デジタルと伝統美の融合
ブガッティは2026年7月1日、同社のビスポークプログラム「ブガッティ・シュール・ムジュール(Bugatti Sur Mesure)」により製作された世界に1台限りの限定モデル「W16ミストラル・ブラン・エテルネル(W16 Mistral 'Blanc Éternel')」を発表した。
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15年前の名作「ロル・ブラン」を受け継ぐストーリー
このモデルは、最先端のデジタルデザインと伝統的な手仕事、そしてベルリン王立磁器製陶所(KPM)が誇る磁器の専門知識を融合させた、極めて独創的なロードスターである。そして実は今回のプロジェクトの背景には、現代のブガッティのヒストリーにおける重要な出来事が、15年前にあったのだという。
2011年、ブガッティはKPMとのコラボレーションにより、ヴェイロン・グランド・スポーツをベースに、磁器をモチーフとした「ロル・ブラン(L'Or Blanc)」を製作した。このモデルは、流れるようなブルーのラインを手作業でボディに描き込んだ仕様で、当時から独自の芸術的アプローチとして高く評価されていた。
今回の「ブラン・エテルネル」は、その「ロル・ブラン」の精神を受け継ぎつつ、W16エンジンの時代の終焉を飾るモデルとして造られた。しかし、過去のデザインを単に模倣するのではなく、デザインプロセスの「進化」を示すものとしてアプローチされているのである。
デジタルの論理を視覚化した外観デザイン
ベース車であるW16ミストラルの開発プロセスでは、クレイ(粘土)モデルを一切使用せず、完全にデジタル環境で造形が行われた。ボディの彫刻的なフォルムは、CADシステムにおいて広く用いられる「NURBS(非一様有理Bスプライン)」という、精密な三次元デジタル曲面のネットワークで構築されている。
「ブラン・エテルネル」では、通常は表に出ないこのデジタル上の「面の構成(パッチレイアウト)」そのものを、外観のアートワークとして採用したのだ。
純白に塗装されたボディには、細いブラックのラインが手作業でマスキングされて描き込まれており、一見シームレスなフォルムの背後にある幾何学的な構造を浮き彫りにしている。これは、デジタルモデリングの明確な視覚言語を物理的なボディに定着させる試みであり、ブガッティのデザインと技術の二面性を表現したものであるという。
17%の収縮を計算した、本物の磁器パーツ
車両の各部には、KPMとの共同開発による本物の磁器パーツが惜しみなく投入されている。エクステリアでは、フロントのEBエンブレム、燃料・オイルキャップ、エンジンカバーのインレイに磁器が採用された。磁器は窯で焼成される際に約17%収縮するため、開発チームは完成時に車体へ完璧にフィットするよう、あらかじめ収縮率を精密に計算してモデリングを行っている。
さらにインテリアにおいても、スピーカーカバー、ニーパッド、シフター、センターコンソールのアームレスト、ウィンドウリフターのボタンなどに磁器が使用されている。単なる装飾パーツとしてではなく、ドライバーが実際に操作し、触れる部分に機能的素材として組み込まれている点が特徴だ。
職人技における驚くべき成果
このブラン・エテルネルについて、ブガッティのデザインディレクターであるフランク・ハイル氏は次のように述べている。
「W16ミストラル ブラン・エテルネルが格別に美しいのは、すべてのラインとすべての素材に目的があるからです。このユニークなコミッションに対する私たちの野心は、ヴェイロン・グランド・スポーツ ロル・ブランのエッセンスを深く掘り下げ、W16ミストラルの完全にデジタルなデザイン言語を通じてその次の章を書くことでした」
「ブラン・エテルネルはブガッティの歴史を尊重しつつもそれに縛られることなく、私たちのヘリテージと個人の好みを、まったく新しく感じられる方法で融合させています。それこそがシュール・ムジュールの美しさであり、他の誰のものでもない、本物でタイムレスなものを創り出すということなのです」
一方、KPMのクリエイティブディレクターであるトーマス・ウェンゼル氏は以下のようなコメントを発表した。
「繊細な磁器と、妥協のないハイパーカーのパフォーマンスとの組み合わせは、今回もまた並外れた創造的挑戦であることを証明しました。ブラン・エテルネルのボディワークのアクセントや装飾要素は、細部まで丁寧に作り込まれました。この性能クラスの車両で使用するためにこれほど繊細な素材を精錬することは、職人技における驚くべき成果を表しています」
パートナーシップを記念したライフスタイルコレクションも
今回の共同プロジェクトの復活を記念し、KPMとブガッティはブラン・エテルネル磁器コレクションも限定発売する。車両から着想を得た「To-Drive カップ」およびKPMの象徴的な「アビエーターカップ(2サイズ)」で構成され、世界限定1000個がすべて手作りで生産されるという。
【ル・ボラン編集部より】 1600psという途方もないパワーを生むW16エンジンの終焉を飾るモデルが、最も繊細な「磁器」を纏う事実にブガッティの奥深さがある。デジタルの造形論理を可視化した幾何学的なラインと、17%の収縮を計算し尽くした手作業の磁器パーツ。一見相反する「冷徹なデジタル」と「伝統的な職人技」が、世界最高峰のハイパーカーにおいて機能美として高次元で結実しているのだ。速度という物理的極致を求めたW16の歴史は、単なるスペックの誇示を脱し、狂気的なまでの審美眼により永遠の芸術作品へと導かれたのである。ブガッティを象徴するW16エンジンの時代のフィナーレを飾るにふさわしい、究極のコレクターズアイテムの誕生と言えるだろう。
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