F1カタールGPではタイヤにまつわる急転直下の出来事が発生。タイヤへのダメージが想定以上だったことを受けて、スプリント・シュートアウトに先立って練習セッションが追加されることとなり、決勝レースでは3ストップが義務付けられる可能性も浮上している。
タイヤにまつわるドラマといえば、2005年のF1アメリカGPを思い出す人も多いだろう。
■今年のF1カタールGPも、タイヤにとってはピンチ! 金曜日走行後にトラブルの兆候発覚。追加で10分の練習走行が決定……スプリントシュートアウトは20分後ろ倒しに
インディゲートとも呼ばれるこの事件では、ミシュランタイヤを履くトヨタのラルフ・シューマッハーがプラクティスでタイヤバーストによって大クラッシュ。タイヤに構造上の問題が見つかり、ミシュランタイヤ勢はフォーメーションラップを走っただけでリタイアすることを選択した。結果としてフェラーリ、ジョーダン、ミナルディの計6台のブリヂストンタイヤ勢のみがグリッドに並ぶという、F1史に残る未曾有の事態となった。
タイヤ戦争が行なわれた当時とは異なり現在はピレリによるワンメイク制のため、カタールGPでの問題は全チームに影響を及ぼした。FIAはスプリント・シュートアウトを前に緊急時対応策を講じた。
この問題が明らかになったのはカタールGP初日の夜、ピレリがFP1終了後にチームから返却されたタイヤの分析を行なった後のことだった。
タイヤに目に見える問題はなく、FP1と予選セッション後にも各チームからピレリに問題が報告されることはなかった。
いつも通りのプロセスとして、ピレリはタイヤをカットしてサンプルを回収し、より詳細な検査を実施。そこで20周以上周回を重ねた複数のタイヤに問題が発見されたのだ。
この件はすぐさまFIAに連絡が入れられ、シングルシーター部門の責任者を務めるニコラス・トンバジスがタイヤの状況を確認し、対応策が練られた。
FIAから発表された声明では、問題について次のような説明が行なわれた。
「多くのタイヤでサイドウォール部分のトッピングコンパウンドとカーカスコードの間に亀裂が確認された」
「FIAとピレリの見解では、これらのタイヤでかなりの周回数を重ねると、タイヤの円周方向にダメージが生じ、空気が抜ける症状が発生する可能性がある。ラップ数の少ないタイヤを分析したところ、問題の程度はかなり軽減されていた」
GPDAのチェアマンを務めるアレックス・ブルツは、この問題の深刻さを示すため、特別会議としてドライバーたちを招集し、安全への影響について話し合った。
実際、F1初開催となった2021年大会ではタイヤの問題が発生しており、今年は走行前から、変更を受けたターン12~23の縁石に関してチームやドライバーから懸念の声が上がっていた。
FIAの発表によると「この問題は、タイヤのサイドウォールとこのサーキットで広く使用されている50mmの『ピラミッド』型縁石との間の高周波干渉によって引き起こされた可能性が高く、縁石に乗りやすいという傾向により、その兆候がさらに悪化した」とのことだ。
ダメージは主にフロントタイヤに見られたが、リヤタイヤにも同様の症状が確認されたという。またダメージは左タイヤだけでなく右タイヤにも見られ、興味深いことにサイドウォールの内側と外側の両方にダメージが確認されたという。
サイドウォール外側が縁石のエッジ部分に当たった状態でマシンを走らせたり、50mmの縁石にタイヤが乗った状態でマシンを走らせたりすることでサイドウォールが内外から衝撃を受け、それが何周にも渡って続くことで、パンクのリスクが高まるということだ。
FIAは対策として、タイヤへのダメージの大半を占めると思われるターン12~13のトラックリミットを調整することで、マシンがワイドに走れないようにすることとした。
そのため、スプリントシュートアウトの前にはドライバーが慣れるために10分間の練習セッションが追加で設けられることとなった。
19周で争われるスプリントの後にはさらなるタイヤの分析が行なわれ、その結果次第ではレース中に新品タイヤは20周を超えて使ってはならなくなる可能性がある。すでに使用済みのタイヤを使う場合は、予選のイン&アウトラップを考慮して合計22周までに制限されるという。今回の決勝レースは57周と決まっているため、この使用制限周回数が指定されれば、全ドライバーが最低でも2回ピットストップする必要があるが、全ドライバーに3ストップを義務付ける可能性もあるとされている。
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