スバルと富士通は2019年12月4日、エンジン部品の加工工程で研削加工の仕上げ、品質保証の向上に向け、高精度に加工品質を判断するAIモデルを活用した実証実験を、スバル群馬製作所大泉工場の量産ラインで開始すると発表した。
カムシャフト研削工程での品質向上の可能性を探る
今回活用するAIモデルは、エンジンのカムシャフト研削工程で、研削設備に接続したセンサーから主軸動力値や振動のデータを収集・分析し、加工中の全カムシャフトの品質をリアルタイムに推測するもので、富士通とスバルが共同で開発している。
今回の実証実験では、AIモデルが推測した加工時の品質状態と実測値を照合し、正確性を測ることで加工後の全カムシャフトの品質保証が可能となるかを検証する。また、従来定期交換していた研削設備の消耗部品を、品質基準を順守しながら極限まで活用することの可能性も同時に検証する。
今後、スバルと富士通は、実証実験の成果を活用して量産ラインへの本格適用や、他の部品やエンジン工場全体への横展開を推進し、さらなる最適生産・品質向上を目指すとしている。
工場へのAI技術導入の背景
製造業におけるインダストリー4.0は、ドイツ政府が推進しIoT、AIを活用することで製造プロセスの効率化、高精度化を図るというコンセプトだが、日本ではドイツに比べ導入が遅れている。
スバルは、自動車の生産において、品質・生産性・効率性を同時に向上させことを目的とし、中期経営ビジョン「STEP」(2018年7月発表)で掲げた品質向上のためのIT投資による生産工場のシステム化に推進。IoTやAIなどの技術を活用した生産工場のさらなるレベルアップを推進するとことにしていた。
この取り組みの一環として、群馬製作所大泉工場で、加工部品の品質保証のレベルアップを目指し、2018年7月から富士通と共同で、研削設備の加工品質を高精度に判断し、加工プロセスを監視することで品質を保証するAIモデルの開発に取り組んできたという。
抜き取り検査から全数検査に
今回活用するAIモデルは、富士通アドバンストエンジニアリングが持つ生産現場でのIoT活用技術と富士通研究所が持つAIモデル生成技術、それとスバルが持つエンジン部品の加工ノウハウを組み合わせて共同開発したという。
エンジンのカムシャフト研削工程で、研削設備に接続したセンサーから収集した主軸動力値や振動といったデータと、カムシャフトの粗さや表面形状などの品質データを、AIに機械学習させリアルタイムに加工中の全カムシャフトの品質の良否判定を行なうことができるAIモデルを構築している。
今回の実証実験では、収集したセンシングデータからAIで推測した品質状態が、品質保証基準の範囲内に収まっているかを実測値と比較して確認する。これにより、従来の抜き取り検査を主体とした品質保証に加え、AIを利用した全カムシャフトの品質予測により、品質保証レベルの向上が可能となるかを検証する。
また、研削砥石の表面を研いで切れ味を取り戻すドレッシングと呼ばれる作業を必要とされた時のみ実施することで、従来と比べてドレッシング間隔を延伸させることの可能性も同時に検証する。
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