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海外との温度差は日本沈没の前触れ? 電気自動車の覇権ゲームについて日本人が知っておきたいこと

掲載 更新 245
海外との温度差は日本沈没の前触れ? 電気自動車の覇権ゲームについて日本人が知っておきたいこと

欧州メーカーは今やBEV(電気自動車)に賭けている

日本の自動車メーカー、とくにトヨタを中心とする勢力は純粋な電気自動車(BEV)の将来性や可能性にリソースを全振りすべきではないと考えています。また、日本のモータージャーナリストの多くも、LCA(生産から廃棄まで)でみるとハイブリッドのほうがBEVよりもCO2排出量が少なく、BEVにしたときの電力の確保などの点が問題とする傾向があるようです。

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一方、グローバル、とくに欧州勢は完全にBEVに賭けていると言っていい状況になってきました。EUマーケットではBEVの販売台数が確実に増加、2021年4月単月の数字でいうと、BEVの販売台数は約7.1万台で、前年同月比で300%以上も伸びています。同月におけるEUの新車販売は約103万台ですから、BEVのシェアは7%程度。PHEVの販売シェアを加えると、EUにおけるプラグイン車(BEVとPHV)の新車に占める割合は15%にもなります。もはやニッチではなく、数年後に主流になるといってもおかしくない市場規模でしょう。

日本市場“だけ”を見れば確かにBEV人気は低迷したまま

一方で、日本市場ではまだまだBEVはニッチな存在です。たとえば、2021年上半期の半年間における登録乗用車の新車販売規模は約131万台。その中で、国産BEVの代表モデルである日産リーフの販売台数は4003台(約0.3%)。さらに電気自動車といえば最初に思い浮かぶブランド「テスラ」については、そのラインナップ全体を足しても上半期で1800台程度(約0.1%)しか日本では売れていない。ほかにも欧州系ブランドを中心にBEVが販売されていますが、いずれにしても全体で1%にも満たない惨状です。

このEVを求めない国民性も、トヨタとその仲間たちの判断に大きく影響を及ぼしているといえるでしょう。日本市場を中心に考えれば、BEVに注力するのは時期尚早とするのは当然の判断です。

EV全振りの日産やホンダも、欧州メーカーの後塵を拝している

逆に、日系であってもBEVに全振りするとアナウンスしているメーカーの代表がホンダや日産で、中でも日産は量産BEVのリーフで、世界に先行していたのです。しかし、日産リーフは現在、欧州でも売れているとは言えず、欧州マーケットにおけるBEVの販売ランキング上位はフォルクスワーゲンやルノー、プジョーなどの欧州ブランドが占め、さらにヒョンデやキアの後塵も拝しているのが現実となっています。

とはいえ、そんなリーフでさえEUマーケットでは単月で2000台以上が売れていて、日本市場での3か月分に相当するほど。つまり日本の市場マインドはグローバルのそれと大きくズレているとも言えるのです。どちらが正しいというのではありませんが、日本的な発想でグローバル市場のトレンドを判断することは危険でしょう。

BEV価格競争の鍵となるバッテリー調達で日本は劣後している

とくに温度差を感じるのが、BEVの生産量を左右するバッテリー調達能力についての議論です。ホンダが北米市場向けのBEVではGMのアルティウムバッテリーを採用すると発表していることや、日産のイギリス工場に隣接してサプライヤーがバッテリーのギガファクトリーを建設するといった動きもあるものの、全体的には、日本の自動車メーカーがバッテリーをどう確保するのかという動きにおいて出遅れ感は否めません。

なにしろバッテリーの調達は、BEVの生産量とコストダウンにダブルで効いてくる要素です。

トヨタ・スズキ・ダイハツ連合のEV開発は中国勢に対抗できるのか?

先日、トヨタが中心となる商用車ネットワークにスズキとダイハツも加わるという発表があり、両社が軽商用のBEVを共同開発するという宣言も話題になりました。軽トラや軽1BOXのBEV開発はそれほど難しくはないだろうし、近距離ユースがメインとなる軽商用はBEVとの親和性も高いでしょう。

しかし、軽商用に求められる廉価な車両価格を実現するためにはバッテリーやモーターのコストダウンが必要で、バッテリー調達やコストダウンの道筋がつけられなければ、グローバルに競争力のあるBEVを生み出すことは難しいかもしれません。例えば佐川急便は今年4月、軽宅配バン用として日本のファブレス企業「ASF」が中国で生産するBEVを導入することを発表しています。

いまからスズキ、ダイハツが共同開発を始めるというのは少し遅きに失した印象があるし、中国産BEVに対抗できるだけのローコストを実現できるか? という疑問もぬぐえません。商用車というのはビジネスユースだけに、乗用車のようなブランド力では勝負できません。導入コストと故障率などの維持費をシビアに見られる世界で、はたして日本の自動車メーカーは勝負権を得ることができるのでしょうか?

文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)

※写真
1、2枚目:トヨタ、スズキ、ダイハツの商用車連合の記者会見より
3枚目:VWグループの電動車(BEV、PHV)の2019年、2020年の販売台数
4、5枚目:佐川急便がASFと共同開発する中国製の宅配EV
6枚目:中国のGM系ブランド、上汽通用五菱汽車が販売する50万円を切る宏光MINI EV

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みんなのコメント

245件
  • ヨーロッパの思惑にまんまとはめられたら負け!
    電気、電気と騒ぐことでヨーロッパのメーカーが有利に事を運んでいるしかないことに気づかないことの方がむしろ問題。クリーンディーゼルで大嘘をついた事をもうわすれたか?電気は100歩譲ってもまともになるまでまだ10年はかかる。
  • 目的はカーボンニュートラル BEVが目的ではない
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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