かつて1970年代後半から1990年代後半に全盛期を誇った装備、リトラクタブル・ヘッドライト。トヨタ・2000GTやランボルギーニ・ミウラといったスーパーカーから、トヨタ・スプリンタートレノ、マツダ・ロードスターの初代モデルといった身近なスポーツモデルまで、多くのクルマに採用されていましたが、現在では全く採用されなくなった装備のひとつですね。
今回の主役は、その時代を代表する車種ではあるものの、日本での売れ行きは芳しくなく短命で終わってしまった、ホンダ・アコードエアロデッキです。
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ヨーロッパでの売れ行きは比較的好調
ホンダ・アコードエアロデッキの発売期間は1985年から1989年のわずか4年間。当時大ヒットしていたワンダーシビックを前後にさらに伸ばしたような優美なデザインは、人々に衝撃を与えました。アコードエアロデッキは日本とヨーロッパ市場で販売され、日本での販売はあまり伸びなかったものの、イギリスやドイツでは比較的好調な販売台数を記録しました。
現在では「2ドアクーペ・ベースのワゴン」としてシューティングブレークというジャンルが浸透していますが、当時の日本においては少し時代を先取りし過ぎたデザインだったのかもしれません。今見ると、斜めに伸びるサイドのウインドウラインや、長く伸びたルーフ、スパッと潔く切り落とされたリアエンドなど、非常に個性的かつ独特のスタイリングが新鮮に映ります。
ロングホイールベースの恩恵
この優美なスタイリングの元になっているのが、アコードのセダンモデルと同じ2,600mmにも及ぶロングホイールベースです。後席への乗降性を重視したため、ドアは巨大で重くなってしまいましたが、乗り込んでしまえば後席の居住性は良く、ロングドライブにも余裕で対応していました。ドイツではとくに、3ドアのハッチバックが大衆車の標準スタイルとなっていたため、アコードエアロデッキのスタイルも受け入れられやすかったのかもしれません。
メカニズム面では、FF車としては世界初の4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションを採用。高いコーナーリング性能と快適な乗り心地を両立させています。写真のEX2.0iはヨーロッパ向けのトップモデルで、4輪ABSや電動サンルーフ、ヘッドライトウォッシャーが標準装備となっています。ヨーロッパ仕様のエンジンは、2リッターの直列4気筒SOHCガソリンエンジンとなっていて、燃料噴射装置もしくはシングルキャブを選択するようになっていました。今回撮影した個体は、燃料噴射装置(PGM-FI)搭載車で、カタログ上では130psを発生しました。また、車速感応パワーステアリングも装備し、低速域や駐車時のハンドル操作を楽に行えるよう配慮されています。
ドイツの人々はあまり洗車をしない?
今回撮影したアコードエアロデッキは、各部に錆や傷が見受けられるものの、公道で見かけたことから考えると、まだまだ現役で走っているのでしょう。あまり洗車もされていないようですが、そもそもドイツの人々は日本人ほど洗車をしません。ドイツの新聞「BILD」によると、ドイツの年間平均洗車回数はわずか6回!2ヶ月に1回しか洗車をしないという計算になります。日本に比べて「公道での洗車が禁止されている」「自宅での洗車にもスチーム洗浄機の使用禁止・合成洗剤の使用禁止」などの細かい規制が多いため、手軽に自分で洗車できないという違いはあるものの、思ったより少ない!と感じる方は多いのではないでしょうか?ちなみにドイツでの洗車は、専門の大型洗車場に依頼することがほとんどです。
少し汚れたり傷ついたりしているものの、まだまだ現役でドイツの地を走り続けるホンダ・アコードエアロデッキ。すでに絶滅して久しいリトラクタブル・ヘッドライトで夜を照らしつつ、今もベルリンの街やアウトバーンを駆けているのでしょうか。ドイツにおいて、1980年代の日本車を見かける機会はほとんどありませんから、これからも頑張って走り続けてもらいたいですね!
[ライター・カメラ/守屋健]
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