ボクはランボルギーニをこれまでに2台所有してきたが、それらに乗るときはいつも「ジャージ」である。
正確に言うならば「下」がジャージ、「上」はTシャツか、やはりジャージだ。
これにはいくつか理由がある。
1.ジャージは内装への攻撃性が低い
ランボルギーニ・ウラカン、3年間の維持費は152万円。これからかかるコストも予想してみよう
一番大きな理由は「ジャージは柔らかい素材で作られているため、スーパーカーの内装を傷つけにくい」ためだ。
スーパーカーの内装について、その多くがレザーやアルカンターラ張りであることが多い。
そして、「ちょっと引っ掻いた」だけでも傷がつくことがある。
だから、ぼくはベルトや、ジーンズのリベットや、チノパンツなどゴツい生地で作られたパンツのベルトループまでも敵視している。
そして、それらとは無縁なのがジャージだ。
加えてジャージは動きやすさや通気性、吸汗性などが考慮されており、その素材の多くが「柔らかい」。
よって、ぼくはジャージがもっとも「スーパーカーに優しい」と考えている。
2.スーパーカーは乗ること自体がスポーツである
ボクは、スーパーカーは乗ること自体がスポーツだと認識している。
しかしそれは、運転するのに体力が必要だと言っているワケではない。
単に「乗り降りが一筋縄ではいかない」からだ。
ランボルギーニ・ウラカンや一連のフェラーリはまだ乗降性に優れるが、マクラーレンの乗り降りはハードルが高い(それでも、MP4-12Cに比較すると540/540系、720Sへと登場時期があとになるほど乗降性が改善されている)。
なぜか?
スーパーカーはパフォーマンスを重視しているし、出力も高い。
その高い馬力を受け止めるには頑強な構造が必要で、しかしスーパーカーは一般的に「2ドア」なので、大きなドア開口部を持っている。
そして、この大きな開口部によって損なわれるボディ剛性をカバーするために、サイドシルを太く高く設定することになる。
そして、重心を最適化するためにシート位置も低い。
だから、ほとんどのスーパーカーの座面は「サイドシルよりも低い位置」にある。
さらにはシートが車体中央に「寄って」いる。
これもロールセンターをなるべく中央に集めるためだが、スーパーカーは全幅2メートルに迫ろうというクルマも多いのに、左右のシート間隔がやたらと狭い。
だから、スーパーカーに乗り込むには、この太く高いサイドシルをまたぎ、中央に寄っているシートにスポンと体を収めねばならない。
シートが遠いので車内に足を伸ばして入れる必要があるが、そうするにはスーパーカーのルーフは低すぎて頭を打ちかねず、したがって背を丸めて体を折りたたむ、ということも要求される。
クルマによってはいったんサイドシルに腰掛けたほうがいいほどだが、ボクの経験上、スーパーカーは乗るよりも「降りる」ときのほうが難易度が高い。
乗り込むときは体を「沈める」ことになるが、降りるときは体を「持ち上げる」ことになるためだ(ボクがもっとも「降りるのが難しい」と感じたクルマはBMW i8である)。
こういった現状を考慮すると、スポーツカーに「乗り降り」することそのものが「スポーツ」といっても差し支えない、とボクは考えている。
だから、スポーツ用につくられたジャージの着用は「理にかなっている」と考えているのだ。
3.あまりカッコをつけたくない
これは最後の理由だ。
スーパーカーはそもそも「目立つ」。
走っていてもそうだが、停まっていてもそうとうに目立つ。
そして、どこか駐車場にクルマを停め、降車するときにも痛いほど視線を感じる。
そういったとき、あまりにもバシっと決めた服装だと、ぼくは「やりすぎ」に見えることもあるんじゃないかと考えている。
スーパーカーを停め、ドアを開け、ジャージ姿でさっそうと降り立ったほうが嫌味がないんじゃないかということだ。
ただしこれについてはあくまでも個人的な意見であり、その人の好みやルックスにも左右されるので、ボクはほかの誰かに「スーパーカーに乗るにはジャージだ」と押し付けるつもりはない。
こんなふうに考えてスーパーカーに乗っている人もいる、と捉えてもらえると幸いだ。
なお、余談ではあるが、スーパーカーで走っていると、フロントバンパーやリアディフューザーを、思いがけない段差でこすってしまうことがある。
そういったときには「しまった!」とばかりにすぐさまクルマを停め、被害を確認することになる。
そしてボクはプロレスでカウントを取るレフェリーのように低い姿勢を取ることになるが、その場合もやはりジャージのほうが動きやすいのだ。
[ライター・撮影/JUN MASUDA]
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