2026年WRC世界ラリー選手権の第9戦『ラリー・エストニア』は7月18日(金)、デイ1のSS1からSS7までの計7本(総距離約86km)が行われ、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)のサミ・パヤリ/マルコ・サルミネン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)がデイ1の全ステージを制する歴史的な『クリーンスイープ』でトップに立った。
2番手にはTGR-WRTのオリバー・ソルベルグ(トヨタGRヤリス・ラリー1)が14.7秒差、3番手にはヒョンデ・シェル・モービスWRTのアドリアン・フルモー(ヒョンデi20 Nラリー1)が16.5秒差でつけた。
【順位結果】2026年WRC第9戦ラリー・エストニア SS7後
日本の勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)はSS6の超高速ストレートを全開走行中に左フロントタイヤがバーストする不運に見舞われ、デイリタイアとなった。WRC通算100戦目という節目のデイ1は、最悪の形で幕を閉じた。
エストニアは超高速グラベルラリーの代名詞的な存在だ。長い直線とジャンプが次々と連続し、コーナーも高速域のものが多い。そしてこのラリーで戦況を大きく左右するのが出走順だ。
ドライバーズ選手権の上位者ほど先に走り、ルーズグラベルを掃き飛ばす『ロードオープナー』の役を担わされる。今大会ではエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)が1番手、勝田が2番手という不利な出走順でデイ1に挑んだ。
デイ1前日の7月17日には、シェイクダウン『Kastre』(3.28km)が行われた。4本のランが許される中、エバンスとパヤリが3本目のアタックで1分55秒6の同タイムを記録してトップに並んだ。勝田は4本目の最終ランで1分55秒7を刻み、わずか0.1秒差の3番手タイムで本番に備えた。
迎えたデイ1の本番、SS1『Raanitsa 1』(21.45km)は完全ドライの晴天コンディションで行われた。全車がソフトタイヤ5本(装着4+スペア1)のみで挑む究極のスプリント戦略だ。路面にはルーズグラベルが厚く堆積しており、先頭スタートのエバンスはブレーキングとコーナー立ち上がりでグリップを全く得られない苦しい走りを強いられた。
WRC通算100戦目のスタートを迎えた勝田は、エバンスの残したわずかな走行ラインをなぞりながら限界までプッシュ。エバンスから0.4秒差にまとめる確かなスピードを見せた。
路面が掃けた後方スタート組が圧倒的なタイムを刻み始めた。3番手出走のオジエがエバンスを6秒以上上回り、5年ぶりのエストニア参戦でもブランクを全く感じさせない走りを披露する。そして絶好の出走順を得たパヤリが10分4秒0の圧倒的なSSベストでSS1を制した。ヒョンデ最上位はフルモーで、パヤリから2.4秒差の2位タイムをマークしている。
Mスポーツ勢では波乱が続いた。マルティン・セスクス(フォード・プーマ・ラリー1)はシェイクダウンでアンチカットに衝突してステアリングアームとラジエーターを損傷し、修復のためのスタート遅延で20秒のタイムペナルティを受けた。ジョン・アームストロング(フォード・プーマ・ラリー1)もジャンプの着地に失敗してコースアウトし、左フロントタイヤをバーストさせて31秒をロスする痛恨のスタートとなった。
SS2『Karaski 1』(11.97km)でもパヤリの勢いは止まらず、2連続ステージウィン。アームストロングはSS1でフロントの空力パーツを失いながらも、ラジエーター部品とダクトテープで即席の修理を施してSS2に出走し、Mスポーツ最上位のタイムで食らいつく執念を見せた。
続くSS3『Kanepi 1』(17.43km)でもパヤリが全体ベストをマークして3連続ステージウィン。ルーズグラベルによる出走順の影響が最も顕著に出たこのステージで、先頭スタート組と後方スタート組のタイム差は歴然としていた。3本のSSを終えてパヤリのリードは4.1秒に拡大している。
タイヤフィッティングゾーンを経て、午後のタイヤ戦略が明確に分かれた。トヨタ陣営5台は高い路面温度と荒れた路面を見越してハードタイヤ3本+ソフトタイヤ2本のミックスパッケージを選択。一方でヒョンデとMスポーツはソフトのみで午後を戦う判断を下した。
午後最初のSS4『Raanitsa 2』(21.45km)は路面が大幅に改善され、クリーンな走行ラインが形成されていた。エバンスは午前の自己タイムを18秒近く更新する力走で出走順不利の挽回を図る。そんな午後の展開でもパヤリは揺るがなかった。オジエを6.4秒引き離す9分49秒2の全体ベストで4連続ステージウィン。ハードタイヤを履いたトヨタ勢がソフトのみのヒョンデ・Mスポーツ勢を圧倒し、タイヤ戦略の読みの正しさを証明した。
SS5『Karaski 2』(11.97km)では、WRC史上でも稀有な出来事が連続した。フィニッシュで勝田・セバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1)・ジョシュ・マッカーリーン(フォード・プーマ・ラリー1)の3台が5分52秒6で並ぶという『奇跡の同タイム』が生まれ、中間スプリットでも複数台が同一タイムを刻んだ。パヤリだけは5分48秒9の全体ベストで5連続ステージウィンをさらに積み重ねた。
悲劇が起きたのはデイ1最後の本格林道ステージ、SS6『Kanepi 2』(17.43km)だ。総合6番手から翌日の出走順改善を狙って果敢にプッシュしていた勝田が、13.8km地点の超高速ストレートを全開走行中に左フロントのハードタイヤが突然バースト(デラミネーション)した。大クラッシュは辛うじて免れたものの、約57秒のタイムロスで総合最後尾まで後退を余儀なくされた。
その一方でヒョンデのエサペッカ・ラッピ(ヒョンデi20 Nラリー1)は、苦戦続きだったセットアップの方向性をこのSSで突き止め、自己ベストに迫るタイムをマークして盛り返した。パヤリはSS6も圧倒的な全体ベストで6連続ステージウィン。オジエを7.7秒、エバンスを9.3秒引き離す完全無欠の走りで首位を固めた。
デイ1の最終ステージはエルバの街中に設けられた特設ターマックのスーパーSS、SS7『Elva linn』(1.72km)だ。SS6でのダメージが大きかった勝田はここでデイリタイアが確定し、明日のデイ2は最も不利な1番手スタートを担うことが決まった。グラベルタイヤでのターマック走行という悪条件をものともせず、パヤリがこのSSもベストをマークしてデイ1の全7SS完全制覇という歴史的な偉業を達成した。
デイ1の最終結果はパヤリが49分43秒5で首位。14.7秒差でソルベルグ、16.5秒差でフルモーが続き、4番手にティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)(24秒差)、5番手にオジエ(33.3秒差)が並ぶ。6番手には朝の20秒ペナルティを猛追で挽回したセスクスが入り、エバンスは49.8秒差の9番手でデイ1を締めた。
翌日のデイ2は今大会最大の山場となる約150kmの長丁場だ。7SS全勝の圧倒的な強さを見せたパヤリがどこまでリードを拡大するか、そして不運のデイリタイアから再出走して1番手スタートというハンデを背負う勝田がデイ2でいかに戦うかが最大の焦点となる。
[オートスポーツweb 2026年07月18日]
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こうなったら1ポイントでも多く獲得するために残り2日頑張って欲しい。