たった「100週間」で完成させた方法
その愛らしいカエルのような目をした顔からは想像もつかないが、来年登場予定の新型EV『トゥインゴEテック』はルノー史上最速のモデルとなる。そう、クリオV6やメガーヌRSトロフィーR、さらには1990年代にF1用V10エンジンを無理やり搭載したあのエスパスさえも凌ぐ速さだ。
【画像】開発期間はわずか2年! 革新的EV、まもなく登場【ルノー・トゥインゴを詳しく見る】 全50枚
ここで言う「速さ」とは開発スピードのことだ。トゥインゴEテックは、ルノーとして初めて2年未満(正確には100週間)で開発されたモデルである。これは従来の開発期間の半分だ。高性能車のラップタイム記録を脅かすものではないが、ライバルの中国メーカーに対抗し、新しい時代で競争力を維持しようとするルノーにとって極めて重要な意味を持つ。
同社は開発期間短縮にかなりの力を注いできた。EV用プラットフォーム『Amprスモール』をベースとする既存の5 Eテックと4 Eテックは、それぞれ3年かけて開発された。トゥインゴは同プラットフォームを流用し、多くの部品を共有することでメリットを得ている。
ルノーはまた、欧州の一部の競合他社よりも比較的小規模なメーカーとして、そのスピード感を活かそうとしている。しかし、真の時間短縮は、企画、デザイン、開発、量産化のスケジュール短縮によって実現される。
中国メーカーとの激しい競争
では、なぜ急ぐのか? 第1の目的は、攻勢を続ける中国メーカーに遅れを取らないようにするためだった。しかし、ルノーのセドリック・コンベモレル副技術責任者が指摘するように、スピードアップは「市場動向への対応を迅速化させる」効果もある。
コンベモレル氏はバッテリー生産を例に挙げる。「2年前なら、ギガファクトリーを構え、バッテリーにリチウム(NMC)を選べば、世界の王者になれました。今や市場は『なぜLFPを採用しないのか』と問うています。スピードアップすれば、土壇場でも意思決定ができるようになります。1日で新型車を設計できると想像してみてください。トレンドや市場状況を把握した上で生産台数を決められるでしょう」
もちろん、コンベモレル氏は1日で開発を終えられると言っているわけではない。2年でも十分にチャレンジングな目標だ。そして、その目標達成の鍵は、新技術にあると同氏は言う。「スピードと技術を切り離すことはできません。不可能です。両者は密接に結びついているのです」
開発加速プロジェクトは『Leap 100』と名付けられた。ルノーは上流工程(広範な計画立案とモデル選定)の時間を16%、開発(設計から技術改良まで)にかかる時間を41%、生産・流通ネットワーク構築などの最終量産化プロセスにかかる時間を26%削減することを目指している。
大まかに言えば、Leap 100は「7つ」の主要分野で時間短縮を図っている。すなわちガバナンス、多様性と複雑性、デザイン、品質管理、データとAI、検証と認証、サプライヤー戦略だ。以下に、その方法の一部を紹介する。
デザイン
ルノーは設計プロセスを加速させるにあたり、特に人工知能(AI)といった技術の活用に重点を置いている。しかし、ChatGPTが新型車をデザインするわけではない。
「AIは単なるデータ、つまり知識です」とルノーのデザイン戦略・先端技術責任者ステファノ・ボリス氏は言う。「AIは知識を持ちますが、知識とは知性なのでしょうか?」
例えば、AIに新型セニックのデザインを依頼すると、無数の画像から歴代モデルやルノーの他モデルを分析し、旧来のデザイン言語に基づいた独自解釈を提示するだろう。AIにはデザインを進化・発展させることはできないが、ボリス氏は「正しく活用」すれば助けになると述べている。
ルノー・グループは、4ブランド(ルノー、アルピーヌ、ダチア、モビライズ)それぞれの機密データベースのみを用いて独自にAIモデルを開発した。社内デザイナーは自分の考えたデザインをアップロードでき、そのデータにアクセスできるのは本人だけだ。「それは彼らの『秘密のレシピ』です。デザイナー同士は仲間ですが、企画コンペでは勝つために競い合うので、各自の作業内容は共有したくないのです」とボリス氏は言う。
そして、AIモデルはスピードアップに活用される。ボリス氏は「人間の創造性が違いを生み出します。AIはそのための時間を増やしてくれるのです」と続けた。デザイナーはまずクルマ全体や特定パーツをスケッチし、AIツールで素早くデジタルモデルに変換する。完璧な変換ではないが、数秒で3Dモデルが完成し、その後調整に入ることができる。従来ならモデリングチームが1~2日かけて行う作業だ。
これにより技術的制約やエンジニアリング部門からのフィードバックを、3Dモデルに迅速に反映できる。また、ルノーではデザインの空力特性の予測にもAIを用いている。エンジニアリング部門が検証を行う前に、緻密な改良を加えることができる。
さらにルノーは、フランス、ルーマニア、韓国、ブラジル、インドに展開する5つのグローバルデザインセンターを活用し、設計プロセスをさらに加速させている。各センターでは地域特性に基づいたプロジェクトを主導し、相互連携によりほぼ連続的な作業を実現している。
XR(=エクステンデッド・リアリティ。VRやARなどの概念を包括した総称)ツールも活用している。これにより、インテリアデザインコンセプトなどの仮想現実(VR)作品を物理環境に重ね合わせることができる。例えば、実物と同じ寸法のモジュール式のコックピットモデルを用いれば、そこに座りながら、VR上でレイアウトを確認できる。単発の物理モデル製作が不要となり、さらなる時間短縮につながる。
多様性と複雑性
バリエーションを減らせば生産スピードが上がるのは当然だ。世界初の大量生産車と言われるフォード・モデルTでも、選べる塗装パターンは限られていた。しかし、顧客に選択肢を提供しようとした結果、オプションの数は膨れ上がり、全生産工程で複雑が増大する要因となっている。
コンベモレル氏によると、メガーヌEテックにパワートレイン、バッテリー、塗装、その他の仕様オプションを加えると、約220通りのバリエーションが生じるという。「中国メーカーで同じことをすると、平均で15種類程度になります。しかも、15種類を同時に作ることはありません。まず7種類、次に8種類という具合に作るんです。これには特別な理由はなく、単にわたし達とは違うだけです」
このような仕様の一部はほとんど選ばれることがない。顧客が購入を検討している段階では、多くのオプションを提示しても必ずしも良い結果にはつながらない、とコンベモレル氏は言う。
従来モデルでは20色以上の塗装オプションがあるが、トゥインゴではわずか7色に絞られる。これは計算によるものだ。「製品担当者に『赤の塗装を廃止する』と伝えると、『いや、赤は1000台売れる』と反論されるでしょう。ですが、現実はそう簡単にはいきません」
デジタルシミュレーション
クルマの開発プロセスで最も時間とコストがかかるのはテストだ。乗り心地とハンドリングの調整、運転支援機能の動作確認、衝突試験などである。物理的な試作車でのテストに代わるものはないが、高度なシミュレーションソフトを使えばその必要性を大幅に削減できる。また、数百万通りものシナリオをテストできるようになる。
ルノーはパリ近郊の開発拠点テクノセンターに2260万ポンド(約45億円)を投じ、新たな没入型シミュレーションセンターを設立した。ここでは「デジタルツイン」と呼ばれる、開発中の車両の仮想モデルを用いた膨大な開発作業が可能で、実車を走らせる前にテストと改良を実施できる。デジタル変革・シミュレーション責任者のオリヴィエ・コルマール氏は「開発のあらゆる側面でバーチャルツインを厳密にテストし、シミュレートできます。つまり、実物プロトタイプを製作する際、初回から正確に仕上げられるということです」と語る。
時間短縮効果は計り知れない。ルノーはすでに実物テストモデルの数を53%削減し、これだけで開発期間を約1年短縮できたと試算している。
テクノセンターの目玉設備は『ルノー・オペレーショナル・アドバンスト・ドライビング・シミュレーター(ROADS)』と呼ばれる装置だ。ルノーによれば、メーカー所有のシミュレーターとしては最高峰の性能を誇るという。そのスケールは圧巻だ。巨大なヘキサポッドの上に運転席が据えられ、ヘキサポッド自体もレール上に載っている。高速で移動させることが可能で、3Gの加速度を発生させられる。
この装置は、搭乗者(通常はルノー社内から選抜される)にリアルなフィードバックを提供し、運転支援機能や自動運転機能を正確にテストできるように設計されている。フランス・オーブヴォワにある多数のテストコースも、デジタルで完全再現している。その精度の高さゆえ、客観的な測定値を生成し、デジタルツインの改良に活用できる。そして、最終的には実車の開発に反映する。
ROADSは、レース用シミュレーターとは異なる。「F1シミュレーターはドライバーの訓練用に作られています。ROADSは純粋に車両そのものをテストするために開発されました」とルノーのドライビングシミュレーター担当者フロラン・コロンベ氏は説明する。
ちなみに、ROADS使用時には大きな力が加わるにもかかわらず、これまで搭乗者が気分を悪くしたことはない。コロンベ氏によれば、事前に不安を和らげるためにヘキサポッドがどれくらいの速さで動くかを見せてから搭乗させているそうだ。
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