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【詳細データテスト】マクラーレン620R レースカー譲りの硬さとうるささ 温度依存性の強いタイヤ それでも手に入れたい

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【詳細データテスト】マクラーレン620R レースカー譲りの硬さとうるささ 温度依存性の強いタイヤ それでも手に入れたい

はじめに

モータースポーツで培われた正真正銘の信頼性を自社製品すべてに注ぎ込むようなメーカーであれば、620Rのようなモデルは間違いなく成功するはずだ。

【画像】マクラーレン620Rとライバル 全14枚

マクラーレンのレーシングティームは、マクラーレン・カーズが伝説のロードカーであるF1を生み出すより22年前、マクラーレン・オートモーティブが設立されるより47年前から存在した。

620Rは現代のレーシーなマクラーレンのレシピ通りに造られたクルマで、カーボンファイバー素材のタブシャシーに3.8LのV8ツインターボをミドシップマウントし、DCTを組み合わせている。さらに、走りに本気で取り組む裕福なエンスージアストに向けた、エントリーレベルのサーキットマシンでもある。

マーケットにおけるこの小規模で特化したカテゴリーは、英国のブランドが得意とするところだ。その需要は既存の顧客だけでなく、GT4やGT3といったクラスで闘うレーシングティーム、さらにはF1マニアにも見込める。

マクラーレン的には、現行スポーツシリーズのトリを飾るモデルということになり、2021年初頭にもアナウンスされるであろう後継シリーズはV6プラグインハイブリッドとなるとみられる。それはさておき、620Rというクルマそのものの本質とは、いったいどのようなものなのだろうか。

結論からいえば、これは570S GT4レースカーをそのまま公道バージョンに仕立てたクルマだ。レースモデルの価格は18万ポンド(約2520万円)で、そのほかに欧州でも名のあるサーキットを巡る全6戦のレースに出るエントリーフィーが16万ポンド(約2240万円)少々かかる。

となれば、GT4のホモロゲーションモデルなのかと思うところだが、それは違うだろう。620Rは、レースカーの570S GT4よりだいぶ遅れて登場したからだ。

では、サーキットで磨かれた、エキサイティングで公道でも楽しめるクルマというだけのことなのか。つまり、ポルシェ911 GT3 RSやフェラーリ488ピスタに対する、マクラーレンの回答ということなのだろうか。そもそも、これをほんとうにロードカーだといっていいのだろうか。

メーカーの公式見解を参照するなら、620Rは570S GT4のストリート仕様であり、スリリングな走りのみを追求して造られた、ということになる。もちろん、商業的な理由を別にすれば、だが。

そこで知りたいのは、そのマクラーレンのコメントが結局はどういう意図を含んでいるのかということだ。また、ドライバーズカーとして、すでにセンセーショナルな600LTとの差別化が十分になされているのかという点も気になるところである。

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

620Rのベースとなるのは、マクラーレン独自のカーボンファイバー製タブ構造体。720Sや最新のアルティメットシリーズに用いられる、より大型で剛性の高いモノケージではなく、570Sはもちろん、GTにも用いられるシンプルなモノセルIIだ。

現在のマクラーレン製ロードカーすべてがそうであるように、エンジンはV8ツインターボで、ドライバーとリアアクスルの間に搭載される。ただし、ほかのスポーツシリーズとこの最終バージョンの間には、明確な違いが多くある。

570S GT4のM838TEこと3.8Lユニットは、競技車両の厳格なレギュレーションによって出力を436psほどに制限されているが、620Rではかつてないほどの高いレベルに引き上げられている。

最高出力は7250rpmで620ps、最大トルクは3500~6500rpmで63.2kg-mに達する。このパワーアップは、ECUやターボチャージャー制御の再調整によるもの。マクラーレンのエントリーラインであるスポーツシリーズとしては、現行モデル最強だ。

とはいえ、直接的なライバルたちには、これより強力なモデルも少なくない。その相手はミドシップカーに限らず、フロントエンジンモデルでも、リアエンジンモデルでもだ。

トランスミッションは7速DCTで、後輪を駆動。センターロックの鍛造アルミホイールと、専用設計のピレリPゼロ・トロフェオRは、前後異径セッティングだ。

本物のレースカーの走りを味わえるよう、サーキット向けのスリックタイヤもオプション設定されている。ぜひ試してみたかったところで、そのチャンスもあったのだが、オートカーのロードテストでは公道用タイヤを履いて試乗するのがルールなので、今回は見送った。

ブレーキはカーボンセラミックディスクを装備。バキュームポンプとブレーキブースターはセナのテクノロジーを流用し、ストッピングパワーを高めている。

サスペンションはGT4マシンと共通のハードウェアを使用。軽量な手動調整式の2ウェイコイルオーバーダンパーは、伸び側と縮み側で32通りのセッティングが可能だ。

前後のウィッシュボーンは。600LTや720Sと同じパーツで、アップライトともどもアルミ製。スプリングレートとスタビライザーは、570Sや600LTよりかなり硬い。アッパーマウントはステアリングのシャープなレスポンスと優れたフィールを得るべく、ゴム製からステンレス製へ変更された。

大振りな調整式リアウイングをはじめ、フロントスプリッターやバンパー、ボンネットはGT4マシン用のものをベースに、公道用の規定に適合するよう手が加えられている。

フェラーリ488ピスタにみられるようなボンネットの空力エアダクトは、車体上部のエアフローを整流し、前輪直前のカナードと同様にダウンフォースも発生させる。240km/h付近でのダウンフォース量は、185kgに達するという。

テスト車は、2万5000ポンド(約350万円)のRパックを装備。ボディにストライプが入り、パネルの多くがグロス仕上げのカーボン地肌を見せる。さらに、チタンのスーパースポーツエキゾーストと、ルーフ上に突き出たカーボンのエアスクープも装着される。

実測重量は1470kgで、2019年に計測したラグジュアリーパック装備の600LTスパイダーより5kg重かったのは残念だ。

たしかにテスト車には、自分で購入するなら選ばないようなアイテムも据え付けられていた。たとえばバウワース&ウィルキンスのオーディオや、ナビゲーションシステムなどがそれだ。それでも、そうしたもろもろを取り去っても、それほどの軽量化にはならないはずだ。

内装 ★★★★★★★★☆☆

ドラマティックなディヘドラルドアを跳ね上げ、低いキャビンへ潜り込むプロセスは単純ではない。気分よく快適に乗り込めるクルマとはいい難いのだ。

幅広いサイドシルは高さもあり、それをまたがないと、フットウェルに足を置くことができない。さらにはカーペットが敷かれていないので滑りやすく、余計に乗り込みにくさを感じることになるかもしれない。

そこまではうまくいっても、次は腰を回して、セナと同じカーボンファイバーのフルバケットシートの硬く狭いエッジに尻をつくことになる。それから右脚を室内に引き込み、ようやく座面に滑り込めるのだ。

そのルーティンは、必要以上に繰り返したくなるようなものではない。しかし、いったんコクピットに収まれば、シンプルで目的がこの上なくはっきりした運転環境に喜びを覚えることだろう。

ドライビングポジションは格別だ。マクラーレンらしくリムの細い、アルカンターラ巻きのステアリングホイールは、ドライバーの真正面に据え付けられ、手前に十分引きつけることができる。

インフォテインメントシステムとスターターボタン、パワートレインとシャシーのセッティングスイッチはそこにあってほしいと思う場所に配置されている。アクセスしやすいようにトランスミッショントンネルを高くした、ウォーキングの設計陣の先見性がありがたく思える。

ダッシュボードとスカットルが低いので、前方視界はエクセレント。それに対して後方視界は、巨大なリアウイングに妨げられる。乗降性を厄介なものにするバケットシートも、疲れ知らずに座っていられるサポート性を備え、長距離走行でも驚くほど快適だ。

シートベルトは巻取り式に加え、テスト車は6点ハーネスも装着。それで身体を固定していても跳ね上げ式ドアを閉められるよう、ドアハンドルには鮮やかなレッドのファブリック製ベルトが据え付けられている。

座面が限りなく路面へ近づくよう低められているので、ヘッドルームには余裕がある。われわれの計測では960mmだったが、これはフォルクスワーゲン・ポロに近い数値だ。

よほど背が高くなければ、ヘルメットを被っていても窮屈さを感じずに乗れるだろう。普通、公道走行可能なクローズドコクピットのレースカーではこうはいかない。

センターコンソールには、小さいが深さのあるトレイも用意されている。キーを置いておくのにちょうどいいが、走り出したらエンジンルームからシャシーを伝わってくるバイブレーションや、路面からの突き上げで、置いたものが暴れうるさくてかなわないだろう。

ドアにはネットの小物入れが備わるが、細々したものをこぼさずに収めておけるかは怪しい。音を立てたり落としたりすることなく持ち運びたいものは、バッグに入れてフロントのそこそこ広いトランクスペースへ入れておくのが安心だ。

走り ★★★★★★★★☆☆

620Rは、このクルマを走らせるだろうどんなシチュエーションでも速いと感じられるだろう。しかし、それにはピレリのラバーに熱を入れ、乾いた路面を選び、しっかり耳を澄ませておくことが求められる。

これは、路面温度が低いときやウェットコンディションのときに一般道を走るためのタイヤを別途用意しておくべきクルマだ。というのも、標準仕様のトロフェオRがいくら公道走行可能だといっても、そうした悪条件には向いていないからである。

このクルマの購入時にはタイヤをもう1セット追加しているかもしれないが、そちらはサーキット用のスリックだろう。そうなると、あわせて3セット揃えなければならないわけだ。通常のPゼロと、クローズドコース専用のスリックを1セットずつ持つというのが、もっとも賢明な選択となるはずだ。

とはいえ、600LTに対する出力面のアドバンテージはたったの20psにすぎない。われわれは、フェラーリやランボルギーニの、ここまでサーキット志向ではないスーパーカーが、明らかにこれを上回る加速性能を発揮するのを、ここ数年間に見てきた。

それを叶えたのは、ひとえに馬力でこのクルマを大きく上回るがゆえのことだ。テスト条件が今回よりよかったことも、多少は影響しているだろうが。

かなり路面温度の低いテストコースで計測した0-97km/hのタイムは、600LTスパイダーより0.3秒遅かった。ゼロヨン加速の所要時間も、昨年テストしたそれに0.2秒遅れている。もっと温度が高ければ、コンマ1~2秒は削れたはずだ。

それでも、160km/h以下の領域で、600LTにはっきりと差をつけるのは手こずるだろう。これを超えると、ようやく高いギアでピークに近いパワーを出せるようになる。

このクルマを独特なものにしているのは、パフォーマンスの数値ではない。また、テクスチャーやフィールの味わい深い荒々しさに関しても、同じことがいえる。剛結されたエンジンとルーフ上のエアインテークが相まって、そのドライビング感覚をすばらしく自然なままで、直感的に感じさせてくれる。

そうした要素と響き合うのが、このクルマのV8のパワーデリバリーだ。より大きく高価なマクラーレンよりラグがありブースト感の強いそれは、本気の加速をするには3500rpm以上回す必要があり、かえってドラマティックさが増しているのだ。

この3.8Lユニットは、5000rpmを超えると、肩にかかったシートベルトを本当に震えさせ、さらに回せばキャビンのあちこちが盛大に音を立てるようになる。じつにうるさく、その騒々しさはセナのV8もかくやといったものだ。

やはり、正確に調律されたような音ではないのだが、それでも間違いなくこれまでにないほどえもいわれぬサウンドが耳に届く。ルーフ上のインテークに吸い込まれるエアの勢いと震えが、少なからずそれに寄与しているのも確かだ。

使い勝手 ★★★★★★☆☆☆☆

インフォテインメント

620Rのインフォテインメント系は、7.0インチのディスプレイを用いるマクラーレンの旧型システムを使用する。だが、ラップタイム計測器を含むサーキットテレメトリーシステムが、その機能のほぼすべてだ。

つまり、標準装備にナビゲーションやオーディオは含まれていないのだ。ただし、どちらも無償で追加できるオプションとして用意されている。ちなみに、エアコンに関しても同様の設定だ。

テストカーは、マクラーレン製のIRISナビゲーションと、3640ポンド(約51万円)のバウワース&ウィルキンス製アップグレード版オーディオを装備していた。

マップのグラフィックはかなりベーシックなもので、システムは入力に対して反応するまでに多少のタイムラグがある。ディスプレイのデジタル式キーボードは小さく、やや扱いづらいので、ナビゲーションの目的地入力にはちょっとばかり苦労する。

とはいえ、使い方にはすぐ慣れる。デジタルラジオやBluetoothが備わり、数は少ないがUSBポートもあるので、日常使いは快適にできる。ただし、サーキット重視のノイジーなクルマに、高級オーディオは無駄なアイテムかもしれない。

燈火類

620Rは、フルLEDヘッドライトを標準装備。ロービームでも光線の強さと広がりは並外れたものがある。ハイビームでは、実に優れた視認性をもたらしてくれる。

ステアリングとペダル

マクラーレンの通例通り、いかにも左足ブレーキをしてくれといわんばかりに、ブレーキペダルは左側へオフセットしている。ステアリングコラムの調整幅は十分すぎるほどだ。

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

マクラーレンとしては、サスペンションのスペックに570S GT4と異なる点は多いと説明するだろうが、乗ってみたらその主張を信じる気にはなれないはずだ。

テスト車は、手動調整式ダンパーに施されたセッティングにより、これまでに試乗した中でもっとも硬いフィールのマクラーレン製ロードカーとなっている。

あのセナよりハードだというのが、テスター陣のほとんどに共通する見解だ。同時に、目的地まで向かうだけのドライブでさえじつに忘れがたく、印象的なところのあるクルマだった。

公道上での620Rは、きわめてタイトで動じない。コーナリング中はいかなるときもロールしない感覚で、急加速や急ブレーキでの前後荷重移動も非常に少ない。マクラーレンの高い水準に照らしてさえ稀有なほどハイレベルなステアリングがなければ、法定速度内でシャシーの実力を見極めるのが難しいほどだ。

不正路面ではすぐに、620Rのステアリングがアグレッシブで動きすぎると感じるだろう。しかし、そうではない。ギア比は理に適ったもので、直感的だ。グリップレベルや路面状況をこれほどクリアに伝えるクルマは、現在の市販車にはほとんどない。例外を挙げるなら、ロータス・エキシージとアリエル・アトムくらいだろう。

通常のマクラーレンの操舵系がみせる傾向に比べれば、路面の小さなバンプや反りにも敏感だ。とはいえ、ダラーラ・ストラダーレや公道仕様のラディカルなどとは違い、握る手に力を込めてステアリングホイールをまっすぐに保持していなければならないようなものではない。

公道上でなら、ゆったりとリムに手を置いて、ただただ状況を楽しめる。それゆえ、しょっちゅう走りに行きたくなることが、ほかのハードコアなロードゴーイングレーサーとの大きな違いだ。

ここまで硬く締め上げられたチューンの、レースに由来するクルマだと、一般道を走るような速度域ではハンドリングバランスに不足を感じるものもあるが、620Rならそんなことにはならない。

ハンドリングのアジリティは、タイヤ温度に左右される部分が多少あるものの、それは同類のクルマならどれも似たり寄ったりだ。しかし、トロフェオRに熱が入りさえすれば、驚くほどのグリップと、正確無比な方向転換をみせる。そしてまた、タイヤを温め、それを保つプロセスも、鮮烈で夢中になれるドライビング体験の魅力の一部だ。

快適性/静粛性 ★★★★★☆☆☆☆☆

もし620Rが、サーキットの走行会に自走で参加して帰宅するのに十分な快適性を持たせようと意図されたクルマだとすれば、おそらくギリギリセーフといったレベルだ。

ボディコントロールはずば抜けてタイトで、乗り心地は間違いなく硬い。しかし、サスペンションは緩やかなアンジュレーションで息もつけないほどしなやかさに欠けるわけではない。

たしかに、追従性は限られたものだ。ほかのウォーキング製ロードカーが持ち合わせているような、波長の長い入力に対してみせる乗り心地の滑らかさには遠く及ばない。振動が頻発する波長の短い入力ではかなりの疲れを覚えさせられるが、鍛造アルミホイールが轍やバンプを乗り越える際にも同じことがいえる。

しかも遮音材はないようなものなので、サスペンションからのノイズがはっきりとキャビンへ入り込んでくる。低いスピードではとくに、それらのインパクトが強く感じられ、マンホールや排水溝を乗り越えるときには、勢いよく踏むのをためらうだけでなく、いつしか無意識にペースを落とすようになっていることにふと気づくはずだ。

巡航時にはノイジーになる。トロフェオRを履いて走っていると、高速道路の速度域では、かなりのロードノイズが発生するからだ。しかも、ルーフ上のエアインテークやリアウイング周辺では、枯れ木の間を風が吹き抜けるような音が鳴り続ける。

エンジンノイズも絶え間なく、アンダーボディに当たる跳ね石も耳を悩ませる。113km/hでの騒音レベルは79dBを記録したが、これはセナより2dB低いだけだ。

購入と維持 ★★★★★★★☆☆☆

620Rの本体価格は25万ポンド(約3500万円)。ビジュアル的な装飾やチタンのスーパースポーツエキゾースト、ルーフ上のエアスクープを含むRパックは2万5000ポンド(約350万円)のオプションだ。

2018年の発売時に14万ポンド(約1960万円)だったポルシェ911 GT3 RSと比べると、このマクラーレンの値付けは高いように思える。だが、350台しか生産されない限定車であり、GT3 RSはおろか、もっと高価なGT2 RSと比べても、投入されたレースカーのテクノロジーはずっと踏み込んだものだ。

フェラーリ488ピスタや、最近登場したばかりだが、おそらく620Rにもっとも近いスピリットを持ったランボルギーニ・ウラカンSTOは、いずれも25万ポンド近いモデルだ。となると、マクラーレンは賢明にマーケットを見極めたといえる。

日常使いを考えると、レーススペックの手動調整式ダンパーを得た代わりに、ノーズリフト機構を失ったことは注目すべきだ。われわれの経験上、マクラーレンのどのモデルでも、スピードバンプや段差に手を焼くことは少なくないだけに、これは付けておきたいデバイスだといえる。

対して、GT4マシンの血統といえども、ほかの量産マクラーレンと何ら変わらないのが整備サイクルだ。1.5万kmもしくは15か月の、いずれか早く訪れたほうがメンテナンスのタイミングとされている。

サーキット走行のサポートサービスは車両価格に含まれないが、ピュア・マクラーレン・トラック・デイの参加費用は込みとなる。これは、世界中の最高レベルのサーキットの多くでプロのドライビングレッスンやホスピタリティが提供されるものだ。となれば、高い価格も納得だ。

スペック

レイアウト

620Rの3.8LツインターボV8は、カーボンファイバータブのモノセルIIを基礎としたシャシーの中央近くに縦置きされる。トランスミッションは7速DCTだ。

サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーンで、手動調整式のモータースポーツ用ダンパーがこのクルマで新たに採用された。公称重量は1386kgだが、テスト車の実測値は1470kgで、前後配分は40:60だった。

エンジン

駆動方式:ミドシップ縦置き後輪駆動
形式:V型8気筒3799ccツインターボ、ガソリン
ブロック・ヘッド:アルミニウム
ボア×ストローク:φ93.0×69.9mm
圧縮比:8.7:1
バルブ配置:4バルブDOHC
最高出力:620ps/7250rpm
最大トルク:63.2kg-m/3500-6500rpm
エンジン許容回転数:8100rpm
馬力荷重比:447ps/t
トルク荷重比:45.6kg-m/t
エンジン比出力:163ps/L

ボディ/シャシー

全長:4557mm
ホイールベース:2670mm
オーバーハング(前):-mm
オーバーハング(後):-mm

全幅(ミラー含む):2080mm
全幅(両ドア開き):3220mm

全高:1194mm
全高:(ドア開き):1960mm

足元長さ:最大1090mm
座面~天井:最大960mm

積載容量:150L

構造:カーボンモノコック
車両重量:1386kg(公称値)/1470kg(実測値)
抗力係数:-
ホイール前/後:8.0Jx19/11.0Jx20
タイヤ前/後:225/35 ZR19 88Y/285/35 ZR20 104Y
ピレリPゼロ・トロフェオR
スペアタイヤ:なし

変速機

形式:7速DCT
ギア比/1000rpm時車速〈km/h〉
1速:3.98/10.1
2速:2.61/15.4
3速:1.91/21.1
4速:1.48/27.2
5速:1.16/34.8
6速:0.91/44.3
7速:0.69/58.4
最終減速比:3.31:1

燃料消費率

AUTOCAR実測値:消費率
総平均:6.3km/L
ツーリング:9.0km/L
動力性能計測時:2.5km/L

メーカー公表値:消費率
低速(市街地):4.4km/L
中速(郊外):8.5km/L
高速(高速道路):10.1km/L
超高速:9.5km/L
混合:8.2km/L

燃料タンク容量:72L
現実的な航続距離:454km
CO2排出量:278g/km

サスペンション

前:ダブルウィッシュボーン/コイルスプリング、手動調整式ダンパー
後:ダブルウィッシュボーン/コイルスプリング、手動調整式ダンパー

ステアリング

形式:電動油圧、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:2.5回転
最小回転直径:12.1m

ブレーキ

前:390mm通気冷却式ディスク
後:380mm通気冷却式ディスク
制御装置:ABS、ブレーキアシスト
ハンドブレーキ:電動、ステアリングコラム右側にスイッチ設置

静粛性

アイドリング:60dB
全開時:93dB(3速)
48km/h走行時:71dB
80km/h走行時:75dB
113km/h走行時:79dB

安全装備

ABS/DESC/TC/HHA/ブレーキディスクワイプ/ブレーキアシスト/ブレーキパッド摩耗センサー
Euro N CAP:テスト未実施
乗員保護性能:成人-%/子供-%
交通弱者保護性能:-%
安全補助装置性能:-%

発進加速

テスト条件:湿潤路面/気温12℃
0-30マイル/時(48km/h):1.7秒
0-40(64):2.2秒
0-50(80):2.7秒
0-60(97):3.2秒
0-70(113):3.9秒
0-80(129):4.6秒
0-90(145):5.4秒
0-100(161):6.4秒
0-110(177):7.5秒
0-120(193):8.6秒
0-130(209):10.1秒
0-140(225):11.9秒
0-150(241):13.8秒
0-160(257):16.1秒
0-402m発進加速:11.1秒(到達速度:222.9km/h)
0-1000m発進加速:-秒(到達速度:-km/h)

ライバルの発進加速ライバルの発進加速
マクラーレン600LTスパイダー(2019年)
テスト条件:乾燥路面/気温13℃
0-30マイル/時(48km/h):1.5秒
0-40(64):1.9秒
0-50(80):2.4秒
0-60(97):2.9秒
0-70(113):3.5秒
0-80(129):4.3秒
0-90(145):5.1秒
0-100(161):6.1秒
0-110(177):7.3秒
0-120(193):8.6秒
0-130(209):10.2秒
0-140(225):12.1秒
0-150(241):14.8秒
0-160(257):17.1秒
0-402m発進加速:10.9秒(到達速度:214.0km/h)
0-1000m発進加速:19.6秒(到達速度:268.0km/h)

中間加速

20-40mph(32-64km/h):1.8秒(2速)/2.9秒(3速)

30-50(48-80):1.3秒(2速)/2.1秒(3速)/3.5秒(4速)/5.3秒(5速)

40-60(64-97):1.2秒(2速)/1.6秒(3速)/2.7秒(4速)/4.3秒(5速)/7.0秒(6速)

50-70(80-113):1.2秒(2速)/1.5秒(3速)/2.1秒(4速)/3.5秒(5速)/6.2秒(6速)/12.4秒(7速)

60-80(97-129):1.6秒(3速)/2.0秒(4速)/3.0秒(5速)/5.3秒(6速)11.3秒(7速)

70-90(113-145):1.7秒(3速)/2.1秒(4速)/2.7秒(5速)/4.6秒(6速)/10.4秒(7速)

80-100(129-161):1.8秒(3速)/2.1秒(4速)/2.9秒(5速)/4.4秒(6速)/9.1秒(7速)

90-110(145-177):2.2秒(4速)/3.1秒(5速)/4.3秒(6速)/8.5秒(7速)

100-120(161-193):2.4秒(4速)/3.2秒(5速)/4.4秒(6速)

120-140(193-225):3.7秒(5速)/5.3秒(6速)

140-160(225-257):5.0秒(5速)

制動距離

テスト条件:湿潤路面/気温12℃
30-0マイル/時(48km/h):8.2m
50-0マイル/時(64km/h):21.5m
70-0マイル/時(80km/h):41.9m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:2.57秒

ライバルの制動距離マクラーレン600LTスパイダー(2019年)
テスト条件:乾燥路面/気温12℃
30-0マイル/時(48km/h):8.0m
50-0マイル/時(64km/h):20.7m
70-0マイル/時(80km/h):39.9m

各ギアの最高速

1速:82.1km/h(8100rpm)
2速:125.5km/h(8100rpm)
3速:170.6km/h(8100rpm)
4速:220.5km/h(8100rpm)
5速:281.6km/h(8100rpm)
6速:321.9km/h(7272rpm)
7速(公称値):322.0km/h(5514rpm)

7速・70/80マイル/時(113km/h/129km/h):1930rpm/2206rpm

結論 ★★★★★★★★☆☆

掛け値なしのレーシングカーに由来するマクラーレンのロードカーというアイデアには、じつにソソられるものがある。

この上なくパワフルで速いスーパーカーというものは一般的に、グリップやサーキット性能を足していく方向に進むものだ。サーキットを出発点に、それ以外で走らせてもいいよう徐々にトーンダウンしていくというわけではない。

これまでウォーキングからは、ロードカーをサーキット専用マシンに仕立て直したGTRバージョンが送り出されたことはあるが、それとは逆のアプローチを取ったのが今回の620Rだ。マクラーレンにとっては、新しい試みである。

問題なのは、そんな出発点ゆえに、期待度が高くなりすぎることだ。前代未聞のとてつもないパフォーマンスとサーキットでの速さを想像したくなるのが人情というものだろう。

今回のテストの間、われわれが620Rの商品としての有効性に疑問を覚えたのは、計測した動力性能がほかのスポーツシリーズを大きく上回ってはいなかったがゆえだ。ただし、それほどしょっちゅう考えさせられたわけではないが。

この価格なら、もっとスペシャルなものを予想してしまうだろう。主観的な基準なら、それに十分すぎるほど応えている。たとえ、客観的な数値が示す600LTに対してのマージンが、きわめて小さかったとしてもだ。

担当テスターのアドバイス

マット・ソーンダース遮音性を欠く620Rは、公道で乗ってランク付けするなら、ポルシェ911 GT3 RS以上、ラディカルRXC未満といったところ。あのフォードGTよりもうるさくて荒っぽい。耳栓をすれば耐えられるだろうが、それとてサーキットへの往復という理由が必要だ

サイモン・デイヴィス公道での走りは好みではないが、サーキットでは、タイヤが温まれば恐ろしくみごとなクルマだ。普段遣いするようなクルマではない。

オプション追加のアドバイス

手動調整式サスペンションに気後れしないでもらいたい。市街地に住んでいて、週末はサーキットへ自走で向かうというユーザーは、フロントの車高調整がつくアダプティブダンパーがほしくなるだろう。しかし、ハンドリングバランスをいじれることは、段差でアゴを擦ってしまうのと引き換えにするだけの価値がある。

改善してほしいポイント

・もしマクラーレンが今後もナンバー付きレースカーのようなモデルを出すなら、本気仕様だけでなく、もう少しソフトなバージョンも用意してほしい。
・サスペンションや空力パーツと同じくらい、エンジンのチューニングにも力を入れてほしい。
・普段遣いとサーキット用を使い分けられるよう、タイヤとホイールをもう1セット込みで販売してほしい。

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