“T-ハイブリッド”を搭載したカブリオレの魅力とは
長い歴史を有する“現代スポーツカーのアイコン”であるポルシェ「911」は、多くのバリエーションモデルを設定しているのも特徴のひとつです。
【画像】オープンだからこそ濃密な“T-ハイブリッド”の真価! ポルシェ「911カレラ GTS カブリオレ」のディテールを写真で見る(30枚以上)
ボディ形状だけでもクーペ、カブリオレ、タルガトップの3種類があり、駆動方式もRRと4輪駆動の2タイプ。さらに、エンジンにも複数の仕様が設定されています。
加えて、サーキット志向の「GT3」、超高速グランドツアラーであるターボ系モデルといった特別なモデルも設定されるなど、実に多彩なラインナップを擁しています。
日本市場向けは、シリーズの中核である「カレラ」系だけで全14モデル(クーペ6/カブリオレ6/タルガ2)が用意されており、これはドイツ本国と同じラインナップ数となっています。
もちろん、モデルごとにキャラクターは異なりますが、「カレラ」系モデルにおいて個性際立つ存在といえば、伊達なカブリオレボディに最新のハイブリッドシステムを組み合わせた「911カレラ GTS カブリオレ」といえるでしょう。今回はそのメカニズムと走り、そして魅力を探ってみたいと思います。
現在、カブリオレボディの「911カレラ」には、大きく分けて2種類のエンジンが搭載されています。具体的には、3リッター水平対向6気筒ツインターボと3.6リッター水平対向6気筒シングルターボで、後者は2024年に実施された商品改良時に登場した“T-ハイブリッド”と呼ばれる「911」史上初の電動化モデルです。
「911カレラ GTS カブリオレ」に搭載されるのは、この“T-ハイブリッド”。エンジンとモーターを合わせたシステム出力は541psでシステム合計の最大トルクは610Nmと、一線級のスポーツカーにふさわしい数値が並びます。
一方、このクラスのスポーツカーとなると、単なるスペックだけでなくサウンドやフィーリングなど、心に響くプラスαも求めたくなるもの。そのほか、電動化やBEV(電気自動車)賛成派であっても、「モーターで走行する『911』なんて……」とか「エンジンとモーターの協調が不自然じゃないの?」と思う人もいるかもしれません。ちなみに結論からいうと、“T-ハイブリッド”にはモーターのみの走行モードは設定されていません。
「911」の象徴たる水平対向6気筒エンジンは、新開発となる3.6リッターのシングルターボ仕様。従来のツインターボ仕様に比べて排気量が600cc拡大され、エンジン単体で最高尾出力485ps、最大トルク570Nmを発生します。
この新エンジンは理想的な空燃比を追求し、ハイブリッド化を前提に開発されたもの。補器類が電動化され、ベルトドライブを排除するなどでコンパクト化も追求したことでエンジン高は110mm低くなり、そのスペースにDC-DCインバータとパルスインバータを配置しています。
“T-ハイブリッド”の核となる永久磁石同期モーターは、“PDK”と呼ばれる8速のデュアルクラッチ式トランスミッションに内蔵されています。エンジンとトランスミッションの間に配置されるこのモーターの最高出力は54ps。アイドリングから強力なトルクを発生するだけでなく、回生時にはフロントフード下に収まる高電圧バッテリーへ最大40kWの電力を供給します。なお、この内蔵モーターはスターターモーターとオルタネーターを兼ねており、車両重量の軽減にもひと役買っています。
さらに新開発の電動ターボチャージャー“eターボ”も、システムの肝といえる重要なメカニズムとなっています。“eターボ”はコンプレッサーとタービンホイールの間に一体型の電動モーターを配置。過給だけでなく最大で15psのエネルギー回生もおこないます。
また“eターボ”は、回転数や負荷に関わらず、瞬時に最大回転数まで加速させることが可能。ターボチャージャーの回転数上昇に要する時間が劇的に短縮されています。つまりターボラグなく、素早く十分なパワーとトルクが供給される仕組みです。
このほか、ハイブリッド化に伴って最大容量1.9kWh、400Vの高電圧リチウムイオンバッテリーをフロント部に搭載。回生したエネルギーはここに蓄えられ、パワーが必要な際には瞬時に電力を供給します。
一般的に、バッテリーというとサイズや重量が気になるところですが、同バッテリーは通常の「911」用バッテリーとほぼ同サイズで、重量は27kg。ちなみに、これら電動化のためのシステムによる重量増はトータルで50kgに抑えられています。
ハイブリッドというと環境性能に全振り……というモデルが一般的ですが、ポルシェによると“T-ハイブリッド”はモータースポーツで得た知見を設計基盤としており、「911」のコンセプトに合致するシステムを開発したのだとか。
すなわち、スポーツカーとしてのアップグレードを図るためのシステムであり、“T-ハイブリッド”の“T”はポルシェにとっての象徴である“ターボ”を意味するとされています。実際、2025年9月に「911」シリーズの頂点としてラインナップに加わった新型「911 ターボS」は、この“T-ハイブリッド”のテクノロジーを採用。“eターボ”を2基使用することで最高出力711psを発生しています。
このようにメカニズムを見れば、“T-ハイブリッド”は大型のシングルタービンや排気量の拡大によって生じるであろうデメリットを、電動化によって排除していることが分かります。
従来型の「911カレラ GTS」に比べると、最高出力で61ps、最大トルクで40Nmのアドバンテージを有しながら、燃費や二酸化炭素排出量ではイーブン、または改善しているのも特徴となっています。
つまり“T-ハイブリッド”は、長年にわたってパフォーマンスの向上を追求してきた「911」における正常進化といっても過言ではないのです。
オープンだから分かるワイルドで歯切れがいい硬質サウンド
新たなスポーツカー用エンジンの理想像を提案する“T-ハイブリッド”ですが、実際に走るとどうなのでしょう? 今回試乗したのは、カブリオレボディをまとった「911カレラ GTS カブリオレ」。スレートグレーネオのボディにレッドのソフトトップという組み合わせがおしゃれです。
早速、ルーフを開いてみますが、“T-ハイブリッド”のメカニズムが収まるエンジンベイと電動トップの開閉機構を両立していることに驚かされます。
もちろん、エンジン設計時点で織り込み済みだったとは思いますが、風の巻き込みを抑える電動ディフレクターやリアシートも備わっており、実用性もしっかり確保されているのも「911」らしい美点といえるでしょう。
さらにコンパクトなソフトトップ部により、「911」らしいグラマラスなスタイルが際立つのも魅力のひとつ。エクステリアのディテールについては“992.2”と呼ばれる現行の「911」シリーズに準じた仕様で、「GTS」には冷却性能と空力性能を両立するフロントの“アダプティブエアインテークフラップ”が装備されています。
プッシュ式のスターターボタンを押すと、低く弾けるようなサウンドとともにエンジンが目覚めます。予想よりも勇ましい響きに思わず「ニヤリ」としてしまいますが、これはほんの序章に過ぎません。
ステアリングに備わるダイヤルにより、走行モードを「Wet」、「Normal」、「Sport」、「Sport Plus」の4モードから選べますが、まずは「Normal」でスタート。タイヤひと転がり目からその力強さを実感します。
1000rpmプラスほどのごく低回転からみなぎるトルク感、2000、3000、4000rpmの伸びやかさと反応の素早さ、5000rpmを超えてなお鋭さを増すレスポンスと息をのむ加速……全域でよどみなくあふれるパワーは、まさに圧巻のひと言です。
ハイブリッドシステムの完成度も素晴らしく、ディスプレイのエネルギーフローを見なければ、その存在を意識しないほど自然に振る舞います。これは“eターボ”についても同様で、大排気量の自然吸気多気筒エンジンさながらのスムーズさとドラマチックなフィーリングを実現しています。
「Sport Plus」を選べば、全身が切れ味鋭く……ではありますが、街中からワインディング、高速道路という一般的な使い方では「Normal」と「Sport」が心地よく(余力が有り余る状態ですが)、カブリオレのキャラクターにも合っているのではないかと感じます。
公道でその本領を垣間見るような状況には遭遇しないでしょうし、500psオーバーのスポーツカーを振り回すウデも筆者(村田尚之)にはありませんが、ストイックに走りを追い求めずとも「コレは楽しい」と感じさせる辺りは、最新「911」の魅力といえるのではないでしょうか。
ちなみに、想像よりもはるかにいいな、と感じたのは、カブリオレボディと“T-ハイブリッド”の相性です。スイッチ操作ひとつで開閉できるソフトトップの出来は文句のつけどころがありませんし、ボディやトップ部に起因する騒音・雑音も一切ありません。
しかし何より、屋根を開け放ってのクルージングは爽快のひと言。ノーマルの「911カレラ」系モデルより少々ワイルドで歯切れよく、硬質なサウンドを背中越しに聞きながらのドライブは実に刺激的で、高揚感に満ちあふれています。
* * *
さて、ボディやエンジンなど膨大な組み合わせから選択可能な「911」シリーズの中から、万人が認めるナンバーワンを決めるというのは野暮というもの。とはいえ「カブリオレってちょっと気取ってるよね」という先入観のある愛好家も多いことでしょう。
サーキット志向の「911」ファンにこそオススメするのはお門違いとは思いますが、「先入観で腰が引けている」、「リストから外している」という方には、「そんな思い込みは一瞬でひっくり返るほどの楽しさと魅力に満ちた1台です」とお伝えしておきましょう。(村田尚之)
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みんなのコメント
遠くへ行ってしまったなぁ
タイヤは5年で既に3セット、金額100万以上、あと点検やオイル他消耗品費諸々で年間20万ぐらい
でも乗るたびにこれほど癒される車は他に無いでしょうね