受注台数は3万台! 好調なスタートを切ったと伝えられるクラウンは、言わずと知れた名門車。「いつかはクラウン」と言われた時代もあった。しかし、ユーザー層は高齢化し、ここ数代のモデルでは若返りも図ってきた。新型もそこは強く意識していることが伺える。
では、新型クラウンは若いユーザーにも購入層を広げられたのか? その販売実態や販売店の声を調べていくと、クラウンの立ち位置が見えてきた。
時代の先端!? それとも逆行!? 急増する“替えられない純正カーナビ” の長所と短所
クラウンに必要なのは、単なる若返りではないのかもしれない。
文:遠藤徹
写真/編集部
新型クラウンのは若返りに成功しているのか?
トヨタはこのほど6月26日に発表、発売した新型クラウンの1ヶ月後の受注台数を明らかにした。それによると総受注台数は約3万台で月販計画の6.7倍と好調な滑り出しという。
7月28日現在の納期は11月で4ヶ月待ちとなっている。トヨタの扱い店(トヨタ店、一部トヨペット店)は、5月初めから事前の予約を受け付けていたので、正確には2ヶ月間の受注台数だから、計画の6.7倍ではなく3.4倍程度といえる。
首都圏の扱い店の評価は「若い層を意識したスタイリッシュなエクステリアデザインに走りのポテンシャルの高さ、クオリティアップ、安全対策を中心にした充実した装備。」などを好調の要因として上げている。
では、実際にユーザーの若返りに成功しているのか。トヨタの発表によると「個人・法人比率は55対45。個人の年代別比率はターゲットとする40、50代が35%、60代以上が60%。」としている。
この数字をみると若帰りは進んでおらず、歴代モデルとほぼ同じ構成比といえる。この理由として首都圏にあるトヨタ店の営業担当者は、
「500万円以上もする高級車だから、収入の低い若い層は買いたくても買えない」
「ハイブリッド、安全対策を中心とした装備の充実は新型クラウンの売りのひとつだが、どれもコストアップ要因になるので、クラウンはますます高嶺の花になっている。」と指摘する。
それにセダンの絶対的なマーケットニーズは低下しており、SUVやミニバン、あるいはベンツ、BMW、アウディなどの輸入車に流れているので、クラウンにとっては厳しい現実となっている。
プレミアムブランドのレクサスに代替えし、新型になっても帰ってこないという事情もある。
若年層を狙った「買い方」で若返り図る
今回の新型クラウンはプラットフォームベースでいえば、15年ぶりのフルモデルチェンジといえる。
歴代のロイヤル、アスリート、マジェスタを統合し、ひとつのスポーティ&スタイリッシュ&ハイクオリティな仕立てで売り出した。この新しいコンセプトは成功している部分もある。
東京地区のトヨペット店では、
「ベンツ、BMW、レクサスに流れたお客さんが帰っているケースも見受けられる。特に走り、静粛性、安全対策はベンツやBMWを上回っているのが施設内の比較試乗で実感しているので、これをお客さんにアピールして行きたい。」と胸を張る。
価格が跳ね上がり若い層はさらに買いにくくなったわけだが、低金利の残価設定クレジットなどで毎月の支払額を低くする工夫をしている。
最近利用者が増えているのは2回払いの支払プランだ。実質年利を1%にして初回に半分、3年後に残りの半分を支払うというもの。
そうすると600万円だと300万円ずつの支払いで金利は6万円と少ない。これを最初のスタートダッシュのキャンペーンとして用品サービスし、実質金利負担はゼロ、この他15万円程度の値引きや下取り車があれば、5万円くらいの買取価格の上乗せなどで買い求めやすくしている。
クラウンにも新しい戦略が必要
ただ、現時点では新型車効果で売れ行きが好調だが、それが一巡する1年後以降、どのような販売動向になるか注目だ。
セダン市場そのものは冬の時代から脱していないので、新しい商品戦略を講じることが必要になる。
参考になるのはベンツやBMWのような商品ラインアップの充実整備である。ベンツ EクラスやBMW 5シリーズは、クラウンのように4ドアセダン1ボディのラインアップではない。
ベンツ Eクラスは、4ドアセダンの他ステーションワゴン、クーペ、カブリオレなど多くのボディタイプがあり、パワーユニットも1.9、2.0、3.0、4Lなどを搭載し、幅広いユーザーニーズに応えられる、豊富なバリエーションを揃えている。
BMW 5シリーズも4ドアセダン、ツーリング(ステーションワゴン)があり、パワーユニットは2.0、3.0、4.4Lを搭載するワイドバリエーションとなっている。
対するクラウンは、4ドアセダンのみでパワートレインは2.5&3.5ハイブリッド、2Lターボのラインアップであり、4ドアセダンだけでは幅広いユーザーニーズに応えられない。
クーペやステーションワゴンがあれば、若い層へのアピールももっと可能になるといえるだろう。
■販売現場の声は? 首都圏トヨタ店の証言
新型クラウンのできは良く、滑り出しは今のところ好調といえるが、果たしてどこまで続くか不安部分はある。
80%以上に達している代替え母体は大きいが、かつてに比べるとかなり小さくなっている。レクサス、ベンツ、BMW、アウディに流れているケースも多い。
トヨタ店、トヨペット店の一部はレクサス店を事業部として抱えており、新型車が発売になると紹介する。
歴代クラウン(のオーナー)はLS、GS、ISに流れる。こうした場合、レクサスブランドの方がクラウンよりもステータス性が高いので、クラウンが新型車になったからといって、格下のクラウンに戻ることはあまりしないので、その分クラウンの代替え母体は小さくなる。
若返りは本当に必要? クラウンに求められる価値
ここまで遠藤氏のレポートと販売現場の声を中心に書いてきたとおり、クラウンユーザーの若返りはそれほど進んでいないが、それ自体は大きな問題ではない。
クラウンは、日本の社会を反映した高級車だ。日本では年齢とともに所得が上がるのが一般的だが、将来的にみればその傾向は徐々に弱まっていくだろう。さらに、高級車の選択肢も多様化している。
とすれば、クラウンに求められるのは「若返り」ではなく、年齢に限らず経済力を持つユーザーに訴求できる“日本の高級車”であり続けることだ。
そう考えた時に、ベンツやBMWという輸入車や同グループのレクサスにない魅力が、クラウンにあるかどうかが鍵となる。
だからこそ重要なのは、これまでクラウンを乗り継いできたユーザーを如何に繋ぎ止め、他の高級車と比較するようなユーザーを新規に獲得できるかだ。それにはバリエーションの拡充も必要だろう。
受注台数を見ても、新型クラウンが一定の評価を受けていることは間違いないが、需要が一巡した1年後は果たしてどうか?
その売れ行きとそれを踏まえたトヨタの戦略が、クラウンの本当の評価を決めることになるだろう。
【編集部】
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