8月2日(日)、フィンランドで開催された2026年WRC世界ラリー選手権第10戦『ラリー・フィンランド』の最終日は、SS19とSS20(ウルフ・パワーステージ)の計2本(総距離60.04km)が行われ、TGR-WRT2のサミ・パヤリ/マルコ・サルミネン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が悲願のWRC初優勝を飾った。75周年を迎えた伝統の大会において、パヤリはフィンランド人ドライバーによるWRC通算200勝という歴史的な金字塔も打ち立てた。
TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)のオリバー・ソルベルグ(トヨタGRヤリス・ラリー1)が26.7秒差で総合2位、同じくTGR-WRTのエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)が1分19秒5差で総合3位に続き、トヨタ勢が表彰台を独占した。総合4位にはヒョンデ・シェル・モービスWRTのアドリアン・フルモー(ヒョンデi20 Nラリー1)、5位にはティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)が入った。
【最終結果】2026年WRC第10戦ラリー・フィンランド パワーステージ後
一方、日本の勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)はパワーステージで残り10kmを切ったところで立ち木に激突するアクシデントに見舞われ、4分18秒2差の総合6位で大会を終えた。
最終日の舞台は、今大会の最長ステージ『Himos-Jämsä』(30.02km)の往復2本。前半約18kmは時速190kmを超える超高速の全開区間、中盤からは道幅が狭く鬱蒼とした森の中のテクニカルセクションへと変わり、最後はヒモスのスキー場ゲレンデを一気に駆け下りる超高速ダウンヒルというコースだ。前半と後半でまるで性格の異なる2つのステージが凝縮された1本で、ハイスピードとテクニカルの均衡が問われる。
1走目のSS19は前夜からの放射冷却が残り、森の中の日陰部分には冷たい湿気が残るハーフドライ状態。各チームはソフトコンパウンドを5本積み込み、慎重にトラクションを探りながらのアタックを余儀なくされた。
まず注目を集めたのはMスポーツ・フォードWRTのマルティン・セスクス(フォード・プーマ・ラリー1)のスーパーラリー復帰だ。前日に大クラッシュを喫し、メカニック陣が約4時間をかけてマシンを総組み直した。序盤はマシンの感触を確かめる慎重な走りで14分16秒4をマーク。同じくフォードのジョン・アームストロング(フォード・プーマ・ラリー1)はSS19の大ジャンプ着地でフロントガラスにひびが入った。視界を一部遮られながらも14分17秒4でフィニッシュしている。
続いてSS19で最大の喜劇を演じたのはヒョンデのアドリアン・フルモーだ。走行中にコックピット内へ巨大なマルハナバチが侵入し、顔の真ん前を飛び回った。片手でハチを払いながら時速200kmでステアリングを操り続けるという前代未聞の状況だ。何とか13分50秒7でまとめたが、エバンスには13秒以上の差をつけられた。ヌービルも大ジャンプの着地でフロントスプリッターが根元からちぎれ飛ぶ深刻なダメージを負った。13分52秒8にとどまった。
スーパーサンデーポイント獲得を狙う勝田貴元は気迫のアタックを見せ、13分45秒0の全体3番手タイムを記録。また、エバンスはスタート2km地点でリア左ホイールがコース脇の溝に落ちてブッシュへ弾き飛ばされながらも、アクセルを緩めることなく力技でマシンを道路上へ戻す根性走行で13分41秒0の全体2番手タイムを刻んだ。
SS19の最速タイムを叩き出したのはオリバー・ソルベルグだ。前半の高速区間を完璧にねじ伏せ、13分38秒1という圧倒的なベストタイムでSSウィンを飾った。ただし、ゴール手前の大ジャンプで着地の衝撃が背中を直撃し、激痛に顔を歪めながらのフィニッシュとなった。パヤリは36秒以上のマージンを守るべく徹底したセーフティ走行に徹し、ジャンプ手前でアクセルを抜いて13分48秒1の全体4番手タイムで午後へと折り返した。
SS19後の総合順位はパヤリが36.4秒差でソルベルグを抑えて首位を維持。エバンスが3番手、フルモーが4番手、勝田が5番手の体制で午後に臨んだ。
いよいよ迎えた最終のSS20。1走目から完全にスイープされた路面はカチカチに踏み固められた超高グリップのドライコンディションへと変貌を遂げ、各選手の迫真のアタックが繰り広げられた。
しかし、勝田に痛恨の悲劇が訪れる。終盤の10km手前、日陰が残るスリッピーな左コーナーでグリップを失い、道路脇の立ち木にフロント左から激突した。フロントサスペンションが半壊し、冷却系も大きなダメージを負った。セーフティモードに移行したヤリスを勝田は1速でスキーゲレンデのフィニッシュラインへと引きずり込み、14分58秒7を記録。アクシデントによる損失は1分36秒以上に及び、ヌービルに逆転されて総合6番手へと転落した。
一方、SS20で驚異の一騎打ちを演じたのはエバンスとソルベルグだ。両者はともに13分22秒2という全く同一のタイムを刻んだ。1000分の1秒単位の精密計測ではエバンスがわずか0.02秒上回り、SS20単体の最速タイムを手にした。ただしスーパーサンデーはSS19とSS20の合算タイムで争う。SS19でより速かったソルベルグが27分0秒3で総合最速に立ち、5ポイントを獲得した。背中の激痛を堪えながら最後まで諦めなかったソルベルグの気迫が結実した瞬間だった。
パヤリは27秒以上のマージンを安全に守り切り、13分31秒9のセーフティ走行でスキーゲレンデのフィニッシュラインへと降り立った。地元フィンランドの大観衆が押し寄せたゲレンデは歓声の渦に包まれ、フィンランド人ドライバーによるWRC通算200勝という歴史的な記念碑をパヤリが打ち立てた瞬間を目撃した。
総合成績はパヤリが2時間27分58秒0でWRC初優勝を達成。ソルベルグが2位、エバンスが3位と、トヨタがワン・ツー・スリーを飾った。フルモーが4位、ヌービルが5位(ともにヒョンデi20 Nラリー1)、勝田が6位、マッカーリーン(フォード・プーマ・ラリー1)が7位でそれぞれフィニッシュした。
ドライバーズ選手権ではエバンスが首位を維持し、リードを拡大した。2連勝のパヤリが2位に浮上し、勝田は3位へと後退している。マニュファクチャラーズ選手権でトヨタはヒョンデに174ポイントのリードを広げた。次戦の第11戦パラグアイではタイトル確定のチャンスを迎える。
[オートスポーツweb 2026年08月02日]
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みんなのコメント
2連勝だよね!
それとも母国フィンランドでは初って意味?