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高齢者になった今でもポルシェで箱根をそれらしく走らせられるのか?

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高齢者になった今でもポルシェで箱根をそれらしく走らせられるのか?

久しぶりに、ポルシェで箱根を楽しみました‼ 


岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第256回


友人から「すごくハッピーなメッセージ!」が届いた。「久しぶりに箱根走りに行きませんか‼」というメッセージだ。

その友人の愛車はポルシェ ボクスターのスパイダー。箱根を走るには、まさにドンピシャリの相性をもったクルマだ。

彼の仕事はメーカーのエンジニアであり、当然、クルマのあれこれにもすごく詳しい。だから、走るだけでなく、食事をしたり、お茶を飲んだりする時間のお喋りも楽しい。


そんな友人からの誘いだから、断ることなどあり得ない。、、でも、ひとつだけ心配というか不安なことがあった。

僕は高齢者であり、7~8年ほど前から「抑えて走ること」を常に自分に言い聞かせてハンドルを握っている。

広くて、空いていて、危険のない道路では、その縛りを解くこともあるが、基本的には安全運転に徹している。

オートバイも含めて、70年近く無事故で通してきた履歴を、最後まで貫き通すことを、絶対目標として心に決めている。

上記したように、友人はクルマのプロであり、運転も凄腕。僕が現役だった時は、ともにクルマを評価し、議論をし、ともに「いいクルマ作り」に力を注いできた。そんな関係の友人である。

だから、一緒に走ることになると、単に楽しい時間だけではなく、刺激的な時間が待ち受けているのも間違いない。


加えて、乗るのがポルシェ ボクスターなのだから、世間話を楽しむだけで済む訳はない。

上記したように、僕は7~8年程前から運転を変えた。だが、今回の誘いを受けた時は「久しぶりに鞭が入っちゃうかもしれないな」との思いが、ビビッと頭を過った。

友人のご自宅は三島にあるが、僕はそこまで新幹線で行き、駅で待ち合わせた。そう、長距離運転も控えるようになったということ。

三島の街はゆったり走り抜けたが、箱根路に入ると徐々にペースはアップテンポに。

ボクスターの動きは、ハンドルを握っていなくても、軽快で意のままであることはすぐわかる。

フラットシックスをミッドシップに積み、しかも軽量なボクスターの身のこなしは、軽快で素直で意のまま。だが、軽々しくはない。

4輪の接地感からは高い安心感が伝えられ、低いポジションと不思議なほど身体に馴染むシートからは、クルマとの一体感が強く伝えられてくる。


しかし、それは「飛ばせ!」と背中を押すようなものではなく、あくまでも、ドライバーの心理に寄り沿い、その場の状況に溶け込んだ走りを促してくれるものだ。

981型ボクスターは、デビューしてから少し年月は経っているが、全体のバランスは良く、箱根の散歩を楽しむにはうってつけ。

エンジンは2,7ℓのフラットシックス。それをミッドシップに載せ、275ps / 270Nmを6速MTでコントロールする。

絶対的な速さを求めるなら、他に選択肢はいくらもある。だが、「気軽に運転を楽しむ」「運転していて安心感のあるバランスのいいクルマ」といったことを求めるなら、このボクスターはベストチョイスの一台だろう。

パワースペックは、今どき、平凡といえるかもしれない。、、が、低速から滑らかに回り、しっかりトルクを引き出しているので、街でもリラックスして走れる。


ドライビングポジションのよさと、各コントロール類の操作性 / 反応の調和のよさも、結果的に滑かでリズムに乗った運転を引き出してくれる。

クラッチは少し重め。混雑した街では、ATに慣れきった足には少しきついかもしれない。だが、繋がりは滑かなので、思ったより早く馴染める。6速MTも操作性は良い。

三島の街を抜けるまでの彼は、クルマの流れに乗って穏やかに走った。横に乗っているだけでも、街走りをまったく苦にしない柔軟性を持っていることはすぐわかった。

箱根路に入ると彼は徐々にペースを上げ始めた。平日の箱根路は空いていて、気持ちいいことこのうえない。

大好きなフラットシックスのサウンドに包まれたボクスターのコクピットで、僕はただただハッピーな気分に浸っていた。

周囲の景色の流れと五感に感じるGで、ペースがどんどん上がっていることはすぐわかった。だが、クルマの動きは滑らかでかつ安定しているし、シートのホールド性も万全。


なので、高揚感はどんどん高まってゆくのだが、リラックス感は変わらない、、そんな、不思議な感覚にとらわれていた。

優れたドライバーが運転する優れたクルマのサイドシートに乗ると、いつも感じる共通した感覚だが、そこには当然、快感が伴なう。

F1ドライバーやラリーのワールドチャンピオンをはじめ、世界の頂点に立つようなドライバーのサイドシートに乗るという幸運に数多く恵まれてきた僕だが、そんな大切な思い出がチラチラと頭を過っていった。

ボクスターは芦ノ湖スカイラインに向かっていた。どちらも何も言わなくても、箱根を走るとなれば当然のこと。

箱根は一般道も空いているし楽しいルートはいくらでもある。、、が、しかるべきクルマで、しかるべき快感を味わおうといったことになると、ハンドルは自然に芦ノ湖スカイラインに向く。

料金ゲートを通過した次の駐車エリアで、彼はボクスターを停めた。そして、笑顔とともに「さぁ、楽しんでください」と言いながら、運転席のドアを開けてくれた。


実は、その時もまだ僕は迷っていた。なにを迷っていたかというと、「自分で運転せず、彼の横で楽しむだけで十分じゃないか」と思っていたのだ。

7~8年前ならいざ知らず、れっきとした高齢者になった今、ボクスターをそれらしく走らせられるのか、、走らせられるとしても、そんなことをしていいのか、、そんな迷いが、けっこう重くのしかかっていたのである。

で、そんな思いを彼に話し、「だから、あなたのサイドシートで楽しませてもらうよ」と言ったのだ。

すると、彼は笑いながらこう返してきた。

「岡崎さんのことは誰よりも知っているつもりです。もし、少しでも不安があったら、こんなお誘いなど絶対しませんよ」

「それに、お歳のことも含めて、ご自分のできることできないことを確実にご理解なさっているはずです。だから、これっぽっちも心配などしていません。、、さあ、走りましょうよ!」と、運転席の方に手を差し伸べた。


僕は感謝の気持ちとうれしさで一杯だった。そして、運転しよう、運転したいと思った。

ボクスターを運転するのは久しぶりだったし、MT車も久しぶりだった。だから、ちょっと不安はあった。でも、走りだすとすぐ、いろいろな感覚が甦ってきた。

滑らかにスタートできたし、6速MTも滑らかに操作できた。戸惑うことは何もなかった。

少しずつペースを上げていったが、ペースを上げるとともに快感も上がっていった。

かつて、芦ノ湖スカイラインでボクスターを走らせた時、そのサイズや性能が「この道にはドンピシャ!」だったことを思い出した。

僕は「少しだけ踏ませていただきますね」と断ってから、6~7分までペースを上げた。

フラットシックスが快音を奏で、「もっと踏め!」と背中を押す。4輪が張り付いたように路面をグリップする。6~7分のペースとはいっても、一般車に比べれば全然速い。


だんだん、かつての感覚が蘇って来るのがわかった。「全開でもいけるかも、、!」。そんな良からぬ思いが背中を押してくる。凄い誘惑だ。、、だが、堪えた。

堪えられてよかった! ボクスターを降りてからだが、「歳を重ねたなりの堪え性」が僕にもできていたんだ、、と、なにかホッとした気持ちになった。

彼は別れ際に、「いつでもその気になったらご連絡くださいね」。そして「もちろん全開ウェルカムですよ。次回はそれで行きましょう‼」と温かくも刺激的な言葉をくれた。

とにかく、、久しぶりの箱根、久しぶりのポルシェ ボクスター、久しぶりの名手との同乗走行は、、もう最高だった‼!

「歳をとっても、元気でさえいれば、こうしたプレゼントがもらえるんだな‼」。ならば、身体に気をつけて、できるだけ長く元気でいようと心から思った。

ほとんど忘れかけていた「夢の国」に誘ってくれた友人には、ほんとうに感謝している。


10年ほど前まで、毎週のように箱根を走っていた。週に数回行くことも珍しくなかった。

箱根は文字通り僕の庭のようなもの。隅から隅まで知っていた。コーナーはもちろん、路面の凹凸やグリップ状態まで覚えていた。

なかでも、芦ノ湖スカイラインと箱根ターンパイクは「僕の最高の先生」であり、クルマの性能を余すところなく引き出し、その実力を深いところまで教えてくれた。

日本のメーカーのテストコースは1980年代半ば辺りから充実し始めたが、それまでは「貧弱な」と言わざるをえなかった。

特に欧州メーカーのテストコースとは比べものにならない貧弱さだった。となれば、当然、クルマの実力にも影響は出る。

僕はメーカーに真剣に訴え、実験部門と密にコンタクトをとった。そして、テストコースのあるべき姿と実験部員の育成について、現地で直接体験し学ぶことを強く推し進めた。

同時に「世界の道を知ること」を重要なテーマとして提案。これも数社が実行。大きな成果を挙げた。


ZMC模型展示会「愛のクルマ展」

23人のプロ、アマチュア精鋭モデラーが結集した模型クラブ贅沢ミーティングクラブ「ZMC」。100台以上の車模型、ジオラマ、劇中車、フィギュアなどが展示されます。合わせて、溝呂木 陽の去年のイタリアや先日のイベントオートモビルカウンシルで描かれた水彩画、自動車デザイナー、久保田記生氏のディーノやポルシェを描いた原画作品も展示。溝呂木 陽の発行する模型雑誌スポーツカーズモデリング、3D模型パーツを製作するPLUSALFAの製品も販売します。ぜひいろいろなモデラーに制作の秘密を伺ってみてください。

日時/2025年5月2日(金)~5日(月)
時間/10時~18時※初日は12時オープン、最終日は17時まで
場所/吉祥寺ヨドバシ隣 ギャラリー永谷2 武蔵野市吉祥寺本町1-20-1
※入場無料

● 「マツダ CX-60」はルックスも、走りも、乗り味もすべてが心地良く、魅力的なクルマになった
● 上手い運転と下手な運転はどこが違うのかわかりますか?
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みんなのコメント

9件
  • sab********
    この方のように自らの衰えを自覚して普段から抑えて運転しているような人は大丈夫。危ないのは自覚のない高齢者ドライバー。Carviewにも多いでしょ。
  • cru********
    伝説の方のドライビングは今でも健在のようで。
    一度YouTubeで拝見したいものです。
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