使用できるからです。

今回発表された日産のe-POWER用エンジンもまさにハイブリッド、つまり発電専用エンジンであるため、より高い熱効率を目指すポテンシャルを持っているわけです。

e-POWER用のエンジンの特長は、タイヤを駆動するのではなく発電専用のエンジンである、ということで、通常の駆動用エンジンより燃費の良い回転ゾーンだけで高効率に使用できるという点が追求されています。また、高効率の希薄燃焼と通常燃焼を切り替える必要がないことも有利な点です。

今回の発表では、次世代エンジンの最高熱効率はエンジン単体で46%、排気ガス熱の回収を合算すると48%を実現する見通しがついたことが明らかになりました。

次世代e-POWER用エンジンの採用技術

より高い熱効率を高めるためには、エンジンの理論熱効率を高めること、各種の損失を低減することは当然ですが、通常の駆動用エンジンでは使用される回転域や負荷の範囲が広く、全領域で高効率を達成するのは不可能でした。

しかし、e-POWER用の発電専用エンジンでは、運転領域が限定されるため、日産はより高い熱効率を達成するチャンスと捉えており、10年前から開発がスタートしています。

新世代エンジンで熱効率を高めるためのポイントは、高圧縮比化と、空燃比30レベルのリーンバーンです。ただ、高圧縮比でのノッキングを回避するために、早閉じミラーサイクル、クールドEGRガスの混合、燃焼室内での強いタンブル流が不可欠となります。

また希薄な混合気+EGRガスによるリーンバーンでは、高エネルギー点火システムと、希薄な混合気でも安定した燃焼を行なうための強いタンブル流(縦渦)が求められます。このことから、いかに強いタンブル流を発生させるかが開発のポイントになっているわけです。

この次世代エンジンでは、点火プラグの放電スパークを側面からの強い混合気流により拡大させ、その状態で着火させるると安定した燃焼が発生することがわかり、そのためにはタンブル流は1秒間に20回旋回するような強タンブル流が必要であることがわかりました。

しかも吸入時から圧縮行程までタンブル流が維持して乱れず、圧縮行程の最終段階の燃焼室でもタンブル流が保たれ、着火時にそのタンブル流の影響で放電スパークが拡大されることで着火できなければなりません。

これらからわかるように、日産は希薄混合気に着火するために、e-スカイアクティブXやスバルCB18型のような高圧直噴によるマルチ噴射で、部分的に濃い混合気の着火火種とすることなく、希薄混合気のままで着火させることを狙っているのが特長です。

高圧直噴を使用しないということは、より低コストの燃料噴射システムでリーンバーンが実現するということです。

なお日産はこの燃焼技術コンセプトを「Strong Tumble&Appropriately stretched Rubust ignition Channel:STARC」と名付けています。その名称通り、強いタンブル流+伸長された点火放電スパークがキーポイントとなっています。

そのためこの次世代エンジンは、超ロングストロークとして吸気流速を高めるようにしていますが、それ以外にも吸気ポート形状の工夫やピストン頭部の形状にも独自の技術があリ、さらに点火システムも強化されていると考えられます。ですが、今回はそれらについては公表されませんでした。

試作エンジンでは、混合気比で30%という高いEGRの状態で熱効率43%、空燃比30という希薄混合気では熱効率は46%を達成。希薄燃焼エンジンに排気ガス熱の回収装置を組み合わせると熱効率は48%という空前の高いレベルになることが確認されています。

では熱効率50%へのプロセスはどのようなものか? 現在のe-POWER用エンジンに求められる通常の高効率域での発電運転と、全負荷での発電運転という2ヶ所のエンジン運転の回転域を持っていますが、将来的には、バッテリーがより高性能化され、高出力化すれば、全負荷での加速でもバッテリーの出力で電力がまかなえるようになり、発電用のこのエンジンは、最高の燃費回転数での一定回転、つまり定点運転が可能になり、この時点で熱効率50%が実現するとしています。

また、このような定点運転とは、エンジンとして使用される回転域がきわめて狭いために、これまでのようなさまざまな可変デバイスが不要になり、よりエンジンの低コスト化も達成されます。

日産が新たに開発する高い熱効率の次世代エンジンは、3気筒の1.5Lが想定されており、超ロングストロークの設定とされています。

現在のノートe-POWER用の1.2Lエンジンにもこのコンセプトの一部は採用されているようです。またヨーロッパ用のe-POWERモデル、キャッシュカイに搭載される1.5Lの可変圧縮比ターボエンジンは、より高速・高出力を実現するために採用され、その次の世代のe-POWER用エンジンに今回発表されたコンセプトが採用されると予想されます。

そして、その時点では、e-POWERモデルと通常のガソリンエンジン駆動車のコストはほぼ同等になると想定されています。

このように高い熱効率のエンジンを搭載したe-POWERモデルは、現状の火力発電が主流の発電構成での電気自動車と比較して、CO2のLCA(製造から走行まで)はほぼ同等レベルであるということです。

今後、グリーンエネルギーによる発電比率が高まれば、電気自動車はもちろん、e-POWER車のCO2のLCAはさらに低減できることになり、高い熱効率のエンジンを搭載したe-POWERのCO2削減ポテンシャルは高いということです。

いずれにしてもガソリンエンジンの熱効率は30%台の時代から現状の40%に至るまでは50年間を要していましたが、ここ数年間で50%のレベルに肉薄しつつあることは驚異的ということができるでしょう。

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日産自動車 公式サイト

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みんなのコメント

19件
  • 中にはこんな為になる記事も欲しい。
    日産e-POWER用のエンジンの将来ビジョンが記事を読んで良く分かる。
    「高効率の希薄燃焼と通常燃焼を切り替える必要がない」e-POWERはさらなる進化が期待できる。
    一方でPHVはどうしても内燃エンジンで走るときも有るので、走るためのパワーの開発は頭打ち。
    この開発は可変式エンジンと組み合わせれば、発電だけのエンジンだから、まだまだ開発の域が有ることが伺える記事。
    電動モーターもインバーター開発で進歩もするし、バッテリー開発でも進化できる。
    日産には随時、車両価格の低下が顧客確保の課題。
    日産ファンとして顧客ユーザーが喜ぶ価格帯で販売してくれ。
  • 無理だとは思いますが、一応、
    「新型キャシュカイを国内にも導入してください。」
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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