BMWモータースポーツ社の存在感を高めた3.0 CSL
自動車雑誌「モータースポーツ」のページをめくった若き筆者は、編集者のビル・ボディ氏による記事へ魅了された。1973年1月号の特集は、BMW 3.0 CSLで欧州の首都を10か所、4日間で巡ったものだった。
【画像】ホモロゲ仕様なBMW 3.0 CSLとポルシェ911 カレラRS 2.7 現行M4 CSLと911 GT3 RSに 全125枚
そこでの平均速度は234km/hで、走った距離は6100kmに達し、燃やしたプレミアムガソリンは1135L。エンジンオイルも1.8Lほど継ぎ足していた。壮大なロードトリップで、3.0 CSLは自分にとって特別な1台になった。とりわけ「バットモービル」が。
欧州ツーリングカー選手権でフォード・カプリ RS3100より先にゴールし、BMWモータースポーツ社の存在感を一躍高めた3.0 CSL。公道モデルも当然、注目を集めている。
そして同時期に誕生したのが、史上最高の1台へ数えられるポルシェ911 カレラRS 2.7。1973年のグループ4 GTクラス・レースを前提にした、特別なポルシェだ。
エンジンの位置以上に対照的な運転体験
興味深いことに、ホモロゲ取得のためのアプローチは、2台で異なる。結果として、公道での運転体験も対照的といえるほど違う。エンジンの位置以上に。
1970年代初頭のポルシェは、まだ小規模なメーカーだった。1969年にデビューしたスポーツカー・クラスの917は、1970年と翌年のル・マン24時間レースで優勝を掴むが、ホモロゲ取得に必要な25台の生産には苦労している。
同時期に、国際自動車連盟はグループ4/5カテゴリーを改め3.0L以下の規制を導入。設計の古い908では、フェラーリ312PBと互角に戦うことは難しかった。そこで市販車ベースのGTクラスへ、転換が図られる。
決定的なきっかけは、ドイツでのレース。911がBMWやフォードの後塵を拝する様子を、ポルシェの技術者、ヘルムート・ボット氏が目の当たりにしたことだった。
装備も徹底的に省かれた軽量なカレラRS 2.7
3.0L規制に対し、開発されたエンジンは2.7L。ポルシェに詳しいレーシングドライバー、アンディ・プリル氏は「新エンジンを作りたくなかったのでしょう。2.7Lユニットは、192psの2.4S用クランクケースがベースです」と説明する。
「スタッドボルトの位置を変えず、ボアを限界まで広げています。後期型の911 S/Tをベースに、2台のカレラRS 2.7が製作されたのは1972年。経営陣は、完成まで開発を知らなかったようですが、ホモロゲーションに必要な500台の生産は承認されました」
ファクトリーオーダー仕様(RSH)として作られた911 カレラRS 2.7では、装備が徹底的に省略された。軽量化のため鋼板の厚みが削られ、ガラスも薄肉化。軽いビルシュタイン社製ダンパーが用いられた。
当初、RSを関した911は特別なマニア向けだとポルシェは考えていたが、1972年10月のパリで発表されると、1週間で完売している。RSR用に確保された、55台を除いて。
ランボルギーニ・ミウラに匹敵する動力性能
「細いホイールと軽量シート、薄いバンパーの状態で車重が計測され、ホモロゲーションを取得しました」とプリルが続ける。その後工場へ戻され、ディーラーの要望を元にツーリングのRSTか、150kg軽いライトウエイトのRSL、2種類の仕様で整えられた。
カレラRS 2.7に搭載された水平対向エンジンは、213psを6300rpmで発生。0-97km/h加速を5.5秒、0-161km/h加速は15.0秒で処理し、ランボルギーニ・ミウラに匹敵する動力性能にあった。低い車高とダックテール・スポイラーも、食指を動かしたはず。
レースでの活躍が重なり購入希望者は続出し、ポルシェは500台を追加生産。これにより、グループ3 プロダクションクラスのホモロゲ取得も可能になっている。最終的にラインオフしたカレラRS 2.7は、1580台。内111台が、右ハンドルだ。
ピュアな美しさを放つフックス社製アルミ
今回のカレラRS 2.7は、カーズ・インターナショナル・ヘリテージ社の在庫車両。1973年に、ラリードライバーのハインツ・ヴァルター・シェーヴェ氏が注文したもの。納車後はラリーイベントを転戦し、2013年のレストアを経てディーラーが購入している。
992型の911「RS」へ見慣れていると、印象は驚くほど穏やか。控えめにフェンダーがフレアし、フックス社製アルミホイールがピュアな美しさを放つ。ダックテールスポイラーは高くそびえ、いかにも気流がリアタイヤを路面へ押し付けそうだ。
典型的な911のメーターパネルには、VDO社製メーターが4枚並び、タコは7250rpmからレッドゾーン。スピードは300km/hまで振られている。4スポークのステアリングホイールは、不釣り合いなほど大きい。
隙を見て暴れたがるリアタイヤ
ペダルはフロアヒンジで、右へオフセット。5速MTのシフトレバーは、後方へ傾斜している。細いストラップを引くと、内側からドアを開ける。装備は最低限でしかない。空冷のフラット6は、轟音とともに始動。鋭く上昇する回転数を、僅かに高めて発進する。
ステアリングは適度に重く、後ろ寄りの重量配分から想像できないほど、手応えには安心感がある。フロントノーズの上下動は大きく、路面へ擦りそうなほどスカートが近い。
同時期の911と比べれば、安定感は別物。グリップ力が高く、アンダーステアの兆候はまったくないが、リアタイヤは隙を見て暴れたがる。2.7Lエンジンは中域から太いトルクを放ち、高域へ引っ張ればキャビンに咆哮を充満させる。
パワーオフで、テールから破裂音が放たれる。ギア比は高めで、変速は想像以上に正確。公道で召喚できる能力は半分程度で、サーキットへ向かいたくなる。実に歯がゆい。
この続きは、BMW 3.0 CSL / ポルシェ911 カレラRS 2.7(2)にて。
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