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鈴鹿の無念を晴らすレッドブル・ホンダのダブル表彰台。王者に向けた総力戦とホンダホワイトの結束

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鈴鹿の無念を晴らすレッドブル・ホンダのダブル表彰台。王者に向けた総力戦とホンダホワイトの結束

 2021年F1第16戦トルコGPでレッドブル・ホンダはダブル表彰台を獲得した。本来ならこの週末、彼らは鈴鹿サーキットでホンダの母国レースを戦っているはずだった。その無念を少しでも晴らすかのように、マシンは往年のホンダホワイトに全面変更された。

 これは1965年メキシコGPで劇的優勝を遂げたRA272を模したカラーリングだ。さらにマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)も、当時の雰囲気あふれるレーシングスーツを着用した。

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「白いスーツのふたりが表彰台に立ち、その下には同じように白いマシンが2台並んでいた。ちょっと感慨無量でしたね」

 そう語る表彰台下のホンダF1山本雅史マネージングディレクター(MD)は、レッドブル首脳陣とともにこの結果を素直に喜んでいた。

 優勝こそ逃したものの、苦戦が予想されたイスタンブールで今季2度目のダブル表彰台。さらにルイス・ハミルトン(メルセデス)が5位に終わったことで、フェルスタッペンが再びタイトル争いの首位に立った。

 ハミルトンが初日から見せた圧倒的な速さからすれば、エンジン交換ペナルティによる11番グリッドスタートから一気に表彰台まで駆け上がっていた可能性は充分にあった。それを全力で阻止したのがペレス、そしてアルファタウリ・ホンダのふたりのドライバーだった。

 霧雨の降るなか、レースは全車が浅溝のインターミディエイトタイヤ装着でスタートした。1周目で9番手に上がったハミルトンは、一気に角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)の0.5秒差まで迫った。しかしそこから延々7周、角田はハミルトンの猛攻を防ぎ続けた。

「僕とツノダでは、目指すものが違った」と、ハミルトンは接触を避けて慎重なアプローチを取ったことをレース後に強調していた。しかし角田の名誉のために言うなら、彼はことさら露骨なブロックラインなどは取らず、あくまでハミルトンに隙を見せない走りに徹した。その結果、8周目にハミルトンが8番手に上がったとき、2番手フェルスタッペンとの差はすでに17秒にまで広がっていた。

 惜しむらくはこの攻防でタイヤを使いすぎたことが、23周目の痛恨のスピンの遠因になった可能性があったことだ。レーシングドライバーの本能からハミルトンを抑えたのだろうが、対照的にピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)はタイヤマネジメントを最優先し、ほぼ無抵抗のままハミルトンを抜かせている。

 しかし終盤、6番手のガスリーは3番手のハミルトンよりコンマ5秒以上速いタイムを刻み続けた。これがタイヤ無交換で表彰台を狙っていたメルセデスを混乱させ、せめてガスリーの前でコース復帰できるギリギリのタイミングになってやっとピットインを指示したことで、結果的にハミルトンは5位入賞に終わった。

 3位表彰台のペレスの貢献も大きかった。中盤の攻防では最終コーナーでいったん先行され、ピットレーン入り口まで幅寄せされながらも譲らず、ターン1で抜き返す。この間にハミルトンのペースが大きく落ちたおかげで、36周目にピットインしたフェルスタッペンは、ハミルトンの3.8秒前でコース復帰に成功した。

 あそこでハミルトンに先行されていたらメルセデスに1-2勝利を許し、タイトル争いでの再逆転もなかったかもしれない。ホンダドライバーが総力を挙げて、ハミルトンの表彰台を防いだのだった。

 最後にレッドブルの特別カラーリングについて触れたい。RA272の実車はアイボリーホワイトと呼ばれる象牙色だが、蘇ったトルコ仕様車はかなり明るい白。その理由は、「象牙色に塗り重ねると重量が増えてしまうから」だった。

 レッドブルはホンダカラーへの変更を快諾したものの、重量増によるパフォーマンス低下は当然避けたかった。そのため期限ぎりぎりまで試行錯誤が続き、「計画が中止になる可能性も何度もあった」と、山本MDは述懐する。そしてたどり着いた妥協点が、あのホワイトだった。

 言い換えればレッドブルはホンダの依頼をそれだけ真摯に受け止め、最後まであきらめなかった。英国レーシングチームと日本の自動車メーカーの協力関係のひとつの到達点が、たしかに見えたカラーリングだった。

※この記事は本誌『オートスポーツ』No.1562(2021年10月15日発売号)からの転載です。


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