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CX-60ディーゼルを通じて考えるマツダの現在地と未来【日本版編集長コラム#51】

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CX-60ディーゼルを通じて考えるマツダの現在地と未来【日本版編集長コラム#51】

最近、マツダが変わりつつある

ロータリーエンジンをBEVのレンジエクステンダーとして搭載した『MX-30ロータリーEV』、ソフトトップとハードトップという2台の『ロードスター』と続いた最近のマツダ話。最後に登場するのは『CX-60』のディーゼルである。

【画像】デザインが素晴らしい!今回取材したマツダCX-60と欧州で発表済みの新型CX-5 全49枚

今回、マツダの話をテーマとしたのは理由があって、どうも最近、変わりつつあると感じているからだ。

マツダは1980年代後半から1990年代にかけて展開した多チャンネル化の失敗などを教訓に、近年はスモールプレーヤーであることを意識し、会社規模に合わせて身の丈にあったビジネスを展開してきた印象だ。

ラインナップをいたずらに拡大せず、一括企画で効率よく開発、生産する様子を取材の現場で見てきて、いいところを狙っていると思っていた。

だから、2021年にラージプラットフォームで高級路線を狙った戦略を発表した時、少し心配になった。中身をほぼ全て新開発し、CX-50、60、70、80、90を一気にワールドワイド展開とは、言葉を選ばずに書けば、『身の丈』にあっているのかと。

国内ビジネス構造変革の方針

そこから約4年半がすぎ、今年6月19日に『国内ビジネス構造変革の方針を公表』という発表があった。簡単に書けば、販売網を主に都市部の優先地域中心に再構築し、ブランドにフォーカスしたマーケティング投資を行い、店舗支援を行う新会社『マツダビジネスパートナー』を設立する、というもの。

発表に関するプレゼンを聞いていて思ったのは、「これはラージプラットフォームを成功させるための戦略だ」ということ。これまでにない高級車であるCX-60やCX-80を数多く販売するには、現場への投資が不可欠というわけだ。

その効果は少し先になると思うが、CX-60の販売自体は伸びてきている。日本自動車販売協力連合会のデータによれば、今年は4~9月で4497台と前年同期比152.9%になり、全体のランキングも44位に入っている。そう言われれば最近、筆者の自宅がある静岡県東部でもだいぶ見かけるようになった。

そんなCX-60の中からディーゼルを試乗車に選んだ理由がある。それは8月にいすゞ自動車、平野石油、マツダ、ユーグレナの4社が合同で開催した、法人企業、官公庁に向けた『次世代バイオディーゼル体験会』に参加したことだ。

イベントの詳細は割愛するが、既にCX-60、80がバイオディーゼル対応車種であることを初めて知り、バイオディーゼルの現在地とハードルの高さを理解できた。

マツダはEVのトップランナーにはならないと宣言する一方で、マルチソリューションとして様々な選択肢を残さなければいけない現状に、自動車メーカーは本当に大変な時期にきているなぁと実感したのである。

現行型は昨年12月に商品改良

さて、今回お借りしたのは『マツダCX-60XDエクスクルーシブ・モード』。パワーユニットは3.3Lの直列6気筒ディーゼルで、駆動方式は4WDとなる(ちなみにエクスクルーシブ・モードは本稿執筆直前の発表でラインナップ落ち)。

CX-60のパワートレインは、このディーゼルに加え、同エンジンをベースとしたマイルドハイブリッド(MHEV)、2.5L直列4気筒のガソリン、同エンジンをベースとしたプラグインハイブリッド(PHEV)の4種類を用意。MHEVとPHEVは4WDのみとなり、他はリア駆動の2WDも設定される。

現行型は昨年12月に商品改良を受けたモデル。その特徴はなんといっても操縦安定性と乗り心地の向上で、それまで評判の芳しくなかった部分に手を入れた形だ。筆者は今年初めの試乗会で取材し、前後して昨年秋にはCX-80の試乗会も参加。特に後者ではエンジニアと直接話もしたが、サスペンションセッティングに苦戦のあとが感じられた。

しかしその中で、車重が今回のエクスクルーシブ・モードでも1870kgに収まっているディーゼル系は、許容範囲に入っていると思う。今回は約700km乗らせて頂いて、最初は乗り心地もハンドリングも何だか落ち着かない雰囲気もあったが、だんだんと慣れてきて最終的には気にならなくなった。

そればかりか、大排気量のディーゼルはなかなか気持ち良さもあり、イベント用の大量の荷物を満載しても力強く走ってくれて、そんな状況での17.2km/Lという平均燃費も充分な実用性に感じた。

そしてなんといっても、CX-60はデザインが素晴らしい!

全体のフォルム、プラチナクオーツメタリックのボディカラー、ピュアホワイトのインテリア。毎回乗るたびに、『いいデザインのクルマに乗っている』という喜びがあった。低音がよく聴こえるBOSE製のスーピーカーも、気分を高めてくれる。

細かいところで気になるところもあったが、それらを全て補うだけのデザイン力があり、最終的にはこのクルマが好きになった。しかもこれが500万円を切る491万1500円という車両価格で購入できるのも、モデル内容を考えると良心的だ。

トランプ関税の大打撃

さて、現在マツダは、トランプ関税の大打撃を受けてかなり厳しい状況にある。通期の影響金額はなんと2333億円だ。

8月に行われた第一四半期決算説明会の後、広報に質問した回答によれば、純粋な関税対策として仕向け地の変更や米国工場の稼働率向上で881億円の改善を見込んでいて、台数構成のマイナスを含めても608億円のプラス効果になるという。

また、従来から計画されていた固定費および原価低減によるコスト改善を400億円ずつ行う。つまり608+400+400=1408億円をオフセットできる想定だ。

元々マツダは、2027年までに固定費と原価をそれぞれ1000億円、合計2000億円削減する構造的原価低減活動を全社的に取り組んでおり、そういった流れの中でトランプ関税が発生したことは、まだ幸運だったのかもしれない。

新エンジン『スカイアクティブZ』

また同時に質問した、既に欧州で発表された新型CX-5の日本導入時期に関する広報の回答を掲載しよう。CX-5はモデル末期でも売れ続けているマツダの稼ぎ頭で、今年の4~9月は9997台で前年同期比103.8%、ランキングは31位となっている。ディーゼルの搭載も気になるところだ。

『日本の導入時期については、適切な時期にお伝えさせて頂きます。欧州を含め、グローバルで2.5Lガソリンのみの設定です。2027年中にSKYACTIV-Zと組み合わせたハイブリッドモデルを導入予定です』。

そう、スカイアクティブZ! である。試しにネットで検索すると、『SKYACTIV-Zへの挑戦 エンジンに夢と可能性がある限り ―内燃機関を磨くマツダの電動化戦略―』という、マツダの公式HPにあるエンジニアのインタビューへとたどり着く。

このタイトルを見たとき、『楽観視はできないが、マツダの未来を期待してもいいのではないか』、そう直感した。

1920年に創業したマツダの歴史が、苦難と挑戦の繰り返しであることは、よく知られている話だ。それを乗り越えてきたからこそ、今こうして素晴らしいラインナップを取り揃えている。

考えて欲しい。世界で唯一ロータリーエンジンを作っていて、30年以上オープンスポーツカーを作り続けて、そして電動化全盛の中でディーゼルエンジンも進化の手をやめないメーカーが、果たして他に存在するかと。

2012年の初代CX-5登場以来、約13年取材を続けてきて、そこで関わった広島の人々は皆さん温かい方ばかりであった。だから、贔屓と言われてもなんでも、この苦難を今回も乗り越えて欲しいと心から願っている。

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN
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みんなのコメント

13件
  • F.Kナビオ元マネージャー
    ”CX-60ディーゼルを通じて考えるマツダの現在地と未来”………
     かつてはロータリーで持ち上げられてた時代があっても燃費問題でそのロータリ
     ーのそのものの発展も望めず、クリーンディーゼルが盛り上げられようとしてた
     のにどこかに消えてしまった。そんな中でこの会社は大丈夫なんかな?
     イメージでは新車の値引きで何とか売ってるような話しか聞かんねんけど。
  • nib********
    >それは8月にいすゞ自動車、平野石油、マツダ、ユーグレナの4社が合同で開催した、法人企業、官公庁に向けた『次世代バイオディーゼル体験会』に参加したことだ

    次世代バイオディーゼルなんちゃらって、ずいぶん大層な名前だけど、商用車分野のいすゞは納得だけど、肝心なバイオ燃料のほうが街のガソリンスタンド運営会社(?)と、ミドリムシの会社(?)っていうのは、どうなんでしょうか?

    いまバイオディーゼル燃料で、商用レベルに近い開発が進んでるのは、廃食用油由来のものですね
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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