瀬戸内、金沢、前橋、東京と、世界のアート好きがそこを目指してやってくるアートスポットがある。そしてその多くの“場”を作っているのはコレクターたちだ。日本を世界有数のアートディスティネーションにしたコレクターたちに、その場所に込めた想いを聞く。4回目は、UESHIMA MUSEUMの植島幹九郎だ!
多様な現代美術のコレクションをシェア2024年、渋谷に開館したUESHIMA MUSEUMは、植島幹九郎のコレクションミュージアムである。その核となる彼のアートコレクションは、非常にバラエティに富んでいるのが特徴だ。アグネス・マーティンやダン・フレイヴィンなどミニマリズムの作家や、アンディ・ウォーホル、ロイ・リキテンスタインなどポップアートの旗手たち。ダミアン・ハーストやトレイシー・エミンといったYBAsの作家たちも名を連ね、杉本博司や村上隆などスター級の日本人アーティストも。加えて、ロッカクアヤコや山口歴、森本啓太など近年マーケットで高い評価を得ている中堅から若手の日本人作家も揃う。
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現代アートの魅力にすっかり取り憑かれているような植島だが、興味を持ったきっかけは何か。そう尋ねると、彼はこの美術館にも作品が収蔵されているゲルハルト・リヒターの名を挙げた。「東日本大震災があった後、ボランティアで被災地での炊き出しに参加したんですね。そこで世界各地で災害支援や難民支援を行っているピースウィンズ・ジャパンの大西健丞さんと出会いました。大西さんは瀬戸内海の無人島であるに美術館を持っていて、そこにリヒターの作品《14枚のガラス》を展示しているんです。聞けば、自身の支援活動を通してリヒターと出会い、彼が豊島の自然や風景を気に入り、自らの作品を恒久展示することを承諾したそう。そして、それが今では観光資源にもなっていると。私は、学生時代に起業し、ビジネスに没頭する日々を送っていましたが、アートという手段を通じて、社会とのより深い関わり方があることに気づきました。その後、ニューヨークでリヒターの個展を見る機会があって、いつか彼の作品を購入したいという想いがありました」
2016年ごろから自宅で愛でる程度にアートを買いはじめたが、本格的に蒐集しはじめたのは2022年ごろから。事業も拡大し、オフィスなど作品を飾れる空間も増えたのがきっかけだ。「その過程で、ギャラリストやアーティストと会い、話す機会も増えました。そこでみなさんが口を揃えて言うのは、作品を買ってくれるのは嬉しいけど、中には展示されず倉庫に眠ったままになってしまうケースもあり、非常に残念だということ。やはり展示され、人に見てもらうことにアートの価値がある。そういう声もあって、まず自分の持っている作品をUESHIMA COLLECTIONとして、写真と解説付きでオンラインで公開する活動をはじめました」
次第にアートフェアやオークションハウスから声がかかり、それらの会場で企画展のように作品を展示する機会も増えていく。美術館をつくったのは、そうした所有する作品をより多くの人とシェアしたいという思いが根底にあるようだ。「もうひとつは、美術教育への貢献ですね。この建物は渋谷教育学園の敷地内にあり、もともとブリティッシュスクールでした。その跡地の活用方法として美術館を提案したのです。今では、美術の授業などでもここを利用してもらっています。レガシーを踏まえて貢献できることはオープンに行っていきたい」
コレクションは多様だが、デジタルアートやAIを使った新しいタイプの作家の作品があるのも興味深い。それは、もともと物理学に熱中した植島自身の嗜好性も関係しているように思われる。「宇宙の起源ってどうなっているのだろうとか、光の速度で自分が動いたら鏡に映るのかとか、そういうことを問いにし、探求することが好きでした。それに似た感覚で、アーティストが作品に込める問いやアイデアを面白いと感じる部分もありますね」
この1月には、千駄ヶ谷にもうひとつのスペースUESHIMA MUSEUM ANNEXを開いた。同時期に東京オペラシティ アートギャラリーで今津景の個展が開催されることを知り、もともとビューイングスペースだったその場所で、自身が持つ今津作品を見せようと考えたのが契機だ。
加えて4月下旬には、キュレーターの長谷川祐子に依頼し、本館と別館であるANNEXの展示替えを行う。「まずは長谷川さんにコレクションを全部見ていただいて、そこからどんなテーマでどういうふうに展示するかは、お任せするかたちです。長谷川さんのような著名なキュレーターに、自分のコレクションをどのように解釈し、形にしていただけるのか、その過程も含めて非常に楽しみにしています」
近々にはジェームス・タレルの作品もコレクションに加わり、展覧会で公開していく予定だという。「タレルを含め、世界的に知られる作家の作品を渋谷というアクセスの良い場所で一度に見られるようにすることは、現代アートとのタッチポイントを拓くという意味で、非常に重要なことだと思うんです。特に渋谷は世界中から人が集まるグローバルな地。UESHIMA COLLECTIONには、日本人作家の作品も少なくありません。そういった日本の作家を国外の人に知ってもらう場としてもここが機能すれば嬉しいですね」
単一周波数ランプを使い、空間内で人間が肉眼で認識できる色域を黄色だけに変えてしまうオラファー・エリアソンの《Eye see you》。UESHIMA MUSEUM(東京都渋谷区渋谷1-21-18)では、特別な個室をつくり、その繊細な作品を体験できるようにした。ueshima-museum.com
植島幹九郎/Kankuro Ueshima1979年千葉県生まれ。1998年渋谷教育学園幕張高等学校卒業、東京大学理科一類入学。東京大学工学部在学中に起業し、事業家・投資家として多角的にビジネスを展開している。2024年6月に自身のコレクションを展示する「UESHIMA MUSEUM」を、今年には別館を千駄ヶ谷に開館した。US版ARTnewsのTOP 200 COLLECTORS 2024に選出。
PHOTOGRAPHS BY SATOSHI NAGARE
WORDs BY MASANOBU MATSUMOTO
EDITED BY KEITA TAKADA (GQ)
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