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7代目となる新型BMW 3シリーズは、2018年10月のパリショーでワールドプレミアを行ない、2019年3月からヨーロッパで発売される。今やBMWもSUV系の車種がビジネスの柱になっている時代だが、3シリーズは戦後のBMWの復興、成長を支えた基幹モデルであることに変わりはない。
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日本市場の要望を採り入れた320i
また、BMW 3シリーズはスポーティ・セダンの走りや、技術的なベンチマークになっており、フルモデルチェンジでどのように生まれ変わるのかという点で注目度は高い。6代目はF30型であったが、新型がG20型となる。ちなみに、開発時期はZ4/スープラ(G29型)とほぼ同時のタイミングで、共通のテクノロジーが採用されている。
デザインは、パリショーですでにベールを脱いでいるが、従来のデザインの正常進化といえる。BMWのデザインは、基本的にスーツを着たビジネスマン的なイメージを崩さないことが不文律で、端正さ、ソリッドさをどのように表現するかがその時々のテーマになっている。従来と違う点は、サイドの強いプレスラインがなくなり、映り込みを意識した曲面構成の表現になっていることだ。またエアロダイナミックスも重視され、Cd=0.23と、セダンとしてトップレベルの性能を実現している。
開発の狙いは、先進的なデザイン、比類のないスポーツ性能、革新的な先進技術の3点にフォーカスされている。興味深いのは、開発段階から日本市場の要望が強く反映されていることだ。BMWにとって、日本は6大市場のひとつとされ、販売台数は多くないものの重要な市場とされている。ちなみに6大市場とは、ドイツ、イギリス、イタリア、アメリカ、中国、日本だ。もちろん販売台数では中国、アメリカ、ドイツ、イギリスの順で、日本の市場規模はイタリアより小さいが、商品企画としては日本の要求レベルが高いため重視されているのだ。
そのため新型3シリーズの開発の早い段階から、日本の商品企画案が開発チームにプレゼンテーションされている。日本側からの要求は、プレミアム性の強化、日本仕様の320iの開発、最高性能の先進安全システムの標準装備化の3点であった。
実はBMW3シリーズでのメイン車種は330iとされているが、330iと320iは同じ2.0L・直噴ターボエンジンを搭載している。出力は320iの方が低く、エントリーモデルという位置づけだ。しかし、日本側は右ハンドルの320iの内装、装備レベルを上級グレードと同じにし、さらにオプション設定している先進安全システムを標準装備化しようというもので、日本側の粘り強い交渉により、日本仕様の320iが実現されることになったのだ。
このことからわかるように、日本仕様の320iは独自のスペック、装備となったモデルとなっている。そのためインテリアではフルデジタルのメーターパネル、ヘッドアップ・ディスプレイなどを装備している。
またドライバー支援システムは、BMWとしては最新の3眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせたシステムとなっている。3眼カメラは、遠距離(視野角28度・300m)、中距離(52度・120m)、魚眼カメラ(視野角150度・20m)を装備し、レーンキープの正確性、より早いタイミングでの危険検知、魚眼カメラによる車両周辺付近での広範囲な危険検知性能を持ち、レーダーと組み合わせることで危険な状況をより早く正確に検知し、早めの危険回避を可能にしているのだ。
なおこの新しいドライバー支援システムの日本導入にあたっては、迷彩カラーに塗られた複数のプロトタイプ車で日本の高速道路などを中心に走り込み、システムのチューニングを行なっており、これは発売寸前まで続けられる。
3シリーズの進化のポイント
日本からの提案で最優先項目となっているのが、プレミアム性の強化だ。これは特にインテリアの質感、仕上げのレベル向上を意味している。これまでの3シリーズ、あるいはBMW全体に言えることだが、インテリアのビジネスライクなデザインと質感が劣っていることは、競合車と比べ歴然としていた。
また日本では、ドイツ製のプレミアムブランドだけではなく、レクサスなどとも競合するため、インテリアの質感の向上、装備の充実は必須とされた。そのため、新型3シリーズはインテリアも従来モデルに比べて大幅にアップデートされている。
画期的なアルミ材、ホットスタンプ材の多用
さらにボディ、シャシーも大幅に革新されている。BMWはこれまでボディに関しては保守的な作りを維持してきたが、このG20 型からは新世代になった。具体的には熱間成形鋼板、つまりホットスタンプによる超高張力スチールの採用を大幅に拡大し、高強度、高剛性と軽量化を行なっているのだ。
さらにフロント・フレーム部はアルミ材とし、シャシーにもアルミ材を多用。そのため、従来型と比べボディサイズは大きくなっているにもかかわらず55kg軽量化され、同時にボディねじり剛性は50%も高められているという。こうしたホットスタンプ材の大幅採用とアルミ構造材の採用はBMWとしては画期的だ。
G20型のプラットフォームは、BMWのFRシリーズ共通のCLARモジュラー・プラットフォームだが、ボディ骨格の作り方は大幅に革新されている。さらにサスペンション・アーム類もアルミ鍛造材を多用し、バネ下重量の軽量化も行なわれている。
サスペンションのダンパーには、BMWとしては初の「ハイドロリック・リバウンドストップ・ダンパー」が採用されている。これは、いわゆるダンパー inダンパーと呼ばれ、バンプストッパーの手前から油圧減衰機能を発生させる機能を持っている。つまり大ストローク時でも車両姿勢が乱れず、懐の深いハンドリング性能を引き出す役割を持っている。もちろん上級モデルには電子制御の連続可変ダンパーも装備される。
フロントのバルクヘッドより前方のフロント・サイドフレーム/ストラットタワー部は大型のアルミ材で、フロント部分の軽量を行なっている。バルクヘッド部とアルミのフレームはセルフピアシングリベット(SPR)で結合されている。なお事故修理の場合にバルクヘッドとフロント・アルミフレームを結合するには一般的なブラインドリベットを使用する。
ボディサイズは、全長4709mm、全幅1827mm、全高1442mm、ホイールベース2851mm(いずれもヨーロッパ仕様の表記)で、全長はF30型より85mm、全幅は16mmサイズアップしている。
搭載されるエンジンは、2.0L・直列4気筒直噴ターボエンジンだ。呼称は「B48B20」型ツインパワーターボで、従来からのエンジンのテクニカル・アップデート版とされている。330i用は258ps/400Nm、320i用は192ps/320Nmと想定される。テクニカル・アップデートとは、燃費、排ガスレベルを従来より高め、ガソリン粒子フィルターも備えていることを意味している。
ディーゼルは、318d、320d、直列6気筒の330dがラインアップされている。日本に導入されるのは320dと予想される。3シリーズのトップグレードは高出力の3.0L・Mパフォーマンス直列6気筒エンジンを搭載するM340iもラインアップされ、さらにプラグインハイブリッドの330eも登場する。このプラグインハイブリッドのバッテリーでのEV走行距離は60kmとなっている。
新型BMW 3シリーズは、ボディ、シャシーの造りが大幅に進化していること、日本導入モデルは完全な日本オリジナルモデルと呼んでも良いほど特別な仕様になっており、特にドライバー支援システムは上級クラスのシステム並みにアップグレードされている。新型3シリーズはBMWにとって画期的な、攻めの姿勢を示すニューモデルと言えるだろう。日本への導入は2019年初夏頃と想定されているが、その仕上がりは大いに期待できる。
新型BMW 330i 諸元表
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