6月15日に発表された日産の新型ノートオーラ。ノートを上質に仕立てたモデルとしてダウンサイザーを取り込む狙いもあるというが、室内の広さやパワーアップしたe-POWERなどの要素を見ていくと、価格も含めてむしろ競合するのは1クラス上の車格に見える。
そう考えると価格や居住性でノートオーラに近いのが実はトヨタ プリウス。ハイブリッドの大定番車と比べてノートオーラはどうなのか? 渡辺陽一郎氏が解説。
フランス流SUV+PHEVが本気で攻めてきた!! プジョー3008はライバルに勝てるか??
文/渡辺陽一郎
写真/奥隅圭之、NISSAN
【画像ギャラリー】実はライバル車?? 日産ノートオーラとトヨタプリウスを見比べる
ノートの上級車を投入した日産の狙いは?
日産ノートの上級モデル「日産ノートオーラ」(全高4045×全幅 1735×全高1525mm/価格:261万300円)
日産 ノートの上級車種として新型ノートオーラが追加された。この背景にはノートの売れ行きを伸ばす目的がある。ノートは現行型になってノーマルエンジンを廃止しており、ここで生じたバリエーション不足をノートオーラで補う。
日産はノートオーラの販売計画を年間に5万1000台、月当たり4250台と設定した。ノートの目標は月/8000台だから、ノート全体(1万2250台)に占めるノートオーラの比率は35%だ。これは廃止されたノーマルエンジン車の比率に近い。
それにしても1か月に4250台というノートオーラの販売計画は相応に多い。そこでノートオーラは、上級モデルながらも価格を割安に抑えている。ノートオーラ「G」は261万300円だから、ノート「X」の218万6800円に比べて42万3500円高いが、装備も充実する。
ノート「X」がオプション設定するアダプティブLEDヘッドライト、インテリジェントアラウンドビューモニター、インテリジェントルームミラー、後側方車両検知警報などの安全装備、アルミホイールといった装備をノートオーラ「G」は標準装着した。
これらのノートオーラに加わる装備は、約26万円に価格換算されるので、42万3500円から26万円を差し引いた約16万円が、ノートとノートオーラの装備を除いた実質価格差だ。
つまりノートオーラは、約16万円の上乗せでフロントマスクのデザインが上級化してフェンダーも拡幅され、ボディは3ナンバーサイズになる。内装にはツイード調織物、合成皮革、木目調パネルなどが使われる。
写真はノートオーラの車内。プリウスよりも上質な内装になっており、ツイード調織物などの高級素材が使われている。いっぽう、後部座席では、プリウスのほうが広く造られている
走りではモーターも強化され、全幅の拡大によりトレッド(左右のホイールの間隔)が20mm広がって安定性も向上する。遮音も入念に行われ、車内は一層静かになる。これらをすべて含めて約16万円に換算されるから、ノートオーラはノート以上に割安だ。
またノートオーラでは、レザーエディションも割安に設定している。「G」に8万9100円を加えると、シート生地が本革になって後席センターアームレストも加わるからだ。
ノートでは、本革シートはセットオプションに含まれ、本革シート生地+後席センターアームレストの価格を割り出すと約14万円になる。ノートオーラでは、本革シートをノートよりも低価格で装着できる。
なぜノートオーラのライバルがプリウスに?
現行型(4代目)プリウス(全長4575×全幅1760×全高1470mm/価格:273万1000円)
そこでノートオーラのライバル車を考えたい。コンパクトカーのハイブリッド車には、ヤリスハイブリッドやフィットe:HEVが挙げられるが、これはノートのライバル車だ。ノートオーラとなれば、ライバル車は上級のプリウスになる。
ノートオーラの月の販売目標は前述の4250台で、2020年度(2020年4月から2021年3月)におけるプリウスの登録台数も、月平均で4930台であった。ノートオーラがプリウスと同程度に売れると、その使命も達成される。
ノートオーラ「G」の価格は261万300円だから、これに吊り合うプリウスは「S」になり、価格は273万1000円だ。
プリウスは全長が4575mmのミドルサイズカーだから、4045mmのノートオーラに比べて車内は広い。身長170cmの大人4名が乗車して、ノートオーラの後席は膝先空間が握りコブシ2つ分、プリウスは2つ半になる。視覚的にもプリウスが広々としている。
ただし、後席の頭上空間は、ノートオーラが握りコブシ1つ分、プリウスはそれよりも少ない。プリウスは天井を後ろに向けて下降させたから、頭上も狭まった。
インパネなど内装の造りはノートオーラが上質だ。ツイード調織物などを巧みに使って質を高めた。荷室はボディの長いプリウスが広い。リヤゲートが大きく開き、荷物の出し入れもしやすい。
動力性能は同程度だ。ノートオーラはノートに比べて加速力を高めたが、プリウスもエンジンとモーター駆動の併用で余裕がある。アクセルペダルを踏み込んだ時のノイズは、ノートオーラが少し小さい。
走行安定性は、プリウスは現行型の発売当初の段階では、後輪の接地性が少し緩かった。そこをマイナーチェンジで改善している。いっぽうノートオーラは、カーブを曲がる時に旋回軌跡を拡大させにくく、峠道などを走りやすい。車両重量も2WD同士で比べると、ノートオーラが90kg軽く、安定性では有利になった。
それでも高速道路を直進する時などは、全幅が少しワイドで、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も120mm長いプリウスに安心感がある。ノートオーラはコンパクトカーだが、プリウスはミドルサイズという違いを感じる。
乗り心地は両車ともに改善の余地を残す。ノートオーラは大きめのデコボコを通過した時の突き上げ感は抑えたが、40km/h以下で路面の荒れたところを走ると、上下に揺すられる細かな振動が気になる。
プリウスも「S」は細かな硬さが伝わる。「Aプレミアム」は少し快適だが、乗り心地を高める余地がある。
狭い裏道や駐車場での取りまわし性は、ボディのコンパクトなノートオーラが勝る。後方視界もノートオーラが優れ、ボディの四隅もわかりやすい。最小回転半径は、ノートオーラは5.2mだが、プリウスの15インチタイヤ装着車は5.1mで17インチは5.4mだ。装着するタイヤによって小回り性能が異なる。
衝突被害軽減ブレーキは、両車ともに昼夜の歩行者と昼間の自転車を検知できる。ノートオーラは、2台先を走る車両も検知するなど機能を少し充実させた。
このほかノートオーラ「G」では、LEDヘッドライトにハイビーム時の眩惑を抑えるアダプティブ機能が備わり、車両の周囲を上空から見たような映像で表示するアラウンドビューモニター、液晶タイプのインテリジェントルームミラーなどを標準装着する。
その一方でプリウス「S」は、車間距離を自動制御できるクルーズコントロール、操舵支援機能、8インチディスプレイオーディオなどを標準装着した。ノートオーラの運転支援機能となるプロパイロットは、カーナビなどを含んだ40万1500円のセットオプションに含まれる。
プリウスとの比較で割安感目立つノートオーラ
ノートオーラは、内外装の質感、走行・安全性能が向上したことにより、ノート、プリウスよりも買い得感が出た。しかし、プロパイロットを装備すると、40万円以上の上乗せになるので、オプション選択には検討が必要
以上の機能や装備と価格のバランスでは、ノートオーラが割安だ。前述の通りノートオーラは、ノートに比べて実質16万円の上乗せでボディを拡大して、内外装の質を高めた。動力性能や安定性も向上させている。コンパクトカーのノートと比べても割安なほどだから、プリウスよりも買い得感が強まった。
ただし、プロパイロットを装着すると、BOSEパーソナルプラスサウンドシステムなども装着され、前述の通り40万円以上の上乗せになってしまう。ノートオーラは装備を分割して、セットオプション価格を下げることも考えたい。
また、ボディサイズはプリウスがひとまわり大きい。ノートオーラもコンパクトカーとしては長距離ドライブに適するが、プリウスはそれ以上だ。
プリウスは発売から5年以上を経過しており、総合的にはノートオーラが買い得で推奨度も高いが、3名以上で長距離を移動する用途にはプリウスが適する。荷物の積載も同様だ。使い方に応じて選びたい。
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