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それでも「知らなかった」で乗り切ろうとする裏金議員たち

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それでも「知らなかった」で乗り切ろうとする裏金議員たち

コソッと幕引きを図ろうとしている自民党と裏金議員たち。ライターの武田砂鉄が「逃げないで説明しろよ」と、再び待ったをかける。

何度でも、自民党の裏金問題

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自民党の裏金問題が「誰が始めたのかわからない」「誰が再開させたのかわからない」「そもそも全体像がわからない」状態を維持して、1年半が経過する。その間、政治倫理審査会だけではなく、国会での追及、もちろん各種メディアのスクープや検証などが繰り返されてきたが、それでもまだ、「わからない」ままなのだ。

もちろん、これは当事者に「わかろう」とする意欲がないからで、一致団結して「わからない」を維持しようと試みる異様な状態が続く。このサイトで裏金問題について初めて書いたのはいつだったかと調べてみたら、2023年の年末、「2023年の出来事を武田砂鉄が振り返る」と題した記事だった。その記事の冒頭を長めに引用してみる。

「それにしても、パー券かよ、と思う。パー券でノルマを課して、頑張って必要以上の枚数を売った人に対して、その儲けを秘密裏にキックバックしていたそうなのである。自民党内で続いてきた慣習について、『政治の世界では文化』(鈴木淳司前総務大臣)と言ってのける政治家まで現れた。政治家を辞め、コメンテーターとして重宝されている人が、これまで言わなかったくせに、いかにノルマが大変だったか述懐し始める。知れば知るほど、『この人たちは、人々の生活なんてどうでもいいんだな』という乱暴な結論が似合ってしまう」

「乱暴な結論」と2023年の武田砂鉄は書いているのだが、2025年の武田砂鉄が書いたとしても同じような内容になる。なぜって、あれからずっと、「わかろう」としないのだ。裏金問題を問われた政治家が、横並びで、あれは会計責任者がやったこと、秘書が動いていたことであって、自分は知らなかったんです、と言っている。親分に悪事を隠す会計責任者や秘書が奇跡的に揃っていたのだ。

これがもし、どこかの会社での出来事だったらどうだろう。たとえば、あるメーカーに優秀な社員が揃っており、業界でもトップクラスの業績を誇っていた。ところがどうにもお金の流れが不明瞭で、調べてみたら、経理部が一体となって不正をおこなっていた。そのメーカーの評判はガタ落ちし、取引先も離れていった。この時、会社組織が何をするかといえば、間違いなく、経理部に対して、「何があったのかをすべて明かしなさい」「そして、君たちは全員辞めてもらう」「これだけ会社の評判を落としたのだから訴訟も辞さない構えだ」と要求・伝達するはず。

でも、裏金問題で名前を取り沙汰された政治家たちは、不可思議なことに、誰もそれをしないのだ。裏金問題がネックとなって落選した議員もたくさんいる。自分が知らないところでおこなわれた(ことになっている)行為によって、自分の政治家生命が断ち切られてしまったとしたら、そのきっかけを作った人の責任を問わないだろうか。でも、それをしない。なぜだろう。自分は知らなかったのに。なぜだろう。

4月21日、旧安倍派幹部の世耕弘成前参議院幹事長が、参議院予算委員会に参考人招致されたが、その場で彼は、旧安倍派の会計責任者が世耕氏も出席した幹部協議の場でキックバック再開が決まったと述べたことに対し、「私の認識は違っている」と反論した。2人の意見が合わない。要するに、再開の時期についてさえ、まだわからないままになった。

さて、皆さんはこんな時どうするだろう。Aさんが「渋谷駅に18時集合って、Bさんが言ったから渋谷に行ったのに、誰もいなかった!」と不満を口にし、Bさんが「えっ、渋谷駅集合なんて言った記憶はないよ。18時くらいにどこかで、と言っただけでしょ!」と苛立っている。今は電話連絡ではなくLINEなどの記録が残っているだろうから、AさんとBさんの連絡がどうであったかをあわせて確認すればいいだけの話になる。記録が残っていなくてもAさんとBさんで話し合ってもらえばいい。すぐにわかる。

旧安倍派の会計責任者の言い分と世耕氏の言い分がズレている。この手のズレは今回の裏金問題では山積している。で、いつも思う。「えっ、全員出てきて、全員で話し合ってもらって、その場を公開すれば、すぐに全体像がわかるのでは?」。この問いかけは明らかに正しいのだが、それをやらないのはどうしてだろう。これほど答えが予測できてしまう問いも珍しい。

と、ここまで書いた原稿を自分で読んでみたのだが、特に面白くはない、新しさのない平凡な内容である。でも、面白い必要があるんだろうか。新しさは必要なんだろうか。説明せずに逃げようとしているのだから、何度でも繰り返し、逃げないで説明しろよ、と言えばいいのではないか。この地味さを捨てないほうがいいと思っている。

武田砂鉄

ライター

1982年生まれ、東京都出身。 出版社勤務を経て、2014年よりライターに。近年では、ラジオパーソナリティーもつとめている。『紋切型社会─言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、のちに新潮文庫) で第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。著書に『べつに怒ってない』(筑摩書房)、『父ではありませんが』(集英社)、『なんかいやな感じ』(講談社)、『テレビ磁石』(光文社)などがある。

文・武田砂鉄
編集・神谷 晃(GQ)

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