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サーキット派かデート派かで決まる!? アルピーヌ「A110S」のオーナー像とは

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サーキット派かデート派かで決まる!? アルピーヌ「A110S」のオーナー像とは

■出力アップし、脚を締め上げたアルピーヌA110S

 2代目アルピーヌ「A110」の素晴らしいところは、スポーツカーとしてのパフォーマンスや操縦する楽しさといった走りにまつわる部分と、普段使いに積極的に使いたくなるほどの乗り心地のよさや扱いやすさといった快適性にまつわる部分が高い次元で矛盾なく同居している点。
 
 さらに、そのバランスのよさが悪目立ちしないエレガントとすらいえるフォルムの中に綺麗に収められていること、といえるでしょう。

これは楽しい! 試乗で魅せたアルピーヌ新型「A110」の凄さ 街乗りからドリフトまで自由自在

 さして不足も感じなければ手に余ったりもしない、ちょうどいいくらいのパワー。ドライバーの意志と直接つながっているかのような、俊敏にして忠実なハンドリング。

 ドライバーのレベルに合わせたチャレンジを楽しませてくれる、コントロール性の高さと奥深さ。往復1500kmオーバーのロングを走っても驚くほど疲れない、その優しさ。
 
 合算すればおそらく4000kmを超える距離を試乗していますが、サーキットでもワインディングロードでも高速道路でも街中でも、その絶妙なバランスには常に唸らされるばかりだったのです。
 
 けれど人間というのは業が深い生き物で、「もっと」を欲しがってしまいがち。世界中から、さらにパフォーマンスの高いA110を望む声があがっていたのも確かでした。
 
 その声に対するアルピーヌの回答が、日本でも秋から先行予約がスタートした「A110S」だったのです。
 
 現時点では日本の路上を走れるクルマはありませんが、ひと足早くポルトガルのエストリルサーキットとその周辺の一般道で、試乗させてもらうことができました。

●A110の美徳は、快適な乗り心地にある

 A110Sをひと言で表してしまうなら、「スタンダード版A110のエンジンのパワーを上げて足周りを強化したモデル」ということになっちゃいます。なんだか面白味のないいい方ですが、事実なのだから仕方ありません。
 
 エンジンは、1.8リッター+ターボのブースト圧を0.4bar高めるなどのチューンナップが施され、最高出力は292馬力/6400rpm、最大トルクは320Nm/2000-6400rpmへと向上していました。
 
 40馬力もパワーが高くなっている計算となりますが、同時に注目して欲しいのは、パワーとトルクの発生回転です。最高出力の発生回転数は400rpm高くなり、最大トルクに至っては2000rpmから6400rpmまで延々と放出し続ける、ということになります。
 
 試乗する前から、その特性の変化がだいぶ楽しみだったのでした。

 ちなみにA110Sの車重は1114kgなので、パワーウエイトレシオは3.8kg/馬力。スタンダードなA110より0.5kg/馬力向上していて、おかげで静止状態から100km/hの加速タイムも4.4秒と0.1秒縮まりました。最高速度も260km/hと、10km/h伸びています。

 しかし、A110というクルマを知る人にとってもっと気になるのは、シャシに加えられた変更の方でしょう。このA110Sでは、スプリングのレートが1.5倍、アンチロールバーの強度がおよそ2倍。ダンパーもそれに合わせたチューニングとなり、ポリウレタン製のバンプストップも形状や硬さが変更されて、車高は4mm下がっています。
 
 タイヤはフロントが215、リアが245とスタンダードA110より10mm太い、専用開発されたミシュラン・パイロットスポーツ4を装着。もちろんスタビリティコントロールなどの電子制御系のセッティングも変更されています。

 それらの要素を考えると、だいぶ締め上げられてる様子。エンジニアは、「スタビリティを重視してコーナーをもっと速く曲がれるようになったけど、普段の快適さは損なわれてないよ」といっていたのですが、乗り心地は間違いなく悪化してるだろうな、と軽く心配になりました。
 
 もっとも気掛かりなのはそこだったのです。何しろ素晴らしい楽しさと気持ちよさを持つスポーツカーなのに、素晴らしく快適な乗り心地も持っている、というのがA110のひとつの明確な個性だったわけですから。

■素のA110か、走りに特化したA110Sか、悩ましい選択

 まずはその乗り心地から述べるとすると、スタンダードA110と較べれば明らかに硬いけど、仮にデートに使ったとしても助手席からはギリギリ苦情をもらわずにすむレベルかな、というような乗り心地でした。
 
 現行版のルノー・メガーヌRSに近い感じ、といっていいかも知れません。路面の状態が良好なところでは快適と感じられるけど、荒れた箇所に差し掛かったときの凸凹のやり過ごし方はスタンダードA110の方が巧みです。
 
 スプリング1.5倍、スタビ2倍と聞いて想像していたより遙かに乗り心地がいいことが実感できたのも確かなのですが、少なくとも一般道ではスタンダードA110の方が段違いで快適ではあるのです。個人的にはどっち? と問われたら、やっぱりスタンダードかな……なんて感じていました……この時点では。

 しかし、サーキットを走ったら、いきなり迷いが生まれるのです。おそらくそれは僕だけの独りよがりじゃなく、乗り較べをしたならすべてのドライバーがそうなるのでは? と思うほど。なぜならA110S、夢のように楽しかったのです。

 +40馬力の違いは、全開加速を試みても、体感としてはさほど強くは感じられませんでした。おそらくそれは、全域に渡ってバランスよく力強さを増しているからなのでしょう。
 
 トップエンドまでまったく詰まりを感じさせずに伸びていく感じ。特に中回転域から高回転域までの伸びの気持ちよさ、パワー感とトルク感は、スタンダードA110にはなかったものです。文句なしに素晴らしい。いいエンジンに仕上がってるな、と素直に思わされます。

 それにA110Sのハイライトといえる、シャシの出来映え。それがまた素晴らしかったのです。
 
 コーナリングスピードは、体感的には10%以上は高くなってるんじゃないかと思います。その場でスタンダードA110と乗り較べることはできなかったのですが、記憶の中の「このくらいから滑りはじめるはず」という辺りを遙かに超えて、4つのタイヤが余裕で路面を捕らえたままグイグイと曲がっていくのです。

●サーキットやワインディングをタイトに走るのならA110Sが断然いい!

 スタビリティを重視したというエンジニアの言葉はまったくそのとおりで、あらゆる回転域から気持ちよく加速させてくれるエンジンの性格や、かなりグリップが強力な仕立ての専用開発タイヤといった要素もあって、ラップタイムを計ってみたら驚くほどの差があることでしょう。それくらいコーナーが速いのです。

 がっちりとグリップするけど、グリップするだけ、というような面白味に欠けるクルマになってるわけでもないのです。
 
 フロントタイヤにしっかりと荷重をかけながらステアリングを切り込んでいくと、きちんとテールは滑り出します。
 
 4速でアクセルを踏み込みながら曲がっていく長いコーナーでは、路面の変化を受けて途中で何度も後輪がツーッとグリップを手放そうとしたりもします。
 
 けれど、そんなときにはクルマがいまどうなっていて、これからどうなろうとしているのかを解りやすく伝えてくれるし、正確なステアリングとツキのいいアクセルペダルで、そう怖いことも難しいこともなしにコントロールしていける楽しみを与えてくれるのです。
 
 そういうコーナリング時のバランスのよさは、スタンダードA110で感じたものとほぼ同じ。
 
 違いはそのときのスピードの高さと、スライドをわりと早めに収束させて前へ前へ進んでいこうとするようなところがあることです。A110Sの真髄は、間違いなくここにあるのだと思います。

 スタンダード版のA110と、高性能版のA110S。どちらがいいのか。それはアルピーヌA110というクルマに何を望むか、によるでしょう。
 
※ ※ ※

 サーキットやワインディングロードをタイトに走りたいなら、断然、A110Sです。高回転での気持ちよさとコーナリングスピードの速さだけでも、充分に選ぶ理由になるはずです。
 
 けれど、もちろんヒラリとしたフィールも堪能したいけど、日常的には小粋なベルリネットとしてデートにも使いたいしロングにも乗って出かけたいという人なら、断然、スタンダードA110。
 
 較べるなら低い速度域で後輪が流れてくれるから、ラップタイムよりクルマの動きそのものを楽しみたい、という人もスタンダードA110でしょう。

 スタンダードA110とひとくくりにしてるけど、実は日本に導入されてる「ピュア」と「リネージ」にも、乗り味に微妙な違いがあったりもして。アルピーヌ選びは、だから本当に悩ましいのです……。
 
●アルピーヌA110S
・車両価格(消費税込):899万円
・全長:4205mm
・全幅:1800mm
・全高:1250mm
・ホイールベース:2420mm
・車両重量:1110kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCターボチャージャー
・排気量:1798cc
・エンジン配置:リアミッド縦置き
・駆動方式:後輪駆動
・変速機:7速DCT
・最高出力:292馬力/6420rpm
・最大トルク:320Nm/2000-6400rpm
・0-100km/h:4.4秒
・最高速度:260km/h
・公称燃費(WLTC):12.8km/L
・サスペンション:(前)ダブルウィッシュボーン式、(後)ダブルウィッシュボーン式
・ブレーキ:(前)フィックス4ピストン、Φ320mmベンチレーテッド・ディスク、(後)フローティング・シングルピストン、Φ320mmベンチレーテッド・ディスク
・タイヤ:(前)215/40R18、(後)245/40R18
・ホイール:(前)7.5Jx18、(後)8.5Jx18

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みんなのコメント

2件
  • AT乗ってるとMT欲しくなるし
    MTに乗りかえると「AT楽で良かったなあ」となる

    AT乗ってた頃は旅行も行ってたけどMT車になってからは短距離しか走らんようになってしまった・・・
  • 一瞬遠目から見た四つ目のセリカに見えた。
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