この記事をまとめると
■工業製品などにはベンチマークと呼ばれる水準点になるモデルが存在する
フォルクスワーゲンを代表する車種「ゴルフ」はなぜここまで愛されるのか
■欧州車ではフォルクスワーゲンのゴルフがベンチマーク的存在だ
■国産車ではハイブリッドカーの先駆けである初代プリウスが当てはまる
各メーカーが目指したベンチマーク的存在
ベンチマークとは、本来は測量の際に水準点(標高の基準となる地点)となる場所を指す言葉だ。ここから、事業などで、手本とする製品などに使うようになった。クルマでは、競合する車種同士で、「これには追い付きたい」あるいは「これを追い越したい」というような、目標となる一台を指す。有名なのは、「小型車の規範」と長年にわたり世界でいわれ続けたフォルクスワーゲン(VW)ゴルフではないだろうか。
ゴルフは、それまでのタイプ1(通称ビートル)の後継車として、1974年に誕生した。車体の全長は3.725m、車幅は1.610m、全高は1.410mである。これは、ビートルの全長4.070m、全幅1.540m、全高1.500mにほぼ近い。それでいて、ビートルがRR(リヤエンジン・リヤドライブ)であったのに対し、ゴルフはFF(フロントエンジン・フロントドライブ)という真逆の手法を採用した。
ビートルが第二次世界大戦前の設計であったが、ゴルフは戦後の設計であり、外観を含め、自動車技術の点でも大きな進歩があったことが、大転換の背景にあるだろう。
ゴルフより前、1959年には英国のBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)から初代ミニが、また72年には日本のホンダが初代シビックをそれぞれFFで打ち出した。それでもゴルフが世界のベンチマークとなったのは、日本でいう5ナンバーの小型車として無駄のない空間の活用法と、FFが当時はまだ操縦安定性で特異な性格を残していたが、ドイツのアウトバーンを高速で走れる運転のしやすさを備えていたからではないだろうか。
そのあとも、環境対応としてのダウンサイジングターボや、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション。VWではDSGと呼んだ)の採用など、ゴルフから競合他社へ広がった技術を率先して採用してきた経緯がある。
日本車では、トヨタのプリウスが、今日の世界的なハイブリッド車(HV)普及の第一歩を印し、ベンチマークになったといえるのではないか。しかし実際は、プリウス登場以前にもハイブリッドという手法は考えられてきた。ハイブリッド方式に、シリーズ式やパラレル式があることは、それを明らかにする。
そのうえで、市販量産車として、なおかつシリーズ・パラレル式という独自の手法で世に問うたのが初代プリウスだ。開発の目標は、同じ車格の小型車で、燃料消費を半分に減らすこととした。ハイブリッド以外で、燃料消費を半分にしながら、従来と変わらぬ走行性能を満たすのはまず無理であっただろう。ただし当初は、欧州など、より日常的な走行速度の高い地域で期待通りの燃費性能とならない弱点があった。しかし、エンジンとモーターの制御などを改善することで、高速域でも燃費を落とし過ぎない改良が進んだ。
そもそも、エンジンとモーターというふたつの動力を備え、ガソリンと電池という2種類のエネルギーを同時に車載する発想自体、当初は非現実的と考えられた。ことに欧州の自動車メーカーは否定的だった。しかし、1997年の発売以降29年を経たいまは、新型車=HVであることが最低限の条件になってきている。
ハイブリッド方式の違いはあっても、もし、プリウスが登場していなければ、HVを当たり前に思える時代はもっと遅れていたかもしれない。プリウスがあったからこそ、競合他社は奮起したのではないだろうか。
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