三つ巴のチャンピオン争いとなった2023スーパーGT第8戦のGT500クラス。16ポイント差から奇跡の逆転を狙った16号車ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)は、わずかな可能性を信じてさまざまな戦略を繰り出すも、展開が味方してくれず、12位で今季最後のレースを終えた。レース後のドライバーふたリに聞いた。
ランキング首位の36号車au TOM’S GR Supraに対して16ポイント差の同3番手で最終戦を迎えた16号車。逆転チャンピオンのためには、優勝することが第一条件となっていたが、予選では0.005秒差で9番手となり、Q1敗退。優勝への道が遠くなってしまった。
決勝では、トップに立つ可能性を少しでも見出すべく、燃費走行も意識しながら後半までピットストップのタイミングを遅らせたが、レース展開が味方せず。終盤に雨が降り出したところでウエットタイヤに交換して追い上げを試みるも、ポイント圏内に届かず、12位でレースを終えた。
「少ないチャンスにかけて、いろいろなシミュレーションをして臨んだのですけど、僕たちが今回選んだタイヤのマッチングがあまりよくなかったですし、それに対するセッティングも合わせきれなかった部分もありました。チームとしては最大限やってくれていたのですけど、他車に比べると劣勢で難しかったですね」
そう語るのは、スタートスティントを担当した大津弘樹。後半まで引っ張る作戦も、セーフティカーやFCY(フルコース・イエロー)導入の直前にピットに入ってタイムを稼ぐという狙いもあったとのこと。
「想定ではペースは良いはずという思いもありました。(ピットを)引っ張って、そういうチャンスもあれば良いなと思いましたし、ずっと燃費走行をしていたので、最後は給油時間を短くして前に出られるようにしようということも考えていましたが、難しいレースでした」
「戦略的には、ちょっと“勝ち”を意識しすぎた部分が正直あったので、もう少し手堅く、周りと同じ戦略でいっていれば、もう少し前でゴールできたかなというところはあるのですけど……僕たちはそれを選んだので、しょうがないです。結果論ではありますけど、(勝負をかけた戦略が)当てはまらなかったのは悔しいです。今年の集大成のレースとしては、あまりうまくいかなかったなというのがありました」と大津は、肩を落としていた。
全体の3分の2に到達する41周目までコース上に留まった16号車。ピットストップでは少しでも可能性を見出すためにタイヤ無交換作戦を選んだが、これも終盤に雨が降ったことで流れを引き寄せることができなかった。この時の状況について、後半担当の福住仁嶺が語る。
「途中で雨が降ってきたときは、僕たちは無交換の作戦で(タイヤの)グリップが落ちていましたし、周りと比べても僕たちのタイヤは剛性が少し硬めだったので、(雨の中を)スリックで走ったらペースがかなり落ちてしまいました」
「周走ってピットに入りましたけど、もう少し早めに入っていればポイントを獲れたかもしれません。そこの後悔もありますし、NSX-GT最後のレースなのにも関わらず、うまくレースが出来なかったので、非常に悔しいです」
福住も大津と同様に、逆転のチャンスをかけて選択したこと言いつつ、悔しい表情をみせる。
「勝負権がない位置を走っていたこともありますが、チャンピオンを獲るためにこういう事をしないと獲れないという状況でもありました。ただ、そこばかりを考えてしまったところはありました。着実にポイントを獲るようなレース運びを考えた方が良かったのかなと……結果論ですけどね」
「そもそも自力のペースがないと、そういうチャンスがないというのは分かっていたのですけど、昨日から調子も良くなかったし、チョイスしたタイヤも良くなかったのかなと……。結果論なので、なんとも言えないですけど、ちょっと選択を誤った部分もあったなと思います」
最終的にシリーズランキング4位で終えた16号車。今季はARTAとTEAM MUGENの初タッグで誕生した新体制というところで注目を集めていたが、山あり谷ありのシーズンだった。
改めてシーズンを振り返った大津は、「本当に波の多いシーズンでした。(福住)仁嶺選手と組んで、素晴らしいドライビングと速さに助けられましたし、すごく良いコンビネーションで、戦うことができました。すべてが噛み合った時はすごく速かったですが、逆にペナルティやミスで落としたレースが多いなかでチャンピオン争いができた。そういう意味では、もっといろいろなことを積み重ねて手堅く戦えればチャンピオンが見えてくるのかなと思いますけど、いろいろと噛み合うレースが少なかったというのが、正直なところです」とコメント。
福住も「今年は体制が大きく変わって、相方が大津(弘樹)選手になりました。スクール時代からの同期で、大津選手の方が年上ですけど親しくしてもらっていますし、楽しく過ごしながらも結果を残すことができました。前半はもったいないレースが多かったですけど、そういうこともなければ、今シーズン(の流れ)も変わってきたのかなと思いますし、僕たちがチャンピオンを獲れるポテンシャルというところで言うと、今回は厳しいレースでしたけど、パフォーマンスとしては悪くなかったと思います。また挑戦したいです」と、来季に向けた決意を新たにしていた。
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