開発の効率化はもちろん、運動性能向上にも貢献する
理由その1)パラダイムシフト
新型カムリなど、最新のトヨタ車が採用しているトヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)。さまざまな車種の骨格を共通化する、モジュール化という考え方を採用している。同様の考え方は、独フォルクスワーゲンではMQBと呼ぶが、これはまさにドイツ語で「車体のモジュール化」の頭文字を取って命名されたものだ。
こうしたモジュール化が提唱され始めたのは2012年前後だ。はたしてこの時期に、世界でいったい何か起こったのか? 理由は大きく2つあると、筆者はみる。
第一の理由は、パラダイムシフトだ。一般的にこの言葉は、世間の様相が大きく変わることを意味するが、自動車産業界では市場の変化を指す。具体的には、アメリカ、西ヨーロッパ、そして日本という先進国から、中国、インド、東南アジアなの新興国へと、自動車が売れる市場が転移している。
2000年代中盤から後半、アメリカの証券会社が書いたリポートの中で、BRICs(ブリックス)という言葉で表現された新興国。2010年代に入ると、中国を筆頭として新興国での新車販売が急激に増え始めたのだ。こうしたパラダイムシフトに対応するため、先進国と新興国での車体の共通化が必然となったことで、TNGAなどの車体のモジュール化が進んだ。
理由その2)コネクテッドや自動運転化
もうひとつの理由は、クルマの原価の上昇への対応だ。近年、クルマのコストは急激に上昇している。欧州のCO2規制やアメリカのCAFE(企業間平均燃費)などの排気ガス規制に対応するため、エンジンや排気システムの改良が必然だ。
また、衝突安全については衝撃吸収に優れたボディ開発に加えて、カメラ・ミリ派レーダー・赤外線センサーなどの電子機器の搭載が不可欠となっている。こうした各種センサーは将来的には自動運転にも使われる技術であり、短期間での改良を重ねる必要がある。
このほか、車載器とスマートフォン、またはクラウドサービスとの連携などコネクティビティに関する各種機器の標準装備化も進んでいる。
こうした新しい機材や機器の開発費用、そして調達費用は年々増加している中で、自動車メーカーはクルマ本体のコスト削減を強いられている。そのため、クルマの骨格である車体については、仕向け(販売国)別やモデル別で独自に開発するのではなく、設計思想から実際に使用する部品までを共通とするモジュール化が必要なのだ。
さまざまな理由で採用が進むモジュール化だが、結果的にはユーザーにとってうれしいニュースだ。なぜならば、トヨタのTNGAにしても、フォルクスワーゲンのMQBにしても、実際に採用したクルマに乗ってみると、前代モデルと比べて明らかに走りが良くなっていることがわかるからだ。車体のモジュール化は、軽量化と高剛性化を両立しており、クルマ本来の性能アップが成功しているといえる。
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