全7戦で争われる2021年のスーパーフォーミュラは、ちょうどその折り返し地点である第4戦SUGOまでが終了した。現在のポイントリーダーは、開幕2連勝をマークした野尻智紀(TEAM MUGEN)。第3戦オートポリス終了時、野尻はランキング2番手の平川亮(carenex TEAM IMPUL)に対して実に25点ものリードを築いていたが、その平川が欠場した今回のSUGO戦を終えて、ランキング2番手には17点差で大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)が浮上してきた。依然野尻の大量リードであることに変わりはないが、決して油断できないような状況になってきた。
平川に代わって野尻の対抗馬筆頭に躍り出た大湯。彼は7番グリッドからスタートしたSUGO戦の序盤で3番手までジャンプアップすると、ピットウインドウがオープンとなってすぐのタイミングでピットイン。タイヤ交換に手間取り10秒ほどタイムロスしたにも関わらず、そこからは自他共に認める“気迫の走り”でプッシュし、ファステストラップも更新した。そして20周目の1コーナーでは、タイヤを替えたばかりの関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)に接近して鮮やかにオーバーテイクし、事実上の2番手に浮上すると、最終的に2位でフィニッシュし15ポイントを加えた。
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関口をオーバーテイクしたシーンについて「あそこしかないと思っていました」と語る大湯。曰く、お互いタイヤが温まりきった状態でのマシンパフォーマンスに関しては、ライバルたちに分があると感じていたようで「あそこで抜けなければ(両者の)タイヤが温まって離される一方だったと思います」と付け加えた。
ピットストップでのロスがなければ優勝にも手が届きそうな展開だっただけに悔しさがあるのでは? と尋ねられた大湯は「チームもこれを糧に次から見直しをしてくれると思いますし、そのおかげで他よりも良いピット作業ができるようになれば、ピット作業のおかげで前に出られる、ということもあるかもしれません」とポジティブな一言。インタビューの合間にも、チームスタッフが大湯にピットでのミスを謝罪する一幕もあったが、大湯は「僕も散々やらかしてるんで」と笑い、スタッフを気遣う姿勢を見せた。
ここからの2戦は、ツインリンクもてぎでの連戦となる。そのため、もてぎとの相性はタイトル争いの行方を大きく左右すると思われるが、大湯は今後の展望について次のようにコメントした。
「もてぎはチームとしてもイメージは悪くありません。去年は暑い時のホンダ勢の調子が良くない、ということがありましたが、少なくとも予選に関しては良いイメージです」
「今はチーム一丸となってレースペースが厳しい原因を探っています。でも今回はちょっと良かったですよね。いつもの状態なら、確実に関口さんに抜かれていると思います。少なくともここSUGOで、何とか耐えられるレースができた事はポジティブですし、次のもてぎにも繋がると思います。ですので、わりと自信があります」
全日本F3(現スーパーフォーミュラ・ライツ)時代にも、もてぎで好成績を残しており、個人的にも良い印象があるという大湯。一方追われる立場の野尻は、もてぎ戦について慎重なコメントを残しており、これは今後のタイトル争いに向けて興味深い点のひとつでもある。野尻は6位に終わったSUGO戦の後、次のように語っていた。
「もてぎはなかなか難しいサーキットで、セットアップをどこにフィットさせるかが難しいです。ちょっと考えないといけません」
「(もてぎでの)過去の成績はあまり良くありません。ただ良い成績を残さないとチャンピオンシップどうこう言っていられなくなるので、もてぎでも必ず良いレースができるようなクルマにしたいです」
なお、今回のSUGO戦でSF初優勝を飾り、野尻、大湯に次ぐランキング3番手に浮上した福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)も、大湯同様もてぎに好印象を持っており、「僕自身得意だと思っている」と自信ありげなコメントを残していた。大湯と福住は「追う者の強さ」に「得意コースのアドバンテージ」を加えることで、さらに力を増して野尻に挑みかかってくるだろう。
数字上では、依然として野尻が圧倒的優位となっている2021年スーパーフォーミュラのタイトル争い。しかし、もてぎの地で王座戦線にもう一山起こるかもしれない。
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