アーティストのYOSHIROTTENが今一番気になる相手と大好きな蕎麦屋で対談するという連載。3回目の対談相手は、ギャラリストの南塚真史だ。
国内外でグラフィック、映像、インスタレーションと幅広い活躍を見せるアーティスト・YOSHIROTTEN。謎に包まれた彼が唯一オフになれる場所だというのが蕎麦屋だ。そんな蕎麦好きの彼の蕎麦屋リストから今宵はどこに向かうのか。第3回は、「NANZUKA UNDERGROUND」のオーナー・南塚真史さんを迎えて原宿にある「勢揃坂 蕎 ぎん清」で実食。
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YOSHIROTTEN(以下、Y) 昨年11月に上海のアートスペース「NANZUKA ART INSTITUTE」のグループ展示に参加して以来ですね。初日のアフターパーティで自分もDJとして参加しながら、クラブにH.R.ギーガー、空山基さんの作品、そして自分の映像作品が流れている光景は異様でした。
南塚(以下、N) 上海のクラブってあんまり人が踊らなくて新鮮だった。賑やかに騒ぐというよりも、純粋に真面目に音楽を楽しんでいる雰囲気だったよね。
─おふたりの最初の出会いは?
Y 出会う前から、もちろん渋谷の地下にあった頃の「NANZUKA UNDERGROUND」 (注釈)の展示には行ってましたけど、直接お会いするきっかけになったのは、銀座「ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)」での山口はるみさんの個展の際にお声がけいただいたことですね。「NANZUKA UNDERGROUND」を始める前は何をしてたんですか?
N 学生。美術史学という学問を10年近く学んで、アカデミズムをドロップアウトして、2005年にギャラリーを始めた。隣に宇川さんと他社比社の「Mixrooffice(マイクロオフィス)」というスタジオがあって、制作して展示してパーティーをするという画期的なコンセプトスペースだった。
Y 僕も「Mixrooffice」界隈の友人たちとよく遊んでいました。宇川さんとは最初どこで出会ったんですか?
N 学生の時、クラブで遊んでる中で、 宇川さんがVJをしているパーティに行った時に紹介してもらったのがきっかけ。そこから宇川さんがフェス「メタモルフォーゼ」とかFUJI ROCKなどのイベントに出るたび、一緒にパスで入らせてもらったり、よくしてもらったり。一言でいうと師匠です。
Y 田名網(敬一)さんとの出会いも、宇川さんからのご縁なんですか?
N そうだね。宇川さんに紹介してもらって、田名網のスタジオに入り浸って口説き落とし、作品を観て、新作の個展を開きましょうという流れになった。
Y 学生の頃から、ギャラリーをやることは考えていたんですか?
N あんまりなかったかなあ。でも、教授からは僕が研究しているテーマでは就職先がないとは言われてた。美術史って、基本的に他界しているアーティストのことを研究する歴史学的なんだけれど、自分は生きているアーティスト、そしてアートと社会との関係性に興味があったんだよね。例えば、山下清さん。今では、広く日本人には芸術家として認知されているけど、当時本人に芸術家としての意識はなく、精神病理学者が興味を持って作品として発表したことが起点になった。一方で、世間から人気を得る話は、美術の本質的な意識と美術史の学問とは全く繋がっていないんだよね。美術史という学問においては、山下清の作品が美術史の本流といかに前後関係や影響関係があったかが重要で、そうでないと研究対象にならない。でも、当時の自分は本当にそこに価値はないのかということを研究テーマにしていた。学生の頃は遊んでばかりだったけど、振り返ってみればNANZUKAの姿勢は当時から変わっていなくて、イラストやグラフィックデザインがアートの下の概念だという常識ってなんで?と思ってた。
Y ある意味、カウンターですよね。
N 単純に、漫画とかゲームとか含めたサブカルの方がかっこいいと思ってたんだよね。デザインでもイラストでも、社会学的な観点や比較文化的な観点で文脈を語ることができれば、それもまたアートの学問の一つとして負けない価値があるのではないかと。そんなわけで、田名網敬一にもペインティングは描けるし、それを世界に売り出せば、絶対に勝てるだろうと無知な確信を持っていた。でも、もちろん最初から売れるわけではなく、売るためにはアート界の信用評価がとても大事なんだということを、ギャラリーを始めた後で、学んでいった。だから、27歳当時の始めたばかりの自分は全然そこまで計算せずに、怖いもの知らずに始めたところがある。
Y 僕が今回「勢揃坂 蕎 ぎん清」を選んだ理由は、独立してすぐに使っていた共同事務所から近く、ひとりでよく通っていたこともあるのですが、立地もNANZUKAに近いからです。
N 田名網も蕎麦が好きだったな。
Y 蕎麦屋は僕にとって、瞑想する時間のような空間なんですよね。南塚さんにとってそういう場所ってありますか?
N 釣りかな。基本的にそんなに釣れなくて、かといって釣りすぎてもあんまり面白くなくて。釣れない間に、どうやったら釣れるか考えるんだけど、意外と作品をどうやって売るかという思考に似て、面白いんだよね。事前に考えて行っても現場ではそうもいかず、現場の様子にあわせて臨機応変に作戦を変えて試してみるという一連の流れがわりとあらゆるビジネスメソッドに似ている気がする。例えば警戒心が強い真鯛って、餌をまいて他の魚が食いつくなかで下に落ちてくるものを辛抱強く待って食べていく習性がある。そうした真鯛に対して、釣り竿一本で食いつかせるというのが難しいんだけど、色々と考えた結果、達成した時がすごい嬉しいんだよね。特に海はもう見えない世界の話だから、海の環境やコンディションなど釣りをする間に、色々と想像すること自体が楽しい。
Y たしかに、目には見えない世界を想像することは楽しいですよね。あ、板わさと蕎麦が来ました。ここではつゆはもちろんのこと、お塩で蕎麦を食べるのが美味しいんです。
今月のゲストと蕎麦屋SHINJI NANZUKA 1978年生まれ、東京都出身。2005年渋谷に「NANZUKA」を設立。現在は、渋谷区神宮前の「NANZUKA UNDERGROUND」、渋谷PARCO内の「NANZUKA 2G」、鮨レストランとギャラリーとの異業種コラボレーションで誕生した中目黒の「3110NZ by LDH Kitchen」の3つのスペースを運営し、展示企画を行う。
勢揃坂 蕎 ぎん清2011年に青山の小路にオープンした蕎麦屋。毎日亭主が打つ、自家石臼挽きのそば粉を使った二八蕎麦を都会の喧騒を忘れる空間で味わえる。YOSHIROTTENの拠点が原宿の時代によく通い、頼むのはいつも、天もりそば。
東京都渋谷区神宮前2-3-10 ヒルトップ神宮前ビル 1F
営業時間:11:30~13:45、18:00~21:30 ※水・土は夜のみ営業
定休日:日・祝
YOSHIROTTEN(ヨシロットン)ファインアートと商業美術、デジタルと身体性、都市のユースカルチャーと自然世界など、複数の領域を往来するアーティスト、アートディレクター。代表を務めるクリエイティブ・スタジオ「YAR」では、商業において視覚芸術が関わるほぼ全ての範囲の仕事を手掛けている。
PHOTOGRAPHS BY KODAI IKEMITSU
WORDS BY YOSHIKO KURATA
EDITED BY KEITA TAKADA (GQ)
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