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【2.5L直6か3.5L V8か】ローバーP6 3500Sとトライアンフ2.5 PI 1970年代の好敵手 前編

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【2.5L直6か3.5L V8か】ローバーP6 3500Sとトライアンフ2.5 PI 1970年代の好敵手 前編

ローバーのイメージを前向きに変えたP6

執筆:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)

【画像】1970年代のライバル ローバーP6 3500Sとトライアンフ2.5 PI 全46枚

撮影:Luc Lacey(リュク・レーシー)

翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)


季節の変わり目らしい急な雨が、雷を伴って英国中部、ウォリックシャーの丘陵地帯を抜けていった。日差しが戻るのを待って、1970年代に誕生したドライバーズ・サルーンのエンジンを始動する。雷鳴のような轟音が、再び一帯に響く。

今回ご紹介するのは、ローバーとしてもトライアンフとしても、当時最も先進的な設計で大きな成功を収めた大型サルーン。1台はカンリー工場の頂点といえた直列6気筒の美声を持つ2.5PI。隣に並ぶのは、V8のテノールが勇ましいP6 3500Sだ。

1970年代の英国車として、他を凌駕する動力性能に操縦性、快適性を獲得。ジャガーXJ6が発表されるまで、運転を愛する銀行の上役や医師、パイロットらに選ばれた。

アブロ・バルカン爆撃機の姿が見えるこの場所は、ロケ地としてピッタリかもしれない。この爆撃機が活躍したフォークランド戦争の頃に、2台は現役だった。10年以上という長いモデルライフも、役目を終えた巨大な三角翼を持つ飛行機と重なる部分がある。

レシプロエンジンからジェットエンジンへ飛行機が進化したように、ローバーの進歩を象徴すべく、ライバルよりひと足先にP6が登場。信頼できつつ旧式的なP4を長く生産していたローバーに対するイメージを、前向きなものへ一変させた。

前衛的といえる設計とDSに似たデザイン

それまでも、ローバーが革新を避けていたわけではない。P6の開発を主導したのは、ランドローバーの父と呼ばれる、スペンサー・ウィルクス氏とモーリス・ウィルクス氏という兄弟だ。

彼らの指示で動いたスペン・キング氏やピーター・ウィルクス氏、ゴードン・バッシュフォード氏らも、1948年の初代ディフェンダー、ランドローバーの開発へ深く関わっている。

エンジニアの野心は高く、ガスタービン・エンジンからハイドロニューマチック・サスペンションまで、様々な技術がP6の候補に挙がった。実際、クルマの設計自体も前衛的といえるものだった。

フロント・サスペンションは、ウイッシュボーンのリンクから、横向きに取り付けられたコイルを押す仕組みを採用している。リアはよりシンプルで、ワッツリンクを備えたドディオンチューブ・アスクル式だ。

ボディシェルはスケルトン構造のベースフレームに、ボディパネルを固定するというもの。スタイリングを手掛けたのはデビッド・ベイチュ。彼の創造性は抑え気味だったが、それ以前のローバーとはかけ離れていた。

当初のデザイン案では、滑らかに傾斜したボンネット・ラインを持ち、シトロエンDSにも似ていた。量産へ至るまでに、フロントノーズは一般的な丸目4灯に四角いフロントグリルというスタイルへ修正されている。

前後が細く絞られ、ボディ中央が僅かに膨らむフォルムは量産車へ引き継がれた。P6の見た目の特徴といえる、滑らかに後ろへ下がるルーフラインも実現されている。

ミケロッティ・デザインのトライアンフ

ちょうど同じ頃、トライアンフの開発現場でも大型の4ドアサルーンが仕上げの段階に入っていた。後に2.5 PIへ進化する、2000だ。

そのルーツは、ランチア風のトランスアクスル・レイアウトや、逆傾斜したリアウインドウなどが試されたセブ・プロジェクト。レイランド・グループの量産車として仕上がった時には、ずっと大人しくなっていたが。

トライアンフ2000の特長となるのが、モノコック構造のボディ。先代に当たる、スタンダード・ヴァンガードにも積まれていた、2.0L 6気筒エンジンが初期の動力源になった。

サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式で、リアがセミトレーリングアーム式という、コイルスプリングの四輪独立懸架。スタイリングは、スピットファイアで実力を発揮したジョヴァンニ・ミケロッティ氏によるものだ。

サメのようにシャープでワイドなフロントノーズと、上端がカットされたリアのホイールアーチがトレードマーク。スポーティな雰囲気は、クルマのスペックにも反映している。

4気筒エンジンが主流だったような市場に、滑らかな1998ccの直列6気筒エンジンを送り込んだトライアンフ。動力性能だけでなく、洗練性や燃費など、多くの面でアドバンテージがあった。

大進歩といえる内容を備えていたローバーP6だったが、エンジンは1978ccの直列4気筒。活発ながらノイズは大きく、91psという最高出力も力不足は否めなかった。それに気付いたローバーは5年という短くない時間を掛け、次の一手を打つ。

V8と直6で競い合った動力性能

P6の動力性能を高めるべく、ローバーが選んだ手段は比較的単純なもの。1968年、広いエンジンルームに収まったのは、ガスタービンではなく、ビュイック社製の3528cc V8エンジン。P5での実績があった。

オールアルミ製で車重を大きく増やすことなく、最高出力148psを獲得。ローバーP6 3500を名乗り、パフォーマンスは大幅に高められた。

0-97km/h加速は10.5秒。183km/hという最高速度を獲得し、エグゼクティブ・サルーンから英国版マッスルカーと呼べるモデルへ、P6はステップアップした。

ローバーの動きを事前に知ったカンリー工場の技術者も対抗。1967年8月にTR5でデビューしていた、燃料インジェクションの152psユニットの流用を決める。トリプル・キャブレター級の性能といえたエンジンだ。

ストロークを伸ばすことで、排気量は2498ccへ拡大。穏やかなカムシャフトと専用の排気系統が組まれ、最高出力は134psに抑えられていたが、大型サルーンとして不足ない低速トルクを獲得。2.5 PIを名乗ることになった。

動力性能は向上したものの、デビューから数年を経て新鮮味も薄れていた。そこで1969年、2000と2.5 PIはフェイスリフト。Mk2のデザインを担当したのも、引き続きミケロッティだ。

トライアンフ・スタッグ風のフロントマスクを取り入れ、水平に伸びたテールライトと大きなトランクリッドでリアをイメージチェンジ。インテリアも、スタッグに似たデザインで一新されている。

クリーンなダッシュボードには、ドライバーを包むようにカーブしたメーターパネルを採用。長いモデルライフに備えた。

この続きは後編にて。

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