輸入車 [2025.05.13 UP]
ベントレーとサーフィンの意外な接点【九島辰也】
文●九島辰也 写真●ベントレー
ベントレー「ベンテイガ」職人技が光る限定モデル マリナー伝統の5色が復活
ベントレーからサーフボードを作ったというニュースリリースが届きました。16歳の時から50余年以上サーフィンを楽しんできた身からすると、興味津々のニュースです。ただ、自動車業界ではありませんが、これまでもグッチやシャネルのマークの付いたボードを見たことがありますから、ハイブランドとしては珍しくありません。まぁ、実際に海で見かけることはないので、ディスプレイ用として使われるのが通例でしょう。機能性は期待できませんし。
ですが、今回ベントレーが行ったのはマーニーレイズとオッターサーフボードとのコラボレーション。マーニーレイズに関しては詳しくわかりませんが、オッターサーフボードはウッド素材限定のサーフボードブランドです。その意味ではクラシックスタイルのボードであることは間違いなさそうですね。
なぜなら現在サーフボードはウレタンフォームをベースにし、そこにガラスクロスを巻いて樹脂を流してラミネート加工、それを何度かコーティングして作られます。要するにウッドは使わない。それこそかつてはマホガニーやユーカリの木から削り出していましたが、今ではそうしたボードはスタイルでしかありません。ゴルフで言い換えればヒッコリースタイルといったところでしょう。
ちなみに、このウレタンフォームの削り方がキモになります。長さや形、ロッカーの角度でどんなボードになるかが決まります。メローな波用なのか掘れたビッグウェーブ用なのか、とか。それにハンドシェイプとかマシンシェイプとかで、性格や値段が変わります。そこはシェイパーの腕の見せ所ですね。こんな話をしていると、ハワイやカリフォルニアあたりのレジェンドシェイパーの顔が浮かびます。
サーフボードの製作にあたっては、クルーにあるベントレー用のストックから素材が厳選された
ではベントレーの役割はというと、素材となるウッドを選びベースとなる部分の加工を施します。彼らの持っているノウハウを活用する過程です。ただそこに使われるウッドベニアを模ったり貼り合わせたりする伝統技法はミュルザンヌの生産終了以降眠っていたそうです。もったいない話ですよね。ミュルザンヌでしか使われていなかった技術とは。ぜひコンチネンタルGTシリーズやベンテイガの内装にも使っていただきたい。まぁ、今思うとそれだけミュルザンヌが特別だったということでしょうが。ウッドベニアの加工部屋は、今は使われていないそうです。
ただ、以前英国クルーにあるファクトリーを訪れた際に、ウッドベニアの保管室に入ったことがあります。文字どおり厳選された木材が棚に並んでいたのですが、とてもいい香りだったのを覚えています。まるで森林浴をしているような空気が充満していました。ベントレーらしい伝統を重んじるスタンスを感じます。
クラフトマンシップと冒険心の体現をテーマに行われた今回のコラボレーション。完成したサーフボードはチャリティーオークションを通じて販売された
それにしてもベントレーのスタッフの技術力は高いと思います。というのも彼ら職人たちはウッド素材を用いてファニチャーも作るからです。ロンドンのナイトブリッジ近くにあるプライベートダイナー“MOSIMANN’S”のベントレールームでそれを見ました。ダイニングテーブル、チェア、チェストが部屋に並びます。素材はマホガニーだったような。チェアに貼られたレザーは高級感たっぷりでした。クオリティが高いのはクルマの内装譲り。ウルトラ高級家具メーカーとしてもやっていけそうな仕上がりです。
ということで、今回はベントレーがサーフボードを手がけたというニュースでした。出来上がったボードはSurfability UKに寄贈され、その後オークションに出品。その収益は同団体の活動資金に充てられるそうです。社会貢献のプロジェクトですね。
ところで、あまり知られていませんが英国は島国なのでサーフィンのポイントは多くあります。ドーバー海峡側と南向きのコーストラインがそうです。でも寒いので世界中のサーファーがそこを目指すってことはありません。どうせヨーロッパで海に入るなら、サーフィン保護区に指定されるポルトガルのナザレ地区に行った方がいいでしょう。ボードもウェットスーツもみんなレンタルできますから身ひとつで楽しめます。興味のある方はぜひどうぞ。リスボンからレンタカーでひとっ走りです。
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