■最新STIコンプリートカーは“初の2ペダル”
スバルのモータースポーツ活動を行なうために1988年に設立されたSTI(SUBARU Technica Iinternational)ですが、その経験・知見を活かしたコンプリートカーやスポーツパーツの開発・販売も手掛けています。
黎明期はノーマルよりも尖ったモデルが多かったですが、次第に欧州のプレミアムブランドを意識したクルマづくりにシフト。
それは速さ一辺倒ではなくトータルバランスを重視した上で、数値に表れにくい走りの質まで熟考したモデルです。
特に2006年に辰己英治氏(近代スバルの走りを磨き上げてきたエンジニア)がスバルから転籍して以降は、「運転が上手くなるクルマ」と言う新たな魅力を加えた商品づくりを一貫して続けています。
そんなSTI社がリリースするコンプリートカーの頂点は、パワートレインを含めた車両全てに手が入る「Sシリーズ」になります。
【画像】超カッコいい! これがスバル「新スポーツセダン」です!(30枚以上)
これまで数々のモデルがリリースされてきましたが、その中でも最も多いのが、歴代「インプレッサWRX STI」「WRX STI」をベースにした「S20系」でしょう。
その系譜は2019年に登場したS209(北米専売モデル)で止まっていましたが、5年ぶりに登場したのが現行「WRX S4」がベースとなる「S210」です。
開発コンセプトは「NBRレースカー直系2ペダルスポーツセダン」になります。
これまでも間接的には謳っていましたが、ここまで明確に宣言をしたモデルは初です。
開発責任者の高津益夫氏はこのように語っています。
「STI社は2009年からニュルブルクリンク24時間に挑戦し続けています。
このレースは世界一厳しいコースと呼ばれるニュルブルクリンク(以下、ニュル)を複数のドライバーが24時間交代しながら走りますが、ニュルでは速いだけではダメで、安心して楽に走れないと勝つことはできません。
そこでクルマに求められる重要な要素は『意のままに操れるコントロール性』になります。
その考えはレースカーも量産車も同じです。
そこでS210はNBRのマシンで証明された技術・ノウハウを今まで以上に色濃く再現すべきだと考えました。
一般的に『意のまま』と言うとフットワーク系の事を指すように思われがちですが、今回はシャシのみならず、パワートレイン、ドライブトレインを含めたクルマ全体でコントロール性を引き上げているのが、最大の特徴となります」
その実現のために、「Sシリーズ初の2ペダルモデル」、「従来と異なるカスタマイズ内容」など、従来の概念に囚われない新たな挑戦が行なわれています。
それが故にその本質はぱっと見やスペックだけでは伝わらず、東京オートサロン2025で初披露されるやいなや、「特別感がない」、「これでSシリーズなのか?」など、賛否が出たのも事実です。
■専用装備がもり沢山の内外装
そんな皆さんのモヤモヤを解消すべく、正式発売に先駆けて試乗をしてきました。
そのステージは伊豆サイクルスポーツセンターの5kmサーキット。
高低差約100m、中・高速コーナー(エスケープソーン無し)、路面はフラットそうに見えて荒れている所もあるなど、ニュルに近いコースと言えるでしょう。
エクステリアは専用エアロパーツと拡幅フェンダー(全幅はノーマル+20mm)装着。
変更点は少ないもののヒカリモノが抑えられWRX S4とは明らかに違う大人のオーラが備えられています。
ただ、リアのカーボン製ウイングは車両のコンセプトに対してややToo muchな印象も。
個人的には小型スポイラーの方がふさわしいと思いました。
ボディカラーは定番のWRブルー・パールを含めて豊富に用意(何とサンライズイエローまで)されていますが、個人的にはマグネタイトグレー・メタリックがモノトーン+レッドワンポイントのコーディネートを最も体現していると感じました。
開発責任者の高津益夫氏に聞くと「実はこの色(マグネタイトグレー・メタリック)がS210のメインカラーなんです」と教えてくれて、納得。
運転席に座ると即座にレカロ製カーボンバックシート(電動調整式)の吸い付くようなフィット感の高さに驚きます。
インパネ周りはヒカリモノを抑え、黒基調に操作系のみレッドのワンポイントのコーディネートは落ち着いた印象で質感も高められています。
ただ、メーター周りはレースカーに近い表示にするなど独自性を持たせてもよかったかな…と。
装備類はベース車に準じますが、個人的にはSシリーズに初となるプレミアムオーディオ(ハーマン・カードン製)が装着されたのは朗報です。
■プレミアム性とスポーツ性が共存した走り
肝心の走りはどうでしょう。
一言で言えば、より速く、より快適に、より遠くに、より安全に、より愉しくを実用域から超高速域までハイレベルで実現する「究極のグランドツアラー」です。
もう少し具体的に説明していきましょう。
エンジンは吸排気系+専用制御により+25psアップの300psを発揮(トルクは375Nmで変更なし)、トランスミッション(SPT/スバルパフォーマンストランスミッション)も専用制御に変更されています。
変更部位やスペックだけ見ると特別感は少ないと感じる人もいるでしょうが、走らせると“別物”です。
阿吽の呼吸で反応するアクセルのツキの良さ、段付きのないフラットなトルク、そして回すほどに力が湧き出る(+25psを実感)上に、レッドゾーンを超えて回っていきそうな伸び感(7000rpmくらいに引き上げてほしいくらい)が備えられています。
エンジン音や音量は控えめですが、濁音が少なく低音が効いた粒が揃った艶っぽいサウンドも相まって、まるでフルバランスされた特別なエンジンのように精緻で滑らかなフィーリングです。
これに加えて専用制御のSPTがとてもいい仕事をしています。
あのヌメっとしたラバーバンドが無いどころかダイレクト感すら感じるフィーリングと迷いがない歯切れの良い変速制御により、CVTである事を本当に忘れるレベルです。
これはエンジン以上に驚いた部分で「スポーツCVTにもまだまだ未来がある」と感じさせるモノでした。
ちなみにドライブモードセレクトを活用し、いくつかの変速特性が用意されています。
「Iモード」では低回転をできるだけ維持させ大排気量の自然吸気エンジンを思わせるトルクを活かした制御、「Sモード」はオールラウンダーでテンポ良いシフトアップを行なう制御、そして「S#モード」は高回転を維持する上に直結感と鋭さすら感じる俊敏な変速制御(トヨタ「GRヤリス」のDAT並み)と、1粒で3度美味しいトランスミッションと言えます。
熱対策もCVTクーラー装着でサーキット走行なども問題ないと言います。
フットワークはSTIコンプリートカー定番のフレキシブル補剛アイテムに加えて、専用ブッシュ(リアスタビ用はミラブルウレタン製)や湾曲形状タイロッド、専用サブフレームボルトなど、車体の剛性バランスや伝達経路を整えた上で、Sシリーズ初の電子制御サスペンション(ZF製CDC専用チューニング)、ワイドタイヤ(255/35R19:ミシュラン・パイロットスポーツ4S)&フレキシブルパフォーマンスホイール(BBS製鍛造アルミ)を採用。
ちなみにエクステリアのガーニッシュ(NBRのマシンで採用されたアイテムを水平展開、リフト荷重をフロント:20%、リア:30%ダウン)を含めた空力パーツも、フットワークをサポートしています。
その印象は「プレミアムセダンとリアルスポーツセダンの共存」です。
ステアリングの切り始めからノーズがスッとインを向く応答の高さ、力の伝達を阻害する遊び要素をなくした正確無比なクルマの動き、内輪を有効活用し4つのタイヤを上手に使った綺麗な旋回姿勢、粘りを感じるタイヤのグリップ感と言った基本的な部分は歴代Sシリーズを受け継いでいますが、S210はそれに加えて全ての可動部がまるでベアリングの精度を変えたかのような抵抗感のないスムーズなフィールと、より軽く、より小さいクルマに乗っていると錯覚してしまう一体感と手の内感、そして電子制御を活かした幅広い特性を実感しました。
その結果、絶対的な性能、旋回スピードや限界が大きく引き上げられているのは言うまでもありませんが、そんな時もアドレナリンが湧くようなワクワク感ではなく、むしろより冷静にクルマと向き合える事に対して旨味が感じられるハンドリングに仕上がっています。
この辺りはBMW「M」ではなく「アルピナ」の方向性に良く似ていると感じました。
こちらもドライブモードセレクトに合わせてキャラクターが変わります。
STIベストのノーマルは街乗りからニュルまでオールラウンダーな特性ですが、コンフォートは姿勢変化が大きめですがストロークを活かしてヒラヒラと動くフレンチスポーツ的な走り、逆にスポーツは姿勢変化を抑えつつ専用AWD制御(旋回中にフロントに伝達する駆動力を減らす)も相まって路面に張り付いて鋭い旋回を行なうジャーマンスポーツ的な走りと、こちらも1粒で3度おいしいフットワークです。
インディビデュアルで“オレ様仕様”を作り込むのもいいですが、欲を言えばNBRを戦うドライバーの推奨セットアップの提案などあってもいいかなと。
乗り心地は正直19インチの35タイヤを履いている事を忘れるレベルで、しなやかな足さばきと入力のドライバーへの伝わり方(とにかくカドが丸い)、そして人間の波長にあった減衰特性などのバランスがピターッと合っているのでしょう。
バネやダンパーの設定はかなり硬めですが、快適性はスポーツセダンとしては極上レベルと言えます。
ブレーキはブレンボ製モノコック対向6ポッド(フロント)の採用と電動ブースターのアシスト特性の専用チューニングが行なわれていますが、そのフィーリングはズバリ“ポルシェ”のそれと同じモノ。
とにかくストロークではなく踏力でのコントロールがしやすく、1km/h単位で速度調整が可能なくらいの精密さで、コーナリング時の荷重コントロールも楽々でした。
開発陣の言う「意のままのブレーキ」に偽りはありません。
そろそろ結論に行きましょう。
変更項目がハードよりソフトが多い事に苦言を呈する人が多いようですが、目的を達成するための手段が変わっただけでSシリーズとしては何もブレていません。
そして、間違いなく言える事は「走る・曲がる・止まる」の連携は歴代Sシリーズを大きく超えるレベルであるという事です。
もちろんアクセルを踏めばハイパフォーマンスですが、それだけでなくゆっくり走っている時の心地よさ、気持ち良さも格段に高いレベルにあると言うこと。
要するに「駆け抜ける喜び」だけでなく「駆け抜けない喜び」もS210の強みの1つと言えるでしょう。
販売台数は限定500台の相変わらずの狭き門な上に、価格はおそらくWRX S4の+約340万円前後であろうと推測すると、誰でも気軽に買える値段ではありませんが、その価値は間違いなくあると筆者(山本シンヤ)は断言します。
そして、これは筆者の提案ですが、STI社はS210のレンタカーを用意し、この走りを多くの人に体感できる機会も設けるべきだと思います。
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